環境汚染にもどる
t19102#農薬工場跡地の禁止農薬汚染問題〜農水・環境・厚労省、担当じゃないと回答#07-07
 全国各地で、環境汚染が明らかになっている農薬として、POPs(難分解性有機塩素)系農薬やダイオキシン含有農薬があります。これらについては、農薬取締法で販売禁止農薬となっていますが、記事t18802で、かって製造していた工場跡地の総点検の必要性を強調しました。
 そこで、農水省、環境省、厚労省に要望を送りましたが、以下のように、その回答からは、なんの危機意識も感じられません。
 例えば、農水省は廃掃法に従えばいいと答えていますが、同法の公布は1970年、マニフェスト(産業廃棄物管理票)制度がとられるのは1998年以降です。法施行以前に、製造をやめた農薬工場やその廃棄物処分場が、現在、どうなっているかを問題としているのに、論点をそらしています。

★要望の前文
 04年5月に発効したストックホルム条約により、POPs系化学物質(BHC、DDT、ドリン剤、ダイオキシン類ほか)の環境汚染防止対策が求められていますが、近年、農薬取締法で販売禁止になっているPOPs系農薬による環境汚染が各地で発覚しています。
 私たちの調べたところでは、下記のような事例がありました。
 ・クニミネ工業山形県左沢工場、同工業茨城県常陸太田工場:PCP 記事t13503 
 ・永光化成(中外製薬の子会社) 福岡県福間町九州工場:BHC 記事t14905d 
 ・クミアイ化学 宮城県小牛田工場:BHC埋設 記事t17204
 ・協友アグリ(旧三笠化学)福岡県甘木工場:BHC埋設 記事t17204
 ・滋賀県農業総合センター農業試験場:BHC埋設 記事t13806a
 ・第一農薬 沖縄県南風原町 BHC埋設 記事t18802
【2006年】
 ・三光株式会社熊本県荒尾工場(旧三光化学梶j:BHC、PCP 記事t18105記事t18802
 ・三共株式会社 滋賀県野洲川工場:エンドリン 記事t18104
 ・秋田県男鹿市と秋田市のBHC埋設個所 記事t18205
 ・千葉県香取市のJA佐原市:BHC埋設 記事t18205
【2007年】
 ・共同化学工業 平塚市神奈川工場:BHC袋埋設 記事t18802
  上記の多くは、かって、POPs系やPCP製剤を製造した工場でした。
 今年になって発覚した平塚市の事例では、BHCの25kg入り空き袋が発見された場所は、いまは、存在しない共同化学工業という農薬製剤工場の敷地にありました。これは、たまたま、道路工事でみつかった例で、このように、偶然の発見に頼っていては、POPs系の汚染を防止することはできません。
 そこで、以下のようなお尋ねをしますので、5月20日までに回答ください。

★質問と農水省からの回答
 農水省からの回答は以下のようなものです。
【質問1】農薬取締法による販売禁止農薬のうち、下記に挙げたPOPs系及びダイオキシンを含有する恐れのある農薬原体及びその製剤の製造工場及び当該工場からの廃棄物処分場の現況調査を実施し、担当部署を決めて、それぞれの場所ごとにそこで取り扱われていた農薬名と現況をしるした台帳を作成し、管理・監視を住民公開の下に継続すべきと思いますが、貴省のお考えをお示しください。
  BHC/DDT*1/エンドリン*1/ディルドリン*1/アルドリン*1/
  クロルデン*1/ヘプタクロル*1/HCB*1
  2,4,5―T*2/PCP*2/CNP*2/PCNB*2
    *1 POPs条約対象物質、化審法第一種特定化学物質
    *2  ダイオキシン及び・又はHCB含有農薬
【農水省回答】農薬製造工場からの廃棄物については、POPs等農薬やダイオキシン類を含有する農薬も含め「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づき、排出事業者が自らの責任において適正に処理すべきものであり、産業廃棄物の処理を委託する場合、排出事業者は、マニフェスト(産業廃棄物管理票)により、廃棄物が適正に処理されたことを確認し、管理票を必要な期間、保存すべきであると考えております。

