農薬毒性・健康被害にもどる
t18702#相次ぐ野鳥・小動物の農薬中毒事件〜情報収集と危機管理体制の一本化を#07-03
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★摂津市、藤沢市、平塚市でまたも、メソミル事件
07年2月は、大阪府摂津市、神奈川県の藤沢市と平塚市で、殺虫剤メソミル混入餌による野鳥や犬・猫の中毒死事件が、相次いで明らかになり、3月には、ついに、メソミルを使用した殺人未遂事件(06年8月に発生)も報道されました。
 07年2月7日に摂津市のさくら公園では、ハトやスズメ17羽が死んでいるのがみつかりました。近くでは、猫1匹とハト1羽が、また、飼い犬2頭が死亡しました。府警の調べでは、現場には、青色のおにぎりがおかれてあり、メソミルが検出されたとのことです。
 藤沢市の市街地では、07年1月31日、2月6日に、合わせてカラス7羽の死骸がみつかっていましたが、2月7日、さらに、カラスとヒヨドリ各1羽の死骸発見され、警察に届けられました。原因調査は、藤沢市保健所を通じて、県衛生研究所で行われ、その結果、鳥インフルエンザ検査は陰性でしたが、野鳥の胃とそばにあった輪切りミカンからメソミルが検出されました。
 平塚市のブロッコリー畑では、07年2月15日ヒヨドリ10羽が死んでいるのがみつかり、輪切りミカンと死骸が、平塚保健所を通じて、県衛生研究所で検査され、胃とミカンからメソミルが検出されました(毒餌をまいた畑の持ち主が書類送検された)。

★厚労省からの回答
 私たちは、06年11月末に、厚労省にメソミルの規制強化を求めていましたが(本誌183号参照)、なかなか、返事が来ず、再々質問の結果、07年2月13日に以下の回答をもらいました。いままでも、2,4,5−Tは指定なし→劇物に、パラコートは劇物→毒物にランクが上げられて例もあるので、早急に「毒物」指定を行うとともに、販売・譲渡に際しては、身分証の提示を義務づけてもらいたいと思います。
 以下、厚労省への要望と回答です。
【要望1】カーバメート系殺虫成分メソミルを毒劇法による「毒物」指定にしてください。
【回答】現在、本件について情報収集を行っているところですが、毒物及び劇物取締法に
規定する「毒物」の指定については、適切な試験データを所有している企業等からのデー
タ提供により、薬事・食品衛生審議会において科学的に判断されるものと考えております。
なお科学的に「毒物」相当との見解がなされれば、「劇物」から「毒物」へ見直すことに
対して問題は有りません。

【要望2】農薬製剤としてメソミル45%を含有するものが農薬登録されていますが、この
ような高濃度の製剤は、製造・販売を中止させてください。
【回答】毒物及び劇物取締法の目的は、毒物及び劇物の流通そのものを止めることではな
く、毒物及び劇物について保健衛生上の見地から必要な取締を行うことです。具体的には、
毒物及び劇物の営業者や毒物及び劇物の取り扱いなどが規制を受けることによって、毒物
及び劇物の適正な取り扱いが求められます。
★都道府県へのアンケート結果〜12県で30事例
 私たちは、06年11月、47都道府県に農薬に関するアンケート実施しました(沖縄県を除く46都道府県から回答)。  その中で『農薬散布が直接原因になったり、農薬を含む毒餌による野鳥など野生動物や犬・猫などの小動物の中毒死(犯罪事件を含む)が、全国各地で起っていますが、2001年度から2005年度までの貴県での発生状況を教えてください。(発生年月日/場所/被害状況/原因となった農薬名/原因者が判明したかどうか、判明した場合はその処分内容がわかる一覧表で)』との質問をしました。
 事例ありと回答があったのは、岩手、秋田、山形、群馬、埼玉、神奈川、長野、静岡、愛知、兵庫、奈良、山口の12県でした。表−省略−に、その一覧(30事例)を示します。
 31道府県は「把握していない」「事例なし」「不明」で、回答なしが3都県でした。
 私たちがいままで、報道で確認している事例が必ずしも、都道府県の回答にない場合もあり、表にでているののは、事例の一部にすぎないと思われます。約4分の3の自治体で事例がみられないのも、野鳥や小動物の中毒死事件をきちんと把握していない証と考えられます。
 毒劇法所管の厚労省医薬食品局審査管理課化学物質安全対策室に調査を要望しましたが「野鳥・小動物が被害に会う事件そのものについては、他法令にて措置されるものと考えており、当室では把握できません。」との答えがありました。
 このような事例報告をきちん収集する体制が必要です。
 また、表に挙げたように、野鳥や小動物の毒殺事件では、原因者が判明しない場合が、多く、全体の73%を占めました。飼い犬・猫の場合は刑法の「器物損壊罪」、野良猫・犬の場合は「動物の愛護及び管理に関する法律」、野鳥の場合は「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」違反で、刑事罰の対象になりますが、原因者を特定することが、このような中毒事件の抑止につながると思います。

 表 アンケートで報告のあった野鳥や犬・猫の中毒死事件 −省略−

★危機管理体制の一本化を
 野鳥大量死の場合、原因調査のため、鳥インフルエンザやウエストナイルウイルスの検査、毒物検査などが実施されます。犬・猫の場合も含め、農薬が原因かと思われる場合、私たちは、事件の発生した市町村に新聞報道にある原因物質の確認のために、問い合わせても、市町村は、「知らない」「自分たちは、ウイルス検査をしただけ、分析をやっていない」「警察に聞いてくれ」との答えがかえってくる場合が多くあります。
 毒物事件について、警察にまかせっぱなしで、住民に対して、注意を喚起する立場にある市町村が知らないというのはおかしな話です。たとえば、藤沢市の事件では、市ではなく、藤沢北警察署がHPで事件の概要を説明した上、「小さなお子さんが誤って路上等に放置されている飲食物を口にしないよう注意してください。」との情報発信をしています。その後、県湘南地域県政総合センターでも、HPで藤沢・平塚の両事件で注意情報をHPに上げていますが、このような縦割りの危機管理体制をあらため、一本化した上、迅速に対応する必要があります。

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作成:2007-08-29