ダイオキシンにもどる
電子版資料集第8号「ダイオキシン含有農薬とPOPs系農薬」
t19403#三西化学跡地のダイオキシン汚染〜三井化学からの回答 99年に土壌中に検出されていたことが明らかに#07-10
記事t19301で報告したように、福岡県久留米市のJR荒木駅構内にある新幹線工事現場(三西化学工場跡地に隣接)でダイオキシンやPCP、BHCが検出されました。
私たちは、福岡県や久留米市に汚染状況や対策などを問い合わせしましたが、すぐに回答できないとの返事で、報道資料以上の情報は得られていません。
その後、県と市は工場周辺の土壌や井戸水、鉄道建設機構は工事現場地域についてダイオキシン等の調査を実施しました。荒木町では、地元の荒木校区まちづくり振興会が、9月18日に説明会を開催、この席で、三井化学(三西化学の親会社)の大牟田工場の担当者が謝罪したとの報道がなされています。
★三井化学の回答〜責任をもって対応したいと
私たちは、三井化学に6項目の質問(記事t19301参照)を出しましたが、9月28日付けの回答は以下のようなもので、ダイオキシンや農薬汚染についての責任を感じているとのものでした(質問6は省略)。
【質問1】三西化学農薬工場跡地について
【回答】
・工場跡地は、アスファルト舗装により被覆した状態になっております。敷地上には、倉
庫(空き倉庫)が一棟残っているのみで、他の構築物はありません。なお、敷地の一部
は、九州新幹線工事に従事する業者の現場事務所として賃貸しております。
・跡地の所有者は、三西化学工業株式会社のままで変更はありません。
・今後の跡地利用については、現在行政等が実施中の調査及び弊社が実施中の三西化学工
場跡地の土壌及び地下水調査の結果を踏まえ、行政とも相談しながら適切な対策を講じ
た上で検討していくことになります。
【質問2】工場跡地からの汚染とその責任について
【回答】
・今般は、三西化学工場跡地周辺にお住まいの住民の皆様に、井戸水や土壌への汚染の懸
念並びに健康へのご不安、ご心配をおかけし、また日常生活へのご不便をおかけしてお
りますことについて申し訳なく思うとともに、本問題を真摯に受け止め、責任をもって
対応していきたいと考えております。
・弊社は、三西化学工場跡地について、9月21日より福岡県、久留米市のご指導に従い、
土壌汚染対策法及びダイオキシン類対策特別措置法に基づく方法により土壌及び地下水
調査を実施しております。弊社としましては、現在行政等が実施中の調査及び弊社が実
施中の調査の結果を踏まえ、福岡県、久留米市のご指導に従い、また住民の皆様のご理
解を得て、速やかに適切な対策を実行していきたいと考えております。
【質問3】工場が汚染原因と考えるか
【回答】
・今般、久留米市荒木駅構内の新幹線工事現場の土壌からダイオキシン類及び農薬が検出
された件に関し、弊社としましては、当該土地の隣接地において、当社の子会社である
三西化学工業株式会社が過去にPCPなどの農薬を製造しておりましたので、その農薬
が原因である可能性があると考えております。
・今後とも自治体等が実施される土壌調査等には全面的に協力していく所存です。
【ご質問4】工場跡地の環境調査について
【回答】
・弊社は、三西化学工場跡地について、99年9月及び11月に土壌調査(PCP、CNP、
ダイオキシン)を実施しております。調査結果は、別紙(次節)のとおりです。
・ご質問2で回答しましたとおり、弊社は、9月21日より三西化学工場跡地の土壌及び地
下水調査を開始し、現在調査中です。調査結果につきましては判明次第、公表いたしま
す。
【質問5】汚染箇所の浄化処理について
【回答】
ご質問2で回答しましたとおり、現在行政等が実施中の調査及び弊社が実施中の調査の結
果を踏まえ、福岡県、久留米市のご指導のもと、また住民の皆様のご理解を得て、速やか
に適切な対策を講じていきたいと考えております。
★99-00年土壌分析結果〜ダイオキシン2.6万pgTEQ/g、PCP15.7万ng/g
