農薬の毒性・健康被害、にもどる
t18701#農薬による人の事故 5年間で85事例が報告された−農薬事故等に関する都道府県へのアンケート調査#07-03
農薬による人や野生生物、農作物等への被害の発生は止むことがありません。反農薬東京グループは、実態がどうなっているか2006年11月から12月にかけて、全国の都道府県に対して農薬中毒や農作物等の被害、不法投棄や農薬回収、農作物等での残留分析調査についてのアンケート調査を行いました。
沖縄県だけが回答してきませんでしたが、他の46都道府県からの回答を得ました。今後何回かにわけて、その結果を報告します。今号は、人の中毒事故と野鳥・小動物の被害についてです。後者は記事t18702をご覧ください。
★34都道府県で死亡・中毒事例ありと回答
設問は『農薬の散布又は誤用、その他の事故に伴う人の死亡事故や中毒事件が発生していますが、2001年度から2005年度の貴県での発生状況を教えて下さい。(発生年月日、場所、被害状況、原因となった農薬名、被害原因がわかる一覧表で)』です。
次の34都道府県が事例があると回答しました。
北海道、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、長野、静岡、新潟、富山、石川、岐阜、愛知、三重、京都、大阪、兵庫、奈良、島根、広島、山口、香川、愛媛、高知、福岡、大分、宮崎、鹿児島
事例なしと回答した県は以下の12ですが、事例がないのか、把握してないのか不明です。他県をみれば5年間で事例がひとつもないとは考えられません。
青森、栃木、山梨、福井、滋賀、和歌山、鳥取、岡山、徳島、佐賀、長崎、熊本
事例があるとした県もその把握状況はさまざまで、全てが把握されているかどうかわかりませんが、表1に示したように85の事例がありました(自他殺に関しては統計を取っている県ととってない県があり、集計できないため、はずしました)。一過性の頭痛・下痢などや化学物質過敏症のような健康被害を受けたとしても集計には入ってこないでしょう。
また、農水省の統計では、01から05年に死亡18件、中毒106件ですので、アンケート結果がすべてとはいいがたいと思われます。
農薬別では、クロルピクリンの被害が多く報告されていますが、これは目の痛みなど顕著で因果関係がはっきりしているからでしょう。クロルピクリンの事故はほとんどが被覆不備で、ラベル通りの使用がなされていないことを示しています。農水省は06年11月30日付けで消費・安全局長名の通知「クロルピクリン剤等の土壌くん蒸剤の適正使用について」を出して、事故防止対策を示していますが、住宅地周辺での使用は禁止すべきです。
表1 農薬による人の死亡・中毒事例(当グループのアンケート調査)
★農水省が05年の中毒・死亡事例の詳細を公表
農水省調べによる2004、05年の死亡・中毒者数を表3(b)に示しましたが、原因農薬や発生状況は不明です。農薬対策室に尋ねたところ、05年の29事例について回答がありました。その結果を表2にまとめました。
表2 2005年の農薬事故発生時の状況(農薬対策室調べ)
農薬散布による中毒や誤用事故について、農水省は、表3(b)のような情報しか公開してきませんでした。再発防止のために、農薬名や発生状況を農薬使用者に知らせるべきです。
★農薬による中毒集計の統一が必要
厚労省が発表している「人口動態統計」によると、2004年の農薬による死亡者数(自殺を含む)は、前年より、136人減少して、658人でした。農薬種類別の人数は、表3(a)のようですが、原因農薬名については不明です。このほか、警察庁科学警察研究所がだしている報告がありますが、これには、東京都と神奈川県の統計が含まれていません。
農水省、厚労省、警察庁それぞれの部署によって、統計数値はバラバラです。これでは、実態がどうか明確にはなりません。縦割り行政を糾して、統一的な規準や方法で中毒統計をとる必要があります。
【関連資料】農水省農薬による事故・被害発生状況
表3 農薬による死亡・中毒者数
(a)厚生省人口動態統計 2004年 (b) 農水省 2004年 2005年
農薬の種類 男 女 合計 死亡数
殺 有機リン系 146 84 230 散布中 1 0
虫 有機塩素系殺虫剤 3 - 3 誤用 1 6
剤 その他 15 11 26 小計 2 6
除草剤・殺菌剤 145 125 270 中毒数
殺鼠剤 - - - 散布中 39 26
その他の剤 3 3 6 誤用 15 12
不明 77 46 123 小計 54 38
合 計 389 269 658 合計 56 44
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作成:2007-03-24