環境汚染にもどる
t19302#埋設2,4,5-T 市町村はどう対処しているか〜アンケート調査まとめ#07-09
 記事t19203で、埋設2,4,5-T系除草剤について、林野庁にその現状を問い合わせた結果をまとめました。今号では、埋設個所として林野庁の報告にあがっている52市町村に対して、7、8月に実施した10の設問によるアンケート調査の結果を紹介します。

★25市町村が回答
 回答があったのは 以下の25市町村、回答率48%でした(別に岩手県にも問い合わせを行いました。)このうち、広尾町(北海道)と五島市(長崎県)は所管の森林局に回答をふり、個々の設問に答えてくれませんでしたので、以下の回答内容のまとめから除外しました。

【回答あり】25市町村:北海道標茶町/北海道本別町/北海道遠軽町/北海道広尾町*/北海道清水町/青森県中泊町/岩手県岩泉町/岩手県野田村/群馬県東吾妻町/山梨県甲府市/愛知県豊田市/広島県庄原市/愛媛県宇和島市/愛媛県松野町/高知県宿毛市/高知県津野町/長崎県五島市*/大分県別府市/熊本県芦北町/宮崎県都城市/宮崎県えびの市/宮崎県串間市/宮崎県小林市/鹿児島県大口市/鹿児島県湧水町  (* 個々の設問に回答しなかった市町)

問1:埋設されている場所を知っているか
 19市町村(82.6%)が「知っている」と答えました。甲府市と別府市が「知らない」と答えています。「知っている」のうち、豊田市は85年、林野庁の立会いで、完全撤去し製造業者へ返却との回答でした。また、津野町は「知らない」を選択していますが、84年6月に発掘調査し、2000年2月15日に製造業者に引取ってもらったとのことなので埋設はないということでしょう。宿毛市は調査の結果「埋設されていたのは2,4,5-Tでなかった」との回答でした。
 現況については(複数回答あり)、
 ・埋設表示の看板あり:15 
 ・フェンスや鉄条網囲われている:14
 ・草が生い茂っている:7 
 ・異常ない:12 
 ・その他 [トラロープの囲みあり:3]
                   
問2:埋設個所を管理する林野庁所管部署を知っているか
 19市町村(82.6%)が「知っている」と答えました。「知らない」のは、中泊町、甲府市、えびの市の3市町でした。えびの市は管轄が林野庁から防衛施設庁にかわったのを知らないのでしょうか。

問3:地元住民への広報
 「広報している」と答えたのは4市町村で、野田村、大口市が埋設が発覚した84年に、庄原市が98年に広報していました。本別町は広報した年月が不明です。
17市町村(73.9%)が広報していませんでした。その理由として、豊田市は撤去されているため/岩泉町は埋設個所の撹乱防止のため/芦北町は埋設方法及び管理状況が適切なため/都城市は林野庁の業務のため/串間市は付近に民家がなく、厳重に綱で管理されているため/標茶町と湧水町は水質検査等の結果異常がないため、を挙げています。

問4:目視調査しているか
 調査をしていない市町村は16(70%)でした。調査をしたことがあるのは、6市町で、本別町*、岩泉町*、野田村*、庄原市、大口市*、湧水町*でした(このうち林野庁と共同で実施しているのが、*印)。  本別町の調査は98年に実施されただけでした。岩手県の岩泉町と野田村は年2回定期調査で、直近はいずれも07年6月の実施でした。同県では、回答のなかった他の市町村も含む協議会が設置され、目視調査や環境調査結果の検討をしています。
 庄原市は「年5回の不定期調査を実施している」と回答し、直近のものは07年5月でした。
 鹿児島県では、大口市の直近の調査がアンケート実施中の7月6日で、異常なし。湧水町の調査も同じく7月18日で、標識の破損状況、囲いの支柱倒状、ロープ等の切断状況、被覆箇所の表土の状況、植生の進入状況、土石の採取等によるかく乱状況、災害状況を調べています。

問5:環境分析調査をしているか
 「調査をしている」と回答のあったのは、岩泉町(06年9月26日水質底質、検出されず)、野田村(97、04、05年河川水検出されず)、庄原市(98年6月26日の調査では、土壌・河川水・地下水で2,4,5-T不検出)、湧水町(04年1月の土壌調査で不検出)の4市町村でした。調査を実施したことのないのは19市町村(82.6%)でした。

問6:林野庁担当部署が実施した目視調査の結果の報告を受けているか
 報告を受けていたのは、岩泉町、野田村、湧水町、東吾妻町、津野町の5町村でしたが、前3町村は、林野庁と共同調査をしていますし、津野町は処理が終わっています。群馬県の東吾妻町(埋設個所5あり)だけが、年1回報告を受けており、直近のものは07年3月29日で、各埋設個所の標識、囲い、覆土の点検報告があったとのことです。
 報告のないところは18市町村(78.3%)でした。

問7:地元住民や環境保護団体から埋設2,4,5-Tについてクレームや要請をされたか
 23市町村すべてが、「ない」と答えています。宮崎県では、住民団体からの要請がありましたが(本誌109号参照)、これは県に対するものです。

