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t19606#殺虫剤指針で、今度はリスク評価方法のパブコメ−承認の条件は不明のまま#07-12

厚労省は、薬事法殺虫剤指針に関する2つのパブリックコメント募集を11月に実施しましたが、その内容は薬剤の規格や効力試験方法についてでした。私たちは、殺虫剤指針そのものを根本的に見直すべきだとの主張を記事t19501で行い、パブコメでも『(指針は)使用者や居住者、入室者の安全を守る役割を果たしていない。衛生害虫駆除に使用される殺虫剤は、生活環境で使用されるものであり、毒性評価は農薬よりも厳しくあるべきなのに、それが示されていない。』と批判しました。
 11月末、同省は、第3番目のパブコメ募集として「一般用医薬品及び医薬部外品としての殺虫剤の室内使用時のリスク評価方法ガイドライン(案)に関する意見の募集について」をはじめました(12月27日締切)。今回は、殺虫剤のリスク評価方法が示されていますが、まずは、その概要をみてみましょう。

【関連サイト】 一般用医薬品及び医薬部外品としての殺虫剤の室内使用時のリスク評価方法ガイドライン(案)に関する意見の募集について(07/11/28-12/27)
概要ガイドライン、当グループのパブコメ

★3段階の殺虫剤評価手順
 次に示す3つの段階でリスク評価をすることが提案されていますが、農薬の場合の登録保留基準のように承認基準になるのでしょうか。
@殺虫剤成分の安全性に関する用量−反応評価より、TDIを求める
 耐容一日摂取量(TDI:Tolerance Daily Intake)は毒性試験から得られた無毒性量NOAEL又は最小毒性量LOAELを不確実係数(UF:Uncertainty Factor)で除して算出する、となっています。UFは種差、個体差、毒性、試験期間ほかの6項目でそれぞれ、1〜10として、10000未満に設定されます。
Aヒトへの暴露量の推定する
 評価対象とする製剤の剤型、用法、用量を踏まえ、室内空気、床面等を介した経気道、経口、経皮によるヒトへの暴露量を評価する、となっています。
 室内空気中濃度測定方法ガイドラインに従って室内空気中濃度及び床面等の残渣量を求め、この暴露評価試験により得られた情報をもとに、成人と小児の区別など諸要因を考慮して、経気道、経口及び経皮暴露量を推定する。
B殺虫剤の室内使用時におけるリスク評価
 2つの方法のいずれかでリスク評価をするとの案です。
1.TDI を用いた安全性評価方法
 各経路におけるTDI に対する暴露量の占有率を算出し、合計占有率を算出し、使用上の注意等の設定を行う。判断基準は占有率10%未満の場合リスクはかなり低い/10〜100%の場合リスクは低い/100%以上の場合無視できないリスク。
2.MOE を用いた安全性評価方法
 MOE(Margin of Exposure:暴露の余裕度)は、各経路別又は総暴露量に対してのNOAELが何倍高いかを表すものであり、これによって使用上の注意等の設定を行う。判断基準はMOE1000を超える場合リスクはかなり低い/100〜1000の場合リスクは低い/100以下の場合無視できないリスク。

★医薬品承認の条件を決めずに、用法・用量規制をめざす
 このパブリックコメントは「殺虫剤指針等の改訂に関する検討委員会」の第3作業部会「安全性に関する作業部会」の検討結果ということになっています。
 記事t19501でも書きましたが、この検討会は殺虫剤指針の抜本的改訂が目指されていたはずです。ところが、今回の案では、最初からリスク評価の方法をあれこれ言っているだけで、どういう薬剤を医薬品・医薬部外品として承認するかということが一切省かれています。いままで通りメーカーが申請したものを、ほとんど自動的に承認し、規制は用法・用量で行なおうという姿勢です。
 殺虫剤成分の毒性試験については、原則として「医薬品の製造(輸入)承認申請に必要な毒性試験のガイドライン(平成元年9月11日)とOECD試験ガイドライン等に基づいて実施された試験結果を用いる」と書かれています。
 このガイドラインは、基本的には、疾病を有する人が用いる医薬品について、薬効を前提に、出来るだけ薬害をなくすための用法・用量を決めるためのもので、毒性試験としては、(1)単回投与毒性試験(急性毒性試験)、(2)反復投与毒性試験(亜急性毒性試験、慢性毒性試験)、(3)生殖・発生毒性試験、(4)皮膚感作性試験、(5)皮膚光感作試験の5種類だけです。胎児から老人まで、一般人が非意図的に取り込む恐れのある殺虫剤に課せるべきなのは、農薬の場合と同等以上の毒性試験ですが、そのような姿勢は見えません。

★誰がリスク評価するのか
 パブコメ案では、TDIや不確実係数など求める方法を示し、暴露評価やリスク評価を行うことになっていますが、これを誰が行うのか不明です。
 また、経口、経皮、経気などの各経路の暴露量の合計がTDIを超えてはならないとありますが、10%〜100%までは、「リスクは低い」と評価されることになっています。TDIを超えなければいいというわけですが、同じ成分の薬剤がシロアリ駆除剤や農薬、室内飼育ペット用薬剤などにも使用されており、殺虫剤だけで、100%までいいというのは納得できません。
 さらに、農薬等で食品安全委員会が設定しているADI(1日摂取許容量)の按分は、食品で80%、飲料水で10%、その他が10%となっています。TDIがADIと同等ならば、大気からの摂取は10%以内に納めなければならないはずですが、100%までいいということは、どういうことでしょうか。
 不確実係数については、妊婦、乳幼児、病人、老人、過敏症患者らの殺虫剤弱者と健康な成人の間に、化学物質に対する感受性に10倍しか個人差がないととしているのも納得できません。
 殺虫剤の気体だけでなく、殺虫剤を取り込んだ溶剤・粉塵・ほこりなどの微粒子やミストを吸入すること、室内を汚染した殺虫剤が食品へ移行することの評価も考慮する必要があります。
 提案された評価方法は、平成20年1月下旬〜2月上旬から施行になっていますが、既に承認されている薬剤については、毒性データや室内環境汚染データの総点検と再審査が必要です。

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作成:2008-03-24