行政・業界の動きにもどる
t19604#植物保護液「アグリクール」に農薬成分-農水省が農薬疑義資材の取締り強化#07-12
11月22日、農水省は「三好商事株式会社が製造・販売した「アグリクール」から農薬の有効成分(アバメクチン)が検出されたことに伴う立入検査の実施等について」という通知を発出し、アグリクールを無登録農薬と認定しました。同時に、通知「無登録農薬と疑われる資材に係る製造者、販売者等への指導について」(以下「指導通知」という)で、こうした農薬まがいの資材を「疑義資材」と命名し、その判断基準と取締りの強化を示しました。
【参考資料】無登録農薬と判断された資材への対応について、報告命令
有機JAS認定ほ場におけるアグリクールの使用状況調査結果等について(12/14)
三好商事株式会社が製造・販売した「アグリクール」から農薬の有効成分(アバメクチン)が検出されたことに伴う同社の販売・回収状況について (12/14)
★過去の事例
農業資材として販売されていた製品に農薬成分が入っていた事例がいくつかあります。 02年3月に、三重県の「ゆうき大地の会」が製造・販売していた有機資材「すこやかくん」などにMEPが含有され、シソに残留したため発覚しました。
03年7月には、ラン用の活力剤「らん一番」と添加資材セット(過去又は現在登録農薬成分含有、成分名は公表されていない)がナスの着果促進に使われ、無登録農薬にあたるとして取締まられました。04年9月には、クララ抽出物に農薬成分が含有されていたことが明らかになりました。
★「クララ」「アバメクチン」とは
クララは、苦参とも表記するマメ科の多年草で、その抽出液が農業資材として製造・販売されています。特定農薬情報に挙げられましたが、農薬効果が不明として保留資材に区分されていました。このため、農薬効果を宣伝に使うことはできずに、植物保護剤などとして販売され、一部の有機JAS認定機関では、有機農作物への使用を認めていました。
04年9月には、農水省が、中国から個人輸入されたクララ抽出物を主成分とする資材に合成ピレスロイド系のシハロトリンが0.12%検出されたとして、その販売・使用をやめるよう指導しました。この不正が判明したのは、三重県が収去した同県産のニラにシハロトリンが0.13ppm残留していたのを契機に、原因調査を実施した結果でした。
その後、農薬検査所が05年度に、クララ剤について、ネオニコチノイド系農薬・合成ピレスロイド系農薬・有機リン系農薬ら3つを選定し、農薬成分の有無及びその含有量の分析を、さらに植物保護剤4種類、4検体について、アバメクチンの分析を行っていますが、調査結果は不明です。
今回摘発されたのは、三重県の三好商事鰍ェ製造した「アグリクール」で、クララを原料とした農植物保護液・特殊肥料登録三重県第752号として販売されていました。
この剤は、今年4月の日本農薬学会で、千葉大学の本山教授のグループが、アバメクチンとエマメクチンが含有されていたとの報告していました。三好商事はアバメクチンなど447農薬成分はすべて、0.005ppm未満で検出限界以下であったとしたものの、07年3月以降、アグリクールの製造を止め、4月以降の販売はないとのことです。
農水省の調査(昨年製造されたものを10月に入手4検体を分析)では、農薬成分であるアバメクチン類が0.2%検出されました。
アバメクチンは、土壌バクテリアのStreptomyces avermitilisが産生する抗生物質で、
殺虫剤や動物用薬品の用途があり、欧米ではアビド(Avid)という商品名で登録されている農薬ですが、日本では目下登録申請中とのことです。急性毒性が強くラットのLD50は8.7-12.8mg/kg体重で毒物に相当し、ADIは0.0023mg/kg体重/日となっています。02年夏に発覚した無登録農薬事件では、アビドが、岩手県/宮城県/千葉県/山梨県/鳥取県/広島県/愛媛県/大分県/沖縄県で花卉やイチゴなどに使用されていました。
★農薬疑義資材とは
地方農政局長ほかと都道府県知事宛の指導通知では、『農薬登録を受けることなく、何らかの形で農作物等への使用が推奨され、かつ、農薬としての効能効果を標榜しているか、もしくは、成分からみて農薬に該当し得るもの』を疑義資材と定義付け、その製造者、販売者の取締り強化を打ち出しました。
−中略− 指導通知参照。
★農薬目安箱を設置
農水省は、疑義資材を取締まるため、ホームページ上に「農薬目安箱」を設け、一般からの情報提供を求め始めました。『情報提供に当たっては、農林水産省における調査に資するため、可能な限り詳細なものをお寄せ下さい。』との説明があり、投稿フォームには氏名、住所を記入する必要があります。同省は、11月初めに、食品偽装表示について、警察庁との連絡強化を打ち出しており、無登録農薬や農薬取締法違反についても、警察の出番が増えるのでしょうか。
★登録農薬等の成分にも問題あり
一方、登録農薬の成分に問題ないかといえば、おおありです。製剤の補助剤として、成分不明のものが添加されていますし、含有される不純物とその数量も企業秘密として明らかにされません。農薬検査所(現農林水産消費安全技術センター検査部)が実施している農薬製造場への立入検査では、毎年、何個所かで、登録と異なる製造処方で製造されていたとの報告がみられます(農薬検査所報告)。また、疑義農薬の定義からはずれますが、農薬と同じ成分を含む非農作物用除草剤が空き地や運動場、道路や鉄道線路などでいくら使われても農薬取締法の対象外であるという現状を放置したままでいいのでしょうか。
★特定農薬は475種の保留資材の整理へ
農薬疑義資材の摘発は、減農薬や有機農業の生産者が、いかがわしい製品に騙されないためにも有効ですが、03年3月の改定農薬取締法で、有機農法等で使用できる化学合成品でない農業資材(農作物等、人畜及び水産動植物に害を及ぼすおそれがないことが明らかなもの)を使えるようにするためとして、導入された特定農薬制度はどうなったのでしょう。
当初、どのような資材を特定農薬にするかの情報が収集されましたが、いままでに、特定農薬として認められたのは、食酢、重曹、地域の天敵の3種のみです。情報提供のあった約740種のべ2900種の資材は、その後、農薬に該当するものや農薬でないものが除かれ、475種が保留資材として、農薬効果を謳って製造・販売しないかぎり、使用者の自己責任と判断で使ってもよい資材となっていました。このうち、木酢液と電解次亜塩素酸水は、特定農薬の認定に必要な薬効や安全性等のデータが揃わず、検討が継続されています。
10月30日に開催された特定農薬小委員会では保留資材を、@現在使用されている資材、A調査で情報が得られなかった資材、B削除すべき資材の3つの区分に整理することになり、有機農家等の調査やパブコメによる情報収集して、今後、特定農薬に該当するかどうかを判断をする方針が決まりました。
私たちは、当初から特定農薬制度には反対し、有機農業資材は、有機農業に関する別の法律で扱うべきだと主張してきましたが、農水省は農薬取締法にこだわっており、特定農薬の認定にまだまだ時間がかかりそうです。
【参考資料】第8回特定農薬小委員会(07/10/30)の概要と配布資料
特定農薬としての指定が保留されている資材の取扱い(案)に関する意見・情報の募集についてと
取扱い(案)(期間:07/12/17〜08/01/18)
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作成:2008-05-28