ダイオキシンにもどる
電子版「脱農薬てんとう資料集」No.8<ダイオキシン含有農薬とPOPs系農薬>

t19301#久留米市JR荒木駅構内で、ダイオキシン汚染発覚〜三西化学農薬工場跡地が汚染源?#07-09
 07年9月1日、福岡県久留米市荒木町の新幹線鹿児島ルート工事現場の土壌から、PCP19.1mg/L、BHC7.76mg/L(以上溶出量)とダイオキシン95000pgTEQ/gが検出されたことが明らかになりました。ダイオキシンの土壌の基準値は1000pg/gですから、95倍の高濃度です。現場はJR荒木駅構内で、三西化学農薬工場跡地に隣接しており(図参照)、農薬汚染を懸念した地元住民の要求により、工事発注元の鉄道建設・運輸施設整備支援機構が環境調査を実施したものです。

★34年前の三西化学農薬公害裁判
 1961年、福岡県久留米市の農薬製剤工場三光化学(63年三西化学が引き継ぐ)の操業開始とともに、ダイオキシン含有農薬PCPやCNP等による周辺住民の健康被害が起こりました。以後、12年にわたる度重なる被害の訴えに耳をかさない工場側に対して、被害二家族が、三西化学とその前身三光化学、親会社の三井東圧(現三井化学)を被告として、操業停止と損害賠償を求めて提訴したのは、73年12月21日のことです。
係争中の83年7月に工場の操業は停止されたものの、損害賠償請求は福岡地裁(判決91年9月27日)と福岡高裁(判決97年9月19日)で原告敗訴がつづき、99年2月、最高裁による上告却下の判決で敗訴が確定しました。
 PCP、CNPなど農薬が工場周辺の大気や井戸水を汚染した事実が明白であるにもかかわらず、一審の福岡地裁判決は、PCPの地下水汚染を『農地に使用された農薬が周辺の水質に影響を及ぼすことも推測されるところ、本件周辺農地における使用農薬が水質に及ぼす影響の程度を明らかにする証拠はない。』『各水質調査がなされた時期は、−中略−本件工場においてPCPの製造が中止された昭和45年12月から既に2年近くが経過した時点であって、この点からも前記検査によって検出されたPCPが本件工場に起因するものと即断し難いものがあるといわねばならない。』などといい、工場が井戸水の汚染源であることすら認めませんでした。
裁判がはじまる前の71、72年に土壌調査が実施されましたが、この時はダイオキシン分析はなされませんでした。しかし、表にあげたように、PCPやBHC、CNPの汚染が判明しています。今回、PCPやダイオキシンが残存していることがわかったのは、新幹線工事のおかげですが、詳細な汚染状況の調査はこれからです。福岡県と久留米市は地元住民に井戸水を飲まないように注意するとともに、9月6日から工場跡地周辺の井戸水や土壌などの環境調査をはじめました。調査結果がでるのは、2ヶ月後とのことです。

★三井化学はどう責任をとるか
 99年7月、三井化学は、CNP中のダイオキシン含有量についての調査結果を発表しました。この時、私たちは、同社に質問・要望を行いました。その中で以下の事項を尋ねました。
【質問】貴社の関連会社である農薬製剤工場三西化学(福岡県久留米市荒木町)では、PCPやCNP製造により、周辺住民が健康被害を受け、操業停止と損害賠償を求める民事訴訟がおきていました。83年7月に操業停止した同工場の跡地におけるダイオキシンの環境調査を実施し、その結果を明らかにしてください。
 三井化学の回答は『99年2月26日、最高裁から上告棄却の言い渡しが行なわれ、判決が確定しました。この裁判の中で、三西化学の周辺住民に健康障害の発生は認められておりません。従って、今後とも周辺の皆様にご迷惑をおかけすることはないと考えております。』でした。
 工場操業当時に、周辺住民に健康被害が出て、福岡県がなんども、三西化学に設備の改善を命じたことは否定できない事実です。判決で、工場からの地下水汚染も、健康被害と農薬の因果関係も認定されなかったことをお墨付きに、今回の新幹線工事現場のダイオキシンとPCPなどの汚染について、知らぬ顔を決め込むわけにはいかないないでしょうね。  三井化学らは控訴審の準備書面でCNP含有のダイオキシンのTEQはゼロと主張をしていますが、自らの手でこのことが誤りであったことをすでに認めています(TEQがゼロでなかっただけでなく、最も毒性の強い2,3,7,8-四塩化ダイオキシンも検出されました)。
さらに、私たちの農薬関連質問に対する回答(02年6月13日)の中で、同社は『工業製品のダイオキシン分析の基準は −中略− 当時農林水産省で検討中であった農薬ガイドラインを参考にし、それらより更に厳しい基準を設定し、この基準でダイオキシンが検出される製品は製造・販売しないこととします。(各同属体ごとにダイオキシン毒性等量として0.01ngTEQ/g)。』としています。

★三井化学への質問・要望
 三西化学跡地そのものは現在どうなっているか、今回のダイオキシン汚染の責任をどうとるのかなど以下の事項を三井化学に問合わせ中です。
1、久留米市荒木町にあった三西化学農薬工場跡地は現在どのようになっていますか。
 ・跡地の所有者はどういう経過を経て、現在、誰になっていますか。
 ・跡地の利用についてはどうお考えですか。
2、工場に隣接する新幹線工事現場で、三西化学が製造したことのあるPCPとBHC、
 さらには、ダイオキシンが検出され、地元住民は工場跡地からの汚染を懸念していま
 す。貴社は、どのようにお考えですか。
3、上記のように、三西化学農薬公害訴訟に関連して、貴社は99年7月、私たちの質問
 に対する回答の中で『三西化学の周辺住民に健康障害の発生は認められておりません。
 従って、今後とも周辺の皆様にご迷惑をおかけすることはないと考えております。』
 とされていますが、このたび、汚染が確認されたダイオキシンやPCPなどの発生源
 は三西化学跡地ではないと考えられますか。
  また、自治体等の発生源調査に、どのような協力をなさいますか。
4、現在、自治体や鉄道建設機構が新幹線工事現場や周辺の井戸水・土壌等の環境分析
 を実施していますが、貴社が、今までに実施された工場跡地の土壌、井戸水、地下水
 等について、ダイオキシン、PCB、農薬、重金属等の環境分析結果があれば、教え
 てください。
 また、今後、跡地における詳細な環境調査を実施して、結果を公表してください。
 結果については、検体の種類/検体採取年月日/採取場所/検体数/分析対象/検出
 数/検出の範囲/検出限界の一覧でお願いします。ダイオキシンについては、TEQ値
 及び同族体・異性体別実測値でお願いします。
5、三西化学が発生源であった場合、工場敷地及び周辺地域のダイオキシンや農薬汚染
 個所の浄化処理については、どのようにお考えですか。
6、貴社が回収保管していたダイオキシン含有農薬PCP、PCNB、CNP系農薬は、
 その後、どうなりましたか。保管数量と処理年月、現在の未処理数量と保管場所を教
 えてください。
【参考資料】三井化学プレスリリース:三西化学工業(株)工場跡地の土壌及び地下水調査の実施について

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作成:2007-09-29