環境汚染にもどる
t19506#米子市でのケヤキ並木に散布の農薬が水稲に飛散#07-11

【参考資料】鳥取県報道資料:第1報第2報第3報第4報
【関連通知】非食用農作物等の農薬使用による周辺食用農作物への影響防止対策について
       住宅地等における農薬使用について

 今年の6月、青森県つるが市で県が道路除草のため散布したラウンドアップ剤で、水稲や大豆ほかの農作物に約5000万円の被害がでましたが( 記事t19204)、9月に、鳥取県で道路の植樹帯に散布していた農薬が収穫間近の水稲に飛散するという事件が起こりました。

★県委託の業者が散布
 9月18日、県西部総合事務所が樹木管理を委託していた業者が、米子市淀江町の国道431号の600mにわたり、歩道上のケヤキ、ツツジ及び中央分離帯のモッコク等に スミチオン乳剤の800倍希釈液を800L散布したところ、翌19日に「散布した殺虫剤が刈り取り時期を迎えた稲にかかっている、ライスセンターへの搬入は大丈夫か」との県民からの問合せがあったのが事件の発端です。同事務所は直ちに対策本部を立ち上げ、関係者に謝罪したということですが、私たちは、農薬散布について指導的立場にある県等に問合わせを行い、その背景をさぐりました。

★県は道路管理の農薬散布に年間3300万円の経費を使っている
 鳥取県では道路管理費に年間3.92億円(06年実績、うち農薬散布3300万円)を使用しています。農薬散布の実態を農薬種類別実績(06年度の道路延長キロ数:単位km)でみると表1のようになっており、総延長キロ数は392kmです。その62.5%は植樹帯で、殺虫剤の使用が最も多く62.2%の244km、ついで除草剤が33.9%の133kmとなっています。

 表1 農薬種類別延べキロ数(06年度実績、単位:km) −省略−

 表2には農薬成分別の数量と経費を示しました。06年度の農薬別経費のうち最も多いのは、殺虫剤スミチオン乳剤で81.0%の2820万円をしめていました。地区別でのナンバー1は西部総合事務所で1970万円がスミチオン乳剤散布に費やされました。
 表2 農薬成分別散布経費(06年実績) −省略−

 散布業者は、5つの地区事務所合計で延べ40社、一例が随意契約のほかはすべて、競争入札になっていました。

★農薬の適正使用を求めていたが
 このような状況下で、本年も06年実績とあまり変わらぬ散布計画と予算が組まれていました。
 県は、農薬使用に際しては、安全使用基準の遵守や周辺居住者等への事前周知徹底など委託業者に指導しており、「住宅地等における農薬使用について」や「非食用農作物等の農薬使用による周辺食用農作物への影響防止対策について」(以下、「非食用農作物通知」という)を通知を周知させていたとしています。また、造園建設業協会には、農薬飛散防止に係るパンフレットを配布するとともに、農薬適正使用について、造園業者の求めに応じてで説明会を行っていたとのことです。
 にもかかわらず、今回の飛散事件は、西部総合事務所が発注した道路植栽樹木管理事業(総経費1690万円)でおこりました。
 同事務所からの回答の要旨は以下のようです。
  @通常、ケムシなどの害虫は、発見時に除去している。冬季剪定時には、
   繭で越冬するイラガ等を捕殺する等の物理的除去を試みている。今回
   は発生した害虫(アメリカシロヒトリ)が複数の高木等樹木にわたって
   いたため農薬を散布した。農薬の散布を判断したのは委託業者。
  Aスミチオンを使用した理由は、樹木類に登録のある農薬で、街路樹に
   よく見られるアブラムシ、グンバイムシ、アメリカシロヒトリに効く
   ため/食用作物に登録のある安全性の高い農薬のため。
  B動力噴霧器使用。現地での風向風速を測定したデータなし。
  C委託業者により、散布予定個所の起終点に立看板で周知を図る。
  D周辺に収穫間近い水稲があることを認知していた。
  E周辺に住宅地はなく、住民の健康被害の有無についての調査はしていない。
★再発防止対策は、農作物のある場合農薬散布中止
 水稲については、道路から5mと22m離れた22圃場から採取した玄米の残留分析調査の結果、29検体からMEPは検出されませんでした(検出限界0.02ppm)。しかし、残留農薬の有無が判明するまで、収穫を見合せる/ライスセンターへ搬入された米は別仕分けするとの措置がとられました。
 関連農家に対する被害補償については、委託業者との契約に『委託業務の処理に関し発生した損害(第三者に及ぼした損害を含む)は、乙の負担とする。』とありますが、農薬を使うべきか否かの判断を業者に任せた県の管理責任は問われるべきです。
 県は、再発防止のための今後の対策として、高木の薬剤防除は、飛散を最小限に防ぐ対策をとり、実施する/自治会等を通じた周辺住民への周知/農作物がある場合の中止することを挙げています。
 農水省が発出した「非食用農作物通知」通知では、樹木等に使用する農薬の食用農作物への飛散防止のための7項目をあげ、当該土地、施設等の管理者、病害虫防除の責任者、農薬使用委託者、農薬使用者等は各事項の遵守の徹底に努めることとしています。この指示が守られていたら、今回のような不適切な散布は起こらなかったでしょう。
購読希望の方は、〒番号/住所/氏名/電話番号/○月発行○号からと購読希望とかいて、 注文メールをください。
年間購読会費3000円は、最初のてんとう虫情報に同封された振替用紙でお支払いください。
作成:2008-02-25