ダイオキシンにもどる
t18504#6800pgTEQ/gの汚染地に保育園を存続させていいのか〜豊島5丁目団地のダイオキシン汚染原因が不明なままの覆土処理#07-01

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【参考資料】
  ・江東区のHPにあるダイオキシン汚染の頁と
     北区豊島地区ダイオキシン類等健康調査ダイオキシン類結果報告書(北区保健所:06年11月)
  ・福島宏紀北区議会議員のHPにある
     豊島五丁目団地ダイオキシン類等の土壌汚染問題について
  ・東京都報道資料より
     11月6日:公聴会開催案内処理計画案
     12月18日:土壌汚染対策計画を策定処理計画(12月19日告示)
 12月19日、東京都は、ダイオキシン類対策特別措置法による「土壌汚染対策地域」に指定していた北区豊島5丁目団地の旧豊島東小学校、豊島東保育園、東豊島公園の3個所の処理計画を告示しました。全15930m2の処理内容は表のようで、汚染土壌の掘削や土壌浄化は行なわず、覆土やアスファルト舗装が主たる対策となっており、経費は2.11億円かかるとされました。

 表 ダイオキシン類土壌汚染対策地域の処理計画 −省略−

★汚染土壌の浄化をせずに覆土処理
 いままで、ダイオキシン特措法で、土壌汚染地域に指定された3個所では、以下のようにいずれも汚染土壌は汚染土壌は、現地で浄化処理されたり、掘削・搬出後に無害化されています。
  【和歌山県橋本市】
   ・3,000pgTEQ/g以上:ジオメルト法で670m3を現地淨化処理
   ・1,000〜3,000pgTEQ/g:コンクリートボックス封じ込め整地緑化・雨水排水対策
  【東京都大田区】1000m3を掘削除去
  【高松市新開西公園】40m3を掘削除去

 豊島団地の場合、東京都は、人が住んでいる広大な面積を掘削すると、二次汚染が心配される上、経費がかかりすぎるとして覆土が主となっています。
 覆土処理に際しては、外部から6600m3もの土が持ち込まれることになります。これは、見方を変えれば、汚染濃度を希釈によって薄めて、環境基準以下とするやり方の変形にほかなりません。
 11月22日に開かれた都の処理計画案に対する住民公聴会では、汚染土壌の掘削除去などの根元的な対策を求める意見がでましたが、その主張は受け入れられず、当初案の通りの上記対策が実施されることになりました。
 しかし、表層土壌が6800pgTEQ/gものダイオキシン類で汚染された600m2の東保育園を存続させながら、アスファルト被覆と人工芝で覆うことで済まそうというのは、どう考えても問題です。もし、かりに、ダイオキシン類の土壌汚染が環境基準を超えた土地があったら、そこを覆土しただけで、保育園を建設するでしょうか。少なくとも、保育園は、汚染のない場所に移設すべきでしょう。

