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t19505#水質汚濁に係る登録保留基準で、環境省が改定案〜パブコメ締切は12月4日#07-11
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 除草剤クミルロンの魚介類での残留基準はなく、一律基準(0.01ppm)が適用されていましたが、シジミの基準超えを契機に、厚労省は8月21日、残留基準を0.4ppmとして告示しました。当グループは、パブコメで、残留基準を設定すべきでないとの意見を述べましたが(記事t19101参照)、同省は農薬の使用が適切に行われているか否かの検証もせず、『適正な止水管理等の措置がなされたにもかかわらず、農薬等が河川等に流出し、魚介類に残留する可能性も否定できない』との見解を示していました。
 私たちは、シジミへの農薬残留が明らかになっていた06年12月に、環境省に、登録保留基準で、魚介類の農薬残留基準や一律基準を守れるかとの質問しました。環境省の回答は『水質汚濁登録保留基準値は、一律基準値や残留基準値を担保するためのものではなく、水質汚濁に係る登録保留基準が守られていれば、残留基準値を超えることはないというものではないと考えます。』でした。
 その後、環境省は考え方をかえ、『汚濁水により汚染される水産動植物について、食品衛生法の残留基準に適合するよう、水質汚濁に係る農薬登録保留基準を改正する必要がある。』として、新たな提案を行い、11月5日よりパブリックコメント募集を始めました(安全性評価及び基準値設定の方針案改定についての報告案募集結果)。

★安全性評価については、環境省が暫定ADIを決めると
 環境省は、花卉、樹木、芝等の非食用農作物のみに使用されている農薬(以下、「非食用農作物専用農薬」)では、慢性、発ガン性、繁殖毒性試験データの提出が免除されており、新たに設置される非食用農作物専用農薬安全性評価検討会で以下@からBのような安全性評価を実施し、暫定ADIを設定するとの提案をしました。
@厚労省又は環境省の審議会、国際機関や外国政府が作成した評価文書等から、慢性経口投与毒性試験等に係る知見を収集し、適切な安全係数を用いる、A亜急性経口投与毒性試験等の試験の無毒性量の最小のものに、安全係数1000を用いる、Bメーカー等から任意に提出された慢性毒性経口試験等が農水省のテストガイドラインに準拠している場合、適切な安全係数を用いる
 日本の消費者は、農薬登録の際に提出される毒性試験データをもとに、食品安全委員会による健康安全評価が実施され、無毒性量に安全係数を乗じてADIが設定され、その数値を曝露評価に使うというのが現行制度と思っていましたが、そうではない場合もあるということが明かになりました。

★登録保留基準は飲料水と魚介類残留値の二本立て
 一方、従来の水質汚濁に係る登録保留基準は飲料水経由の農薬摂取量をADIの10%以下、生物濃縮係数が5000を超える魚介類経由の摂取量を加えた場合15%以下になることとされていました。
 改定案では、(イ)生物濃縮係数に関わらず、飲料水からの摂取がADIの10%、(ロ)魚介類の残留基準、(ハ)暫定残留基準又は一律基準、のいずれか超えると登録を保留するとなりました。
(イ)では、年平均の水質汚濁予測濃度=水濁PECと基準値を比較してリスクが評価されます。(ロ)(ハ)については、、厚生労働省研究班報告書に従って算出された魚介類への推定残留量が残留基準、暫定基準または一律基準を超えないことを登録段階で確認するとともに、魚介類中の農薬残留量のモニタリング結果等から事後的な評価も行うこととする、とされました。
 登録保留基準はすべての農薬に適用されますが、施行される前に既に登録された農薬に対する基準を見直す必要があることを忘れてはなりません。

★非食用作物用農薬にも毒性試験の義務付けを
 農薬の登録申請に係る試験成績についての通知(12農産第8147号)には、27種の毒性に関する試験成績の提出が求められていますが、その別表2で試験成績の除外についての条件があげられています。
 たとえば、1年間反復経口投与毒性試験や発ガン性試験、繁殖毒性試験などは、@ 当該農薬の剤型、使用方法等からみて、人が当該農薬の成分物質等を長期にわたり摂取するおそれがないこと、摂取する量がきわめて微量であること等、A 当該農薬の成分物質等の種類等からみて、その毒性がきわめて弱いこと等、の理由により安全と認められる場合には、試験が免除されることになっています。
 先の環境省の説明をみると、非食用作物専用農薬は食品に残留しないということで、免除条件にあてはまるようです。散布する農薬使用者の直接被曝や散布地周辺の住民の受動被曝を考えれば、毒性試験免除はとんでもないことです。
 非食用作物専用農薬についても、慢性、発ガン性、繁殖毒性試験などの実施を義務づけるべきです。今後登録される農薬はもちろん、既に登録され試験免除になっている農薬についても、期限を決めて試験成績の提出を求める必要があります。

★魚介類への残留防止のためには、使用規制を
 私たちは、一律基準より高い残留基準の設定をめざした先のクミルロンのパブコメで『今後、他の農薬が、魚介類に残留した場合、今回と同様な方法で基準が設定されることは、出来るだけ農薬の摂取量を減らすことを望む消費者の安心・安全の意向を無視したものである。』と述べました。
 まず、必要なのは、農薬の使用基準が守られるているかどうかの検証です。魚介類の棲息水域で、現行の残留基準、一律基準を超える原因を調べることが先決です。
 関連水域での当該農薬の使用規制を図ることにより、基準を超えないことが判明すれば、わざわざ、残留基準を設定する必要もありません。
 今回の提案は、魚介類への農薬残留を是認するもので、このようなやり方で,、拙速に魚介類の残留基準の設定していくことには反対したいと思います。パブコメの締切りは12月4日です。環境省へ意見を送りつけましょう。
 当グループのパブコメ

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作成:2008-04-28