食品汚染・残留農薬にもどる
t18704#シジミの農薬残留問題〜〜原因調査もなく、基準緩和は許されない#07-03
【参考資料】・滋賀県報道発表(06/12/05)琵琶湖の魚貝類に対するチオベンカルブ(除草剤)の残留検査結果について
      ・鳥取県報道発表(06/12/25)東郷池産シジミの残留農薬検査結果について 
      ・島根県報道発表(07/03/07)神西湖産シジミの残留農薬検査結果について調査結果
            ・島根県報道発表(07/03/20)天然魚介類に含まれる農薬等の残留基準値設定に関する緊急要請について 緊急要望書(07/03/23)
      ・島根県報道発表(07/04/11)神西湖産シジミの残留農薬検査結果について調査結果
 06年11月、島根県の宍道湖及び神西湖産のシジミに除草剤ベンチオカーブが最高0.12ppm検出されたことを報告しましたが(記事t18306記事t18305)、その後、12月5日に、滋賀県琵琶湖産のシジミに同剤0.02ppmが、同月25日には、鳥取県東郷池産のシジミに除草剤クミルロン0.07ppmmが検出されたことが判明しました。
 私たちは、06年12月、シジミを生産している23都道県に、問い合わせを行いました。そのうち、19都道県から回答を得ましたので、環境省と農水省の見解とあわせて、その概要を紹介します。

★ベンチオカーブの使用と環境調査
 回答のあったどの都道県でも、ベンチオカーブを含む除草剤が、水稲や大豆、野菜等に使用されていました。また、この剤の水質汚濁の環境基準(0.02mg/L以下)があるせいか。水質調査を継続的に実施していた県もありました(長野、佐賀、三重、岐阜、宮城では、検出事例あり)。しかし、底質や魚介類、シジミについては、水質が検出限界以下であることが多いためか、殆どで実施されていませんでした。

★都道県の対応策は
 島根や滋賀県のシジミ汚染を知って、どのような対応をとったかを聞きました。鳥取県と三重県は分析を実施し、前者ではベンチカーブは検出されなかったものの、クミルロンという別の除草剤が検出されました。茨城県や宮城県は、今後、分析を実施する予定だそうです。
 ベンチオカーブ含有製剤の使用については、 ・青森県、宮城県、東京都、長野県、三重県、佐賀県が、防除指針や手引きから、一部製剤を削除する。
・東京都、兵庫県、長野県、愛知県が、水田での安全適正使用(止水期間)を徹底指導する。 ・千葉県、徳島県:メーカーの販売中止、登録失効を見守る。
でした。農水省も止水期間7日間を徹底指導するとの答えでした。
 ベンチオカーブ含有剤の登録状況をみると、06年12月19日付けで、20製剤がいっせいに登録失効し、07年7月1日現在、登録のあるのは9製剤となっています。

★汚染原因、使用違反の有無も不明
 シジミで、ベンチオカーブが一律基準を超えて検出された原因ですが、関連水域での使用状況が当然問題となります。農薬の使用履歴や適用違反の有無を調査したかを尋ねましたが、
 島根県は「一律基準を超える数値が検出されたことについては、その因果関係は特定されていない」と、滋賀県は「適用違反事例は聞いていない」との回答がありました。鳥取県は「使用履歴や適用違反については調査していない」とのことでした。
 また、「使用方法が守られておれば、基準を超えることはなかったか」との問いに、滋賀県は「使用基準と一律基準との関係について知見はない」と答えています。
 環境省は原因について「県の調査結果を踏まえる必要がありますので、環境省が現時点でコメントすることは適当ではないと考えています。」としか答えませんでした。また、同省は「環境基準は飲料水の基準に係わるもので、同法の一律基準との間に明確な関係はない」との見解を示しました。
魚介類で基準超えがないよう、水質汚濁の登録保留基準等を見直す必要があります。

★漁業関係者への補償はしない
 一律基準を超え出荷停止したシジミ業者は、漁獲や販売ができないため、金銭的な補償が必要となりますが、島根、滋賀、鳥取の三県は、補償を考えていないとの回答でした。島根県は、影響を受けた県内業者や団体を、島根県中小企業制度融資要綱に基づく「緊急融資セーフティネット資金」の融資対象とし、金融支援を講じています。
 県が防除基準に掲載した農薬による汚染原因になっていますから、場合によっては、岩手県のミツバチ被害のように、業者から補償問題がでてくるかもしれません。

★使用自粛に法的根拠はなく、水質汚濁性農薬の指定は求めない
 基準を超えた島根、滋賀では、ベンチオカーブを、鳥取では、クミルロンを関連水域で使用しないことになりました。その根拠について聞いたところ、使用自粛の要請にすぎず、県と農業団体との協議の上の自主的対応策であり、法律による使用中止の指導ではないとのことでした。
 農薬取締法では『水質汚濁性農薬』指定された農薬は、都道府県知事が、使用を法的に規制することができるようになっています。都道県へのアンケートで、国に指定を求めるか否かの考えを聞きましたが、いずれも、国まかせで、積極的に国に要望する県はありませんでした。
 一方、環境省は「水質汚濁性農薬の指定に向けた検討は考えていない」、また、「登録保留基準を厳しく変更すべきとのお尋ねについては、両県で実施しているモニタリング調査の結果を踏まえた上で、検討することが適当と考えている」との答えで、すぐには規制を強化する気配がありません。

★でるでる残留農薬〜基準緩和は逆行
 07年2月の島根県の調査(100農薬について残留分析)では、神西湖産シジミにシラフルオフェンとペンディメタリンがそれぞれ0.02ppm検出されました。また、販売業者の昨年6月の自主検査では、MEP、クロメプロップ、ピリブチカルブ、メフェナセットも基準を超えていたことが判りました。ポジティブリスト制度実施の結果、シジミの分析が実施されるようになり、ようやく氷山の一角として表にでてきたのでしょう。それまでは、出荷規制もなく、私たちの口にはいっていたわけです。その対策の第一番は、農薬使用量を減らすことと思うのですが、茨城県、東京都、長野県、島根県などは、厚労省に、一律基準0.01ppmでなく、残留基準の設定を求めています。なんだか、この数値が低すぎるから、緩めてくれといっているようです。もともとシジミに汚染がないのが正常であり、現に基準以下のところもあり、より高い数値の基準を求めることには、安全・安心に逆行します。
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作成:2007-07-28