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t19603#農薬登録制度の刷新懇談会−国際的に整合性をもたせるため#07-12

【関連サイト】農薬登録制度に関する懇談会
       第1回の議事概要資料
       農薬製造事業者及び農薬関係団体との意見交換の概要
       第2回の議事概要資料

 農水省は、12月5日に「第1回農薬登録制度に関する懇談会」を開きました。この懇談会は、消費・安全局長の私的懇談会で、農薬対策室の属する農産安全管理課長が座長的役割を果たすそうです。
 懇談会設置の目的は、プレスリリースでは次のように説明されていました。@欧米では農薬の毒性や残留性等に関する試験について、実施方法や評価方法が改善されており、OECD(経済協力開発機構)はガイドラインなどの策定を通じて、国際調和が進められている。A農林水産省は海外の動向を十分に把握し、科学的な情報に基づきリスクの程度を考慮するとともに、我が国の農薬登録制度に係わる各分野の有識者からの意見を聴取し、その方向性を議論する。
 日本で遅れている試験・評価方法などを欧米と整合性がとれるように改善していくということらしいのですが、それ以外にも、登録制度に係わる話もなされるようです。
 「各分野の有識者」として委員に選ばれたのは、主婦連、日生協、神奈川県・埼玉県の農薬関連担当者、JA全農、農薬工業会、植物防疫協会、大学教授各1名という顔ぶれです。

★ARfDとAOELを導入
 第1回目の会合は、勉強会と位置づけられ、農薬対策室長が1時間半にわたって農薬の登録制度の概要と懇談会のテーマなどを説明しました。
 日本における今後の検討課題として上がっているのは、(1)リスク評価。JMPR(FAO/WHO合同残留農薬専門家会議)やアメリカ、EUでは長期曝露評価に加え、短期曝露評価を実施し、ARfDと比較。EUでは使用時安全の観点からの毒性指標AOELを設定して、農薬使用者だけでなく、園内作業者における曝露も評価。日本でもこれらの方向に対応したデータ要求、体制整備の検討が必要、とあります。
 検討課題の(2)は、新しい科学的知見が得られた場合の(農薬登録時の)データ要求についてで、これまでの例として、平成12年には、急性神経毒性試験や反復投与神経毒性試験のデータを新たに要求。平成19年には生物濃縮性試験を要求。とあり、今後、日本でもOECDテストガイドラインの整備状況を踏まえた取り組みの加速が必要と書かれています。  (3)は、作物残留性試験に関するものです。
 こうした課題を懇談会で検討していくということでしょう。

【注】ARfD=Acute Reference Dose(急性中毒参照用量。mg/kg体重/日単位で表示)は、食品中の残留農薬基準を決める際に使用されるADI(一日摂取許容量)が生涯摂取しつづけても健康に影響がない量であるのに対して、一時的な摂取で、24時間以内に急性的に健康への影響がでない量のことで、ADIよりも高い値になります。ARfDの導入により、食品の残留基準が緩和される恐れがあるので、今後、注視していく必要があります。
 AOEL=Acceptable Operator Exposure Level(作業者曝露許容量。mg/kg体重/日単位で表示される)は、労働者における産業衛生許容濃度の基になるもので、日本では、農業者に適用される基準はなかったので今後取り入れるということでしょう。これは、周辺住民の受動被曝の評価にはあてはまりません。
 たとえば、EUでは、MEP=スミチオンのADIは0.005mg/kg体重/日、ARfDとAOELは0.013mg/kg体重/日となっています。気中濃度にあてはめると、体重50kgの人に対して、ADIが17μg/m3、AOELが43μg/m3となり、環境省の航空防除の大気中濃度評価値10μg/m3よりも大きな値になります。

★作物残留性試験のGLP導入など
 「19年度に検討する項目」には、@作物残留性試験へのGLPの導入(平成20年4月施行)というのがあります。現在、登録時に要求される作物残留性試験は2例以上と欧米に比べて試験数(アメリカ9-20例、EU16例/2ゾーン)が少なくてよいことになっており、かつ、GLPも導入されていません。これを来年度から欧米並みにしようということで、その検討を早急に行い、2月にパブリックコメントをするということです。
 次に、A薬効・薬害試験の実施要件の緩和があげられ、これも来年度から施行する事になっています。
 また、B既登録農薬の作物残留試験例数の増加への適用に係わる優先リスト及び検査基準の作成及び提示、C作物残留性試験の例数増の新規申請、既登録農薬への適用等があげられていますが、項目として上がっているだけで詳しいことは次回に説明するとのことでした。
【注】GLP=Good Laboratory Practice(優良試験所基準)は、信頼ある試験を実施するための試験設備や試験計画、試験記録方法などの基準で、毒性試験にはすでに適用されている。

★発達神経毒性を要求すると
 「20年度以降に検討する項目」としては、@発達神経毒性試験成績の要求、A農薬使用時安全に関するリスク分析の導入、B加工調理試験のガイドラインの導入及び検査基準の見直し、C家畜移行試験ガイドラインの導入作物の農薬登録に係わる検査基準の見直し、Dその他法改正に伴う規制の実効性の検証等による農薬の安全性の確保に向けた検討、となっています。
 発達神経毒性試験は、11月に行われた日本弁護士連合会のシンポジウムでも強く要求されたもので、有機リン系農薬の神経毒性に対応したものと思われます。
 室長の説明の後、委員からの質問が出されましたが、その中で農薬工業会は「国際的に整合性を持たせるということは理解するが、たとえばEUでは新しい制度にして、急激な変化の中で登録農薬が10分の1に減り、農家が打撃を受けている。農薬は必須の手段なのだから日本の現状にあった見直しをすべきだ」と述べ、EUの制度を取り入れることに難色を示しました。なるほど、これが農薬メーカーの本音なのだと納得した次第です。日本から欧米諸国への農薬輸出は金額ベースで全体の約60%を占めており、当然、輸出先の規制に合わさねばなりませんし、日本での登録制度を、より厳しい欧米並みにしたくないということは、国内の農薬登録制度を緩いままにしておけということでしょうか。

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作成:2008-03-24