環境汚染にもどる
電子版「脱農薬てんとう資料集」No.8<ダイオキシン含有農薬とPOPs系農薬>

t18802#農薬やダイオキシン汚染、そして農薬不法投棄〜農薬工場跡地の調査も必要#07-04
★福島県のダイオキシン類土壌汚染と農薬汚染
【参考資料】福島県:ダイオキシン類土壌汚染対策地域を指定しました 対策計画案
 福島県は、1月16日、双葉郡大熊町東平地区の約9000m2の保安林などをダイオキシン類対策特別措置法に基づき、土壌汚染対策地域に指定しました。東京都の豊島5丁目団地につぐ、全国第五番目の指定だったので、県に問い合わせましが、汚染原因や原因者は特定されておらず、対策計画は立案中とのことでした。
 汚染地域に隣接したエヌ・イー大熊(株)の敷地土壌からは2万pgTEQ/gのダイオキシン類が検出されており、発生源ではないかと疑われます。
 2月7日には、同県農業試験場跡地の土壌から、ベンチオカーブ、砒素、水銀、ダイオキシン等が検出されたことが明らかになりました。このうち、除草剤ベンチオカーブが検出されたのは、郡山市富田町にあった本場跡地で、研修施設の近くの土壌で、30〜410μg/Lのベンチオカーブ(溶出量基準20μg/L以下)と20〜170μg/Lの砒素(溶出量基準10μg/L以下)が検出されました。砒素は、自然的原因と考えられましたが、同所は、廃農薬を埋設した個所であることから、ベンチオカーブ剤が投棄されていたのではないかと考えられています。なお、POPs系の有機塩素系農薬(BHC,DDT、アルドリン、ディルドリン、エンドリン、ヘプタクロル、クロルデン等)の分析も実施したが、検出されなかったとのことです。
 また、水銀が検出された旧梁川支場(伊達市梁川町)の汚染原因は破損した水銀温度計、ダイオキシンが検出されたたばこ試験場(田村市船引町)の汚染原因は、ゴミ焼却灰と推定されています。

★三重県では農用地のダイオキシン汚染 −省略−
【参考資料】三重県:朝日町の農用地における土壌中ダイオキシン類濃度の調査結果と今後の対応
      朝日町大字小向(おぶけ)地区の農地における土壌中ダイオキシン類の範囲確定調査の結果について
      朝日町大字小向地区農地のダイオキシン類土壌汚染に係る範囲確定調査及び周辺環境調査の結果

★荒尾市のPCP、BHC汚染その後〜B工場は三光化学荒尾工場?
 記事t18105で紹介したように、昨年6月末、、熊本県荒尾市の河川水や井戸水にPCP及びBHCが検出されたことが判明しました。汚染原因として、PCP等を製造していた三光化学荒尾工場が考えられましたが、その後、どのようになったか、熊本県に問い合わせました。
 8月31日に、専門家による「荒尾市浦川流域化額物質汚染対策検討委員会」が設置され、工場内井戸水、排水、河川水の調査が継続されました。PCPについての分析結果を表に示しましたが、12月18日の調査でWHOの飲料水水質ガイドライン9μg/Lを超えた例もありました。県は冬場の渇水状態で、河川の総水量が減少したためと考えられるとしています。BHCも、河川水で0.02〜0.07μg/L、事業場排水で0.01〜0.17μg/L検出されています。
 表で不思議に思うのは、県の公式発表から、三光化学の名前が消えたことです。汚染原因が特定されていない状況で、特定の工場に不利益を及ぼすことがないようとの配慮から、委員会は非公開、工場名もださないことになったというのです。
 昨年10〜11月に実施された12地点(深さ5m)の土壌分析では、最大BHC2700ppm、PCP3.8ppmが検出されています。また、7月に実施された三光化学工場内井戸水のダイオキシン分析では、0.11と0.011pgTEQ/Lで、水質環境基準以下であったとのことです。
 県は、B工場に排水等の対策を講じるよう要請し、同工場は高濃度のPCPが検出された井戸からの取水量を25%減らしたそうです。
 表 PCP分析調査 (μg/L)

採取時期  河川    事業場 排水         事業場内井戸水
     増永川 浦川 A工場 B工場 C工場
06年10月  7.8  3.4  1.5  16  0.46   7.1〜89
06年11月  7.7  1.7  -   -   -
06年12月  10      5.2    1.7    20    1.45
★平塚市では、市道工事現場からBHCの袋が
【関連資料】平塚市:下水道工事で農薬の空袋を発見
 2月13日、平塚市は、西八幡一丁目の市道で、下水工事のための事前試掘をしていたところ、地下1.5mの土中に、農薬の空き袋が約100枚が見つかり、土壌分析したところ有機塩素系殺虫剤のBHCが環境省の環境管理指針(土壌溶出2.5μg/L)を超えて検出されことを公表しました。1月23日採取された2個所の土壌での溶出量は、1100μg/Lと620μg/Lで、他の項目は不検出だったということです。この地区には、旧相模海軍工廠関連の施設があり、埋設されていた場所は、昭和30年代後半までは、民間会社敷地だったとのことですが、埋設者はわかっていません。他の農薬容器等はなかったとのことですが、BHC袋のラベル等にたずねたところ、市から回答はありませんでした。
 市は、今後、汚染範囲を特定し、汚染土壌を適正に処理するとしています。
 このような、農薬の小規模な埋設個所は、全国的分布しているものと思われますが、土壌汚染対策法には、農薬類の項がなく、今回のように偶然の発見にたよるしかありません。環境省は、化学兵器の埋設問題で全国調査をしたように、農薬埋設個所の調査について、もっと積極的に取り組んでもらう必要があります。