問8:埋設2,4,5-Tについて、議会で論議されたことがあるか
 「ない」とこたえたのは15市町村(65.3%)です。本別町、中泊町、岩泉町、野田村、庄原市、大口市、湧水町の7市町村で議論されたことがありました。
 本別町では、98年6月に町長の行政報告があったとのことです。野田村では、84年9月、村議会で安全性を問われました。
 庄原市では、98年、当時の総領町議会で、安全対策について論議されました。
 大口市では、98年年6月24日の定例会で、地元住民への説明及び林野庁、森林管理署への撤去要請についての論議がなされました。
 湧水町では、84年6月、98年6月と9月、03年6月、04年9月の議会で、2,4,5-Tの環境汚染対策についての議論がなされました。
 また、市町村とは別に、岩手県議会では、98年12月に、内閣総理大臣あての「「2,4,5-T 系除草剤」埋設処分地問題への対応について」の意見書を提出し、撤去を含む恒久的な安全対策を早期に実現すること。埋設地の保全対策の強化・充実を図るこ除去することを求めました。その後、県と関係市町村をメンバーによる2,4,5-T 系除草剤埋設地問題連絡協議会が設置され協議が行われるとともに、例年のように、県議会でもこの問題がとりあげられ、恒久対策を強く求めるという県の見解が示されています。

問9:林野庁、農水省など国の機関・その出先機関や道県の担当部署などに、善処を要請したことがあるか
 13市町村が「ない」と答えています。「ある」としたのは、以下の町村です。
 標茶町では、町長より、地域住民や町議会から苦情が出ないよう、適切な対処を要請し、不安解消に向け、適切な対処をするとの回答を得ました。
 清水町では、98年5月12日、帯広営林署長宛に、埋設場所の現状調査と安全性の確認要求の文書を出しました。
 岩泉町は、07年5月に、東北森林管理局青森事務所に 恒久対策の実施について、土壌・水質測定について、埋設地の保全対策についての要望を出し、保全対策に努めるとの回答を得ました。
 野田村は、99年より毎年1回、同局青森事務所へ岩手県や関係市町村が出向き、水質・土壌の定期的測定と早急撤去について、要望していますが、保全対策に努めるとの回答を得ただけでした。
 庄原市(旧総領町)は 98年5月6日、福山営林署長に対し、「当町内の国有林に埋設された2,4,5-T剤の安全対策について(依頼)」で、水質や土壌調査の実施と埋設物の撤去が強く申し入れました。営林署は、調査を行う必要はない、町が独自に調査する場合は協力すると回答をしています。また、同年6月22日には、林野庁長官、大阪営林局長、福山営林署長あてに「国有林に埋設された2・4・5-T剤の撤去を求める意見書」を出しました。
 湧水町では、98年11月に、議会が旧加治木営林署長へ要望書を提出。署から職員が来て、2,4,5-T除草剤の取扱いの概要、埋設処分の状況等について説明が行なわれました。その後も年2回の現地確認調査が行なわれ、報告も受けているとのことです。

問10:今後、林野庁へ望むこと−複数回答あり−
 ・現状のままでよい:4
 ・林野庁の方針に任せる:14
 ・林野庁に掘削除去を求める:3
 ・林野庁に埋設個所での無害化処理の実施を求める:2
 ・林野庁に埋設個所の管理を今より厳重にするよう求める:0
 ・林野庁と共同で目視調査する:2
 ・林野庁と共同で環境調査をする:0
 ・林野庁に調査をまかせる:1
 ・林野庁に毎回調査結果の報告を求める:2
 ・埋設個所に異常があった時のみ、林野庁から報告を受ければいい:2
 ・地元住民に埋設個所についての現況を広報する:0
 ・その他:2

★埋設2,4,5-Tの今後について
 市町村のアンケート調査では、埋設されていることを知っているところが大部分でしたが、目視調査や環境調査を実施しているところは少なく、林野庁からの調査報告も受けていないところが80%近くあるのも問題です。また、16市町村が、現状のままでよい又は林野庁の方針に任せると回答していますが、撤去・無害化を求めているのは3市町村に過ぎません。
 このように関心が薄れている現状をみると、2,4,5-Tが埋設されていることが忘れ去られる恐れすら感じられます。

@環境調査の実施と住民、自治体ぐるみの監視を
 現在、埋設個所の多くは、林野庁による目視調査しか実施されていません。しかし、地元の市町村議会が問題にすれば、林野庁も共同調査や結果の説明をするようです。
要するに、地元住民に動きがなければ、何もされないままです。
 今のところ、岩手県と同県内の市町村(岩泉町、野田村)が、毎年共同調査を実施して、森林局に善処するよう申し入れをしています。また、アンケート回答はありませんでしたが、宇土市も同様です。そのほか、標茶町、清水町、庄原市、湧水町が地元森林局などにアクションをとっています。
 2,4,5-T問題を風化させないためには、市町村は、林野庁と共同調査し、現状を把握し、地元住民に結果をきちんと広報すべきです。林野庁、市町村、地元住民ぐるみの監視体制が必要です。まず、いままで、明らかになっていない埋設農薬自体のダイオキシン類含有調査も行うべきです。このデータがなければ、漏洩で環境にどのような影響がでるか予測がつきません。さらに、何時、漏洩するかわからない現状では、埋設個所の環境調査の実施を継続的に行うことも求められます。

A掘削・無害化処理をめざすべき
 埋設された2,4,5-Tに含有されるダイオキシン類は難分解性で、放置しておいても減少することはありません。
 岩手県や庄原市、宇土市などは、林野庁や地元営林局に早期撤去や恒常的対策を求めていますが、私たちへの回答で明らかになったように、林野庁は、いまだ99年11月に出した見解を踏襲し、立入禁止のフェンスと看板で現場を保全していくことしか考えていません。  豊田市の埋設個所では、85年に完全撤去しメーカーが引取っていますし、埋設POPs系農薬の処理については、すでに、掘削等のマニュアルが示され、いくつかの無害化技術も開発され、処理も行なわれつつありますから、埋設2,4,5-T系除草剤についても無害化処理をすすめることは可能です。
 風水害や地震などの災害により埋設個所が崩壊する恐れがあることを考えれば、出来る限り汚染が拡大しないような方策をとった上で、早急な掘削・除去と無害化処理の実施が望まれます。

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作成:2008-02-25