私たちは、99年に三井化学に対して、三西化学跡地の環境分析を実施するよう求めました。当時は回答がなく、そのままになっていましたが、今回の回答で、99年9月から00年1月に除草剤のPCP、CNP及びこれらに由来するダイオキシンが跡地の土壌中に検出されていたことが明らかになりました。
その結果を表1と図−略−に示します。ダイオキシン濃度を示した図には、アルファベットで土壌採取地点を示してあり、ダイオキシンが最も高いのはJ地点表層の2.6万pgTEQ/g(土壌環境基準の26倍)、CNPが最も高いのはG地点表層の19.1万ng/gでした。同一地点でPCP、CNP、ダイオキシンの3種が分析されたのは、PCPが最高濃度を示したB地点表層のみで、PCP15.7万ng/g、CNP50ng/g、ダイオキシン120pgTEQ/gでした。
CNP中に最も多く含有され、TEQ評価の対象外である1,3,6,8-、1,3,7,9-四塩化ダイオキシンの検出値やダイオキシンの同族体・異性体の実測値がわかれば、ダイオキシンのパターン解析が可能ですが、三井化学は実測データの開示を求めた私たちの再質問には、回答してきません。従って、ダイオキシンの由来について、詳細な考察はできませんでした。
いずれにせよ、敷地内には操業停止後20年以上経つのに、いまだに土壌中に農薬PCPやCNPが高濃度で残留しており、それらに由来するダイオキシンも見出されているのは確かだと思われます。
表1 三西化学敷地内土壌の農薬分析結果 (採取年月:99年9月、単位:ng/g=ppb) −省略−
★三井化学の工場敷地内環境調査計画
三井化学が、9月19日に発表した三西化学敷地の環境分析計画では、土壌中のBHC、DDTに加え、土壌汚染対策法の特定有害物質(シマジン、チウラム、チオベンカルブ、4種の有機リン、砒素、水銀、PCB、トリクロロエチレン、ベンゼンなど25物質)については10m四方の区画約160、ダイオキシンとPCP、CNPについては、30m四方の区画約26が分析対象となっています。また、地下水については10個所が土壌と同じ農薬等の分析が予定されています。
すでに、検体の採取が実施され、分析結果は2ヶ月後に公表されるようですが、CNPについては、ニトロ体だけでなく、アミノ体の分析を、ダイオキシンについてはTEQ値だけでなく、同族体・異性体別実測値を明らかにしてもらう必要があります(その後、当グループに対し、実測値を明らかにする)。
三西化学土壌中のダイオキシン分布パターン判明〜除草剤PCPとCNP+PCB由来
★福岡県による井戸水調査
10月10日、福岡県と久留米市はJR荒木駅周辺の14戸の水質調査結果を公表しました(表3参照)。PCP、CNP,DDT、有機リン化合物はいずれもND(不検出)、地下水環境基準26項目(水銀、砒素、ベンゼン、シマジン、ベンチオカルブ、PCBほか)は基準以下でしたが、荒木駅西側の一軒の井戸水からBHCが環境管理指針値を超えた0.0027mg/L検出されました。県と市は、常時飲用しなければ健康に関して影響がないとしていますが、今後、BHCの追加調査をするとともに、飲用井戸を中心に井戸水調査を拡大するとのことです。
表3 荒木駅周辺の井戸水環境調査結果(07年9月、単位:mg/L)
PCP CNP BHC DDT 有機リン 地下水環境
基準値等(mg/L) 0.009 0.0001 0.0025 0.0125 ND 基準26項目
荒木駅西側9戸 ND ND ND−0.0027 ND ND 基準以下
三西化学跡地 ND ND ND−管理 ND ND 基準以下
北東側3戸 指針値以下
荒木駅南側2戸 ND ND 同上 ND ND 基準以下
購読希望の方は、〒番号/住所/氏名/電話番号/○月発行○号からと購読希望とかいて、
注文メールをください。
年間購読会費3000円は、最初のてんとう虫情報に同封された振替用紙でお支払いください。
作成:2008-03-24