★沖縄県でのPOPs埋設土壌処理
【関連記事】記事t17204記事t18205
 沖縄県では、本土復帰後の1973年に、POPs系農薬の埋設が、県内2個所(2トンの小規模と25トンの大規模埋設地あり)行われ、02年に、そのうち小規模個所でBHCの漏れが確認されていました。具体的な埋設地の所在について、犯罪の予防その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあることから、明らかにできない。」との農水省の指示により、県は公表してきませんでした。
 このほど、県に問い合わせた結果以下のことがて明かになりました。
25トンの埋設個所は豊見城(とみぐすく)市の琉球産経鰍フ敷地、2トンの埋設個所は南風原(はえばる)町の第一農薬鰍フ所有地で、両個所とも農薬会社が埋設に関係していました。
 昨年9月に設置された、学識経験者、関係行政機関、農業団体からなる検討委員会が処理計画を作成し、両地区で住民説明会が開催されました。計画では、農薬製剤が超臨界水酸化法で、汚染土壌がアルカリ分解法で処理されるとのことで、2.15億円の経費をかけ、07年度中にはすべての処理は完了する予定です。

★都道府県アンケートより〜不法投棄
  【関連記事】記事t17906

 昨年11月に実施した都道府県アンケート調査(沖縄県を除く46都道府県から回答)で、01年度から05年度で農薬の不法投棄事例(廃棄物処理施設に不法に持ち込まれた例も含む)の有無を尋ねたところ、「事例あり」が、山形県、群馬県、長野県、兵庫県、高知県、島根県、福岡県の7県17件(長野は06年も含む)で、表に事例を示します。長野県が多いのは、監視・通報がきちんと行われているせいでしょうか。「該当なし」「事例なし」との回答が38道府県、東京がこの項には回答ありませんでした。
 クロルピクリンの不法投棄事例は、前号のヒトの中毒に、カウントされているケースもあります。厚労省は、「廃棄物処理事業におけるクロルピクリン中毒の防止について」という通知をだしており、これによると、表にない事例を含め、98〜04年で7件が挙がっています。また、不法投棄による魚毒事件は、農薬被害として、別項でカウントされています。
 種子消毒や散布後の農薬廃残液を処理することなく、水路などに流すことも、不法投棄となります。このような農薬不法投棄の事例については、報告窓口をきちん決めて、統計をとる必要がありますし、原因者の追及・処罰も忘れてはなりません。

 表 農薬不法投棄事例 −省略−

★万全でない廃農薬の回収システム
 アンケート調査では以下の設問をしました。『貴県では、廃農薬や期限切れ不用農薬の回収について、いままで、どのような対策がとられてきましたか。回収が行われている場合、どのような体制で実施されていますか。
 また、回収の経費負担はどうなっていますか。2001年度から2005年度の、回収数量を年度別に教えてください。』との問いに、東京都を除く45道府県から回答がありました。
 回答のあった45の道府県すべてで、全農や農協、農薬販売業者が主体となって回収が実施されていましたが、自治体が主導しているところはありませんでした。
【回収経費の負担について】
・農家の自己負担が原則:20府県(栃木、長野、石川、福井、静岡、愛知、三重、京都、
 大阪、和歌山、岡山、広島、愛媛、徳島、高知、長崎、佐賀、大分、熊本、宮崎)
・農家以外に、全農、農協、販売業者が一部負担:9県(岩手、群馬、茨城、埼玉、千葉、
 神奈川、富山、鳥取、福岡)、
・これらに加え、県や市町が助成している:4県(青森、秋田、兵庫、香川)。
・回答記載なく、不明:12道県(北海道、宮城、山形、福島、新潟、岐阜、滋賀、奈良、
 山梨、島根、山口、鹿児島)

【回収数量について】
・県が数量を把握していない又は答えなし:22道府県(北海道、山形、宮城、福島、埼玉、
 千葉、山梨、福井、岐阜、愛知、滋賀、京都、大阪、奈良、和歌山、岡山、広島、島根、
 徳島、福岡、宮崎、鹿児島)

【回収システムについて】 
・県で独自の条例や要綱等がある:3県で、福井が県農業用使用済資材等適正処理推進基
 本計画。 群馬が「群馬県における農薬の適正な販売、使用及び管理に関する条例」、
 長崎が農業生産資材低減のための行動計画があると答えています。
・回収システムを作るための法律改正を国に働きかける考えはないかという設問で、
 国に要望としたのは、奈良と熊本の2県のみ、鳥取は今後検討、長野は優良事例の紹介
 を国に求める、山口はホームセンターは国に対応願いたいとの回答がありました。その
 他の道府県は、現行の廃掃法や農薬取締法の法令遵守を指導することで、十分との考え
 を示しました。
 このアンケート結果をみて思うのは、道府県の考えにバラツキがあることです。特に、県が積極的に回収に関与しているところは少なく、半数弱の県では、回収数量の統計すら 把握していないのには、驚きました。農薬を所管する農政部門だけでは、廃残農薬についてのきめ細かい指導ができないならば、環境や厚労部門等と連携した監視体制をとってもらいたいものです。
【関連記事】4/27の行政への質問と回答:記事t19102

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作成:2007-09-29