★ダイオキシンの汚染原因は不明のまま
 汚染土壌を処理するに際して、ダイオキシン汚染源を明かにする必要がありますが、その解明はすすんでいないようです。北区や都環境局に問合せましたが、区からは『対策の実施者である北区が汚染状況の調査を行い、東京都の全面支援により汚染原因の究明を進めていきます。』との、都からは『今後北区が費用負担計画策定の中で解明していくもので、現時点でのコメントは控えさせていただきます。』との答えしか返ってきませんでした。
 東保育園の土壌のダイオキシンのTEQ値へのジベンゾフラン類(以下DFと略す)の寄与率は約98%であり、組成別分布パターンでは、五塩化DFの寄与率50%、四塩化DF27%、六塩化DF20%となっています。
 東京都環境科学研究所の山本さんらは、河川底質に次亜塩素酸ナトリウム溶液を、酸性(pH4)又は中性(pH7)下で20℃で8日間処理すると四、五、六塩化DFが多く生成することを明かにしました(同研究所年報2005年p183)。組成別分布パターンでは、で2,3,4,7,8-DFの組成比が高いという違いはあるものの、TEQ値へのDFの寄与率は東保育園の土壌と類似しています。
 団地が、隅田川岸にあり、活性塩素源であるさらし粉などを製造したり、次亜塩素酸を使用したことのある日産化学跡地であったことを考えると、無機塩素系化合物が汚染源になっていることも否定できません。
 もし、このようなメカニズムでダイオキシンが生成したと仮定すれば、
  ・被覆する土壌には、ダイオキシン類生成につながる恐れがある酸性、中性土壌を
    使用しない。
  ・芝生化を含め、植栽は腐葉土の生成や酸性肥料の使用が見込まれ、ダイオキシン
   類生成につながる恐れがあるのでやめる。
ことも対策に含めなくてはなりません。
 いずれにせよ、ダイオキシン汚染原因を明確にすることが、ただしい対策につながります。そのためには、ダイオキシンの発生に不可欠な塩素源についての調査が必要です。団地土壌中の有機塩素系化合物(塩素化フェノール類、塩素化ベンゼン類、HCB、BHC、その他)、無機塩素系化合物(次亜塩素酸塩など活性塩素源となる化合物及びその関連化合物)など、調査してほしいと思います。

★住民への情報公開と住民からの幅広い意見の聴取が必須
 団地内のダイオキシン汚染地域は、上述の三個所だけではありません。団地全体が汚染地帯に建設されているといっても過言ではありません。
 覆土やアスファルトで蓋をしても、洪水や地震などの天災で、汚染が拡大する懸念もあります。将来、団地が建て直されたり、土地利用が変更されることになれば、結局、浄化処理が必要となります。
 この点に関しては、東京都環境局は
  (ア)情報提供
   覆土等の対策状況を記載した土地登録台帳を作成し、公開します。
  (イ)掘削の禁止
   原則として掘削を伴う工事等を禁止します。
   やむをえず掘削を行う場合は事前に東京都に掘削内容について届出ることとし、
   万一、汚染の恐れがあると判断された場合には、適切な工法に変更するものと
   します。
  (ウ)日常管理
   覆土の異常の有無について目視確認等の日常管理を行います。
  (エ)緊急時対応
    万一の事故や災害時においても、汚染の拡散防止を的確に実施しながら、必要
      な措置が講じられるよう、事前準備や対応手順等を整備します。
 としています。

 また、団地内の汚染土壌の長期的リスク管理について、東京都環境局、北区、団地を管理する都市再生機構東日本支社の三者間で、協定書が策定が検討されています。
 この協定書案では、三者による汚染土壌に係る土地台帳の作成、情報の共有、住民への周知、土地利用の制限、汚染土壌の拡散防止、周辺環境のモニタリングが謳われています。さらに、住民や学識経験者との情報共有化、意見交換の場としてリスク管理協議会の設置も提起されています。
 しかし、協定書に基づく、協議会の規約案には、団地住民の代表として自治会しか入っていません。地元の商店街や保育園、学校の関係者、住民運動体の代表も加えた、幅広い運営と情報の公開が大切です。

★汚染土の無害化処理について
 このまま、手をこまぬいて、汚染土壌を放置しておけばいいというわけではありますまい。もっと積極的に浄化方法を考えるべきです。たとえば、橋本市の汚染現場で行なわれたのは、ジオメルト法(処理対象物に設置した電極に通電することにより生じた約二千度の高熱によって分解する方法)でしたが、最近ではより温和な条件での処理方法のとして、メカノケミカル法(アルカリ性資材と処理対象物とを鋼球を入れた回転する処理ポット内で、物理的に粉砕、磨りつぶす方法)や微生物による汚染土壌の淨化=バイオレメディエーション技術の開発も行なわれています。ダイオキシン類を分解する白色腐朽菌で、汚染土壌分解実験が行なうこともできるわけで、ぜひとも進めてほしい検討課題です。

★07年2月1日、北区がダイオキシン対策の費用負担を日産化学に求める
       ダイオキシン類土壌汚染対策事業に係る費用負担計画その考え方

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作成:2007-06-26