【質問2】同上販売禁止農薬を取り扱ったり、保管していた地方自治体の農業試験場や農協関連施設の現況調査を実施し、担当部署を決めて、それぞれの場所ごとにそこで取り扱われていた農薬名と現況をしるした台帳を作成し、管理・監視を住民公開の下に継続すべきと思いますが、貴省のお考えをお示しください。
【農水省回答】地方自治体や農協の関連施設において、ご指摘の販売禁止農薬が埋設保管されている場合は、埋設農薬の管理者において適正な管理が行なわれており、環境調査の結果、汚染が確認された場合や、埋設農薬の処理を実施する場合は、周辺住民に情報提供を行なうよう、都道府県等に指導しているところです。現在、地方自治体や農協の関連施設において、販売禁止農薬が取り扱われることはありませんが、万一、新たに、これらの農薬が確認された場合は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づき、排出事業者が自らの責任において、適正に処理すべきものであり、産業廃棄物の処理を委託する場合、排出事業者は、マニフェスト(産業廃棄物管理票)により、廃棄物が適正に処理されたことを確認し、管理票を必要な期間、保存すべきであると考えております。

【質問3】同上販売禁止農薬のうち、POPs系埋設農薬については、2001年の農水省の調査がありますが、リストアップされた以外に、300kg未満の小規模埋設個所が多々あるといわれています。PCB製品や旧日本軍の化学兵器関連の調査・管理・監視に準じた、きめ細かい調査等を実施すべきと思いますが、貴省はいかがお考えですか。
【農水省回答】農林水産省では、既に、平成13年に小規模埋設箇所も含めた実態調査を実施し、埋設箇所数と埋設数量を公表しているところです。

【質問4】同上販売禁止農薬と同じ成分は、シロアリ防除剤、木材処理剤、防疫用薬剤、その他 化学品として使用されていました。
 上記物質を過去において、製造又は使用していた工場及びその廃棄物処分場の現況調査を実施し、担当部署を決めて、それぞれの場所ごとにそこで取り扱われていた化学物質名と現況をしるした台帳を作成し、管理・監視を住民公開の下に継続すべきと思いますが、貴省のお考えをお示しください。
【農水省回答】農薬以外の化学物質に関する質問であるため、お答えできません。

【質問5】上記1〜3に該当する場所で、土壌・大気・水などの環境調査を実施し、公表すべきと思いますが、貴省はいかがお考えですか。
【農水省回答】小規模埋設場所においては、埋設農薬の管理者により環境調査が実施されています。1〜2に該当する場所においての土壌・大気・水など環境調査に関する質問については、お答えできません。

【質問6】土壌汚染対策法で指定されている特定有害物質には、水銀や砒素系農薬は重金属のひとつとして分析対象となっていますが、PCB以外のPOPs系化学物質は対象外です。BHCやその他のPOPs系化学物質、ダイオキシンやHCB含有農薬を特定有害物質として、土壌分析の対象にすべきと思いますが、いかがお考えですか。
【農水省回答】土壌汚染対策法に関する質問であるため、お答えできません。

★環境省、厚労省からの回答
環境省から『問1〜5については、当省では該当しないため回答できかねます。問6については、以下のとおり回答致します。POPs等廃農薬を含む埋設農薬に係る土壌汚染については、「埋設農薬調査・掘削等暫定マニュアル」により、農薬埋設地周辺の土壌汚染対策についての掘削除去の方法を示しているところです。また、ダイオキシンについては、ダイオキシン対策特別措置法により対応されているところです。』との回答がありました。  厚労省医薬食品局審査管理課化学物質安全対策室からの回答は
『日頃より厚生労働行政にご理解頂ありがとうございます。標記について、今回ご要望いただいた内容を確認させていただきました。他省から適切な回答があるものと理解しております。』でした。

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作成:2007-10-27