農薬の毒性・健康被害にもどる
電子版「脱農薬てんとう資料集」No.6<農薬危害防止運動について>   No.6の参考リンク集

t19402#06年度の農薬被害、死亡6件、中毒19件、農作物等の被害25件#07-10
 農水省は、9月7日に、06年度の 農薬の使用に伴う人身事故及び農作物等の被害の発生状況を公表しました。
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【参考資料】農水省:H18年度分の農薬事故等の発生件数

★件数は前年から減少したが
 それによると、人身事故の内容別件数は表1-(a)のように、死亡6件(6人)、中毒19件(28人)となっています。合計件数は、05年度より4件減少していますが、散布中の死亡が1件1人みられました。
 また、表1-(b)に示した農作物等についての被害件数は合計25件で、前年より9件減っていますが、ミツバチ被害と魚被害はそれぞれ、3件、2件増えています。しかし、農水省統計に表れたのは、事例の一部にすぎないと思われます。たとえば、ミツバチ被害については、06年は16県で107業者から被害がでています(日本養蜂みつばち協会調べ)。
 さらに、表2に示した05年の厚労省の人口動態統計では、農薬による死亡者は637人(前年から21人減で、自殺が大半)です。農薬の種類別では、殺菌剤・除草剤が293人(大部分は除草剤で、前年から23増)で約46%を占めており、ついで、有機リン・カーバメート系殺虫剤が189人(前年から41減)で約30%です。この傾向は、近年あまり変わりません。

 表1 06年度農薬事故・被害内容別件数(農水省調べ)−省略−

 表2 05年厚労省人口動態統計による農薬種類別死亡者数
 農薬の種類                2005年死亡者数  前年から
             男  女  小計   の増減
             
 殺虫剤
  有機リン/カーバメート系   117   72   189  -41
  有機塩素系                  1   -     1   - 2
  その他                 25   8   33    + 7
 除草剤・殺菌剤             175  118   293    +23
 殺鼠剤                       2    -     2    + 2
 その他の剤                   1    2     3    - 3
 不明                        70   46   116    - 7
 合 計                      391  246   637    -21
★クロロピクリン、パラコート系除草剤、有機リン系殺虫剤、リン含有アミノ酸系除草剤がワースト3
 農水省の人身事故25件について、原因農薬や中毒発生状況を農水省に尋ねました。その結果を表3に示します。
 農薬の種類別で、最も多かったのは殺虫剤で、クロルピクリン(以下「クロピク」)が7件、有機リン系が3件(MEP:1、マラチオン:1、DDVP:1)でした。除草剤では、パラコート系5件、リン含有アミノ酸系が3件(グリホサート:2、グルホシネート:1)でした。
 散布中の死亡事故は、ハウス内でのクロピクの使用中におこりました。クロピクでは圃場の被覆不十分による揮散事故が3件、容器廃棄による事故2件がみられました。また、ハウスでは、臭化メチルやプリグロックス(パラコート・ジクワット混合剤)の事故も起こっています。犬猫・野鳥の毒餌事件に使用されるメソミルによる人の事故が1件ありました。
 クロピクは、農水省や厚労省が発出した注意喚起の通知があるにもかかわらず、その使用や廃棄に起因する人の被害が止むことはありません。
 また、パラコートは毒物指定があるのに、毎年自殺原因のトップにあり、使用者の事故も後を絶ちません。今年の7月、EU(ヨーロッパ連合)裁判所により使用禁止の決定がなされましたが、これは、パラコート使用者とパーキンソン病との関連が疑われるためです。すでに、ヨーロッパでは、スエーデン、デンマーク、オーストリア、フィンランドなど13カ国で禁止になっています。日本でもこのような毒劇農薬の使用規制を考える必要があります。
 農薬事故の原因については、表3にあるように、防備の不十分と不注意・誤飲・誤食、不適切な保管・廃棄がそれぞれ5件づつになっています。毒劇法による指定がなくとも、農薬を安易に使用することの危険性をもっと認識すべきです。

 表3 農薬事故の詳細 (06年度:25件、農水省調べ)
中毒の程度 農薬名	    中毒発生時の状況                            原因

死亡    クロルピクリン   暑苦しかったため、防毒マスクをはずした際  防備
                に吸引した模様。ハウスを閉め切っていた。
死亡    パラコート	    不明
死亡    ダコニール(TPN)   誤飲(昼間)                誤飲
死亡    不明        人格障害等で入院、一時帰宅中自宅で動かな  不明
                いところを発見。
死亡    パラコート     当初不明であったが、胃液より反応あり。   不明
死亡    マリックス         不明                    不明
               (ベンゾエピン)
不明(入院)スミチオン(MEP)   不明                    不明
中軽症   クロルピクリン   甘藷の定植前に使用し、被覆しなかったため、 管理不良
                健康被害が発生。
中軽症   クロルピクリン   甘藷の定植前に使用し、被覆していたが、畑  管理不良
                の付近は平地林、人家の塀によりこもりやす
                い状況で、被害が発生。          
なし    トレボン       水と間違えて飲用              不注意
     (エトフェンプロックス)
軽症    パラコート     農薬を移し替える作業中、液がはねて、唇、  防備
                 舌に付着。
軽症    クロルピクリン錠剤 全く認識のないまま一般ゴミにいれてしまい、  保管不良
                               収集車内でゴミ袋が圧縮されガスが漏出。
                               作業員2名が目の傷み。
中軽症      グリホサート       認知症による誤飲?                          不明
            イソプロピルアミン塩
中軽症    クロルピクリン     近隣圃場から揮散。                          不明
軽症    クロルピクリン    リサイクルプラザにおいてガラス瓶(廃棄物) 保管不良
                 (推定)   が割れ、薬液が流出。
軽症    クロルピクリン   民家において1斗缶に入っていた農薬が缶の    保管不良
                               腐食により流出。
軽症    マラソン乳剤    畑仕事中にジュースと間違えて飲用。          不注意
重症    バスタ(グルホシネート) 不明                  保管不良
重症    ランネート微粒剤F 洗面器にランネートをまぶしていた大豆を誤    不注意
               (メソミル)    食(2〜3粒)
中軽症   グリホサート    草刈り中、お茶と間違えて飲用。       不注意
       イソプロピルアミン塩
中程度   プリグロックス   ビニルハウス内で動噴にて除草剤散布中に      防備
   (ジクワット・パラコート)気分が悪くなった。
軽症     DDVP       防護装備が不完全な状態で使用。         防備
軽症        プリグロックス     農具倉庫清掃中口にしたと思われる。          保管不良
                                  (異物を口に入れる癖あり。)
重症    不明        散布中、農薬が体にかかり、気分が悪くなった  不注意
重症    臭化メチル     ビニルハウス内で農作業後、帰宅直後に倒れて  防備
                               起き上がれなくなった。

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作成:2008-01-27