環境汚染にもどる
t19502#熊本県荒尾市:依然としてつづく、PCP工場跡地からの水系汚染#07-11
熊本県荒尾市での浦川流域水系の農薬汚染に関して、06年12月の県の調査では、10μg/LのPCPが検出されました(記事t18105、記事t18802)。汚染元と考えられる地域には、かって、PCPなど農薬を製造していた三光化学荒尾工場(現三光株式会社)があります。
★河川水からPCP9.3μg/L検出
今年に入ってからの熊本県の調査結果は表1のようで、8月1日に採取された浦川支流増永川の河川水では9.3μg/L(8月23日結果判明)と、WHO飲料水水質ガイドラインの9μg/Lを超えてしまいました。BHCは、管理指針値以下でした。
土壌の分析結果も表に示しましたが、いままでの最大値を示したのは工場敷地の深度5mの地点で、今後、汚染元を特定するためには、更に詳細な調査が必要です。
表1 PCP、BHCの環境調査結果(熊本県)−省略
★県は地下水の取水調整を要請したが
熊本県は、8月24日に、汚染元近くにあると考えられる三光轄r尾工場ら3工場に井戸水の取水量を調整をし、工場からのPCP排出量を約20%減らすよう要請しました。
その根拠となる試算結果を表2に示します。工場名は伏せられており、それぞれが
取水する井戸ごとの揚水量とPCP濃度があげています。河川へのPCPの一日排出量は、各工場での処理後のPCP濃度から推定された値です(単位:g/日)。
揚水量とPCP量の欄の →印の、左が現状、右が取水制限後の数値で、たとえば、
A工場のPCP160μg/Lを含有する水を現在一日当たり140m3汲み上げているが、これを
ゼロとすることにより、一日13gのPCPを河川へ排出していたものをゼロにするということです。3工場5個所の井戸水の取水調整の結果、PCP排出量は一日当たり91.3gから19.8g減少し71.5gとなり、河川水のPCP濃度は、WHO基準9μg/L基準になるというわけです。
敷地内のどこかに汚染元があり、地下水脈を通じて、井戸水、河川水の汚染へとつながると考えられますが、肝心の汚染元が不明では、抜本的対策とはなりません。ただWHO基準を超えなければいいというのでは、PCPの水系汚染は今後もつづくことになります。
表2 工場井戸からのPCP排出量
工場名 井戸No. PCP濃度 揚水量 河川への排出時
μg/L m3/日 PCP量推定値(g/日)
A 1 45 503 13
3 66 150 5.9
5 1.1 0→140 0→0.092
7 160 140→0 13→0
B 1 0.021 347→377 0.0045→0.0046
2 6.9 61 0.11
3 0.046 192 0.0088
4 66 201→171 12→10
6 0.010 104 0.0010
C 5 64 720→648 46→41
2,6,11 0.36 1075 0.097
合計 3493→3421 91.3→71.5
注:PCP(ペンタクロロフェノール、ダイオキシンを含む水田用除草剤で、1960年代から70年代初めにかけて多用された。魚毒性が強く、水質汚濁性農薬に指定されていた。90年6月にすべての登録農薬は失効したが、水田土壌や河川・湖沼・海の底質にはPCP由来のダイオキシンがいまだ検出されている。)
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作成:2008-02-25