食品汚染・残留農薬にもどる
t19903#メタミドホスの残留基準改定へ〜ADIは0.0006mg/kg体重/日提案#08-03
 記事t19805で述べたように中国産冷凍ギョーザによるメタミドホス中毒事件の原因は、未だ判明していませんが、その健康影響評価、残留基準について見直しがはじまりました。
【参考サイト】日本食品化学研究振興財団HPにあるポジティブリスト制度でのメタミドホスの残留基準

★厚労省と食品安全委員会への要望・質問
 メタミドホスの「その他の野菜」の暫定残留基準が30ppmと高い値であることについて、厚労省はコーデックスのテンサイの葉にある基準を採用したとしましたが、93年に1ppmであった数値が、05年に30ppmになった理由はどこにも、示されていません。
 そこで、厚労省と食品安全委員会に再質問しました。以下には、質問と回答を示します。

 メタミドホスの残留基準についての質問・要望と厚労省の回答

★食品安全委員会がADIを策定し、厚労省が残留基準改定へ
【参考資料】食品安全委員会にあるメタミドホスについて
   第36回会農薬専門調査会幹事会会合結果(農薬(メタミドホス)の食品健康影響評価について)議事録
    パブリックコメント募集(4月4日締切)とメタミドホスの農薬評価書案当グループの意見食品安全委員会の見解
 2月12日に、厚労省はメタミドホスの残留基準改定に着手し、食品安全委員会に健康影響評価を諮問、農薬専門調査会幹事会での評価の後、3月6日に、同委員会からADI(ヒトが毎日一生食べ続けても健康に悪影響が生じないと推定される量)設定値が公表されパブリックコメント募集が開始されました(締切は4月4日。5月1日食品安全委員会でADIは0.0006mg/kg体重/日に設定。農薬評価書) 残留基準が提案され、告示される予定です)。
 従来の評価として、国際的な組織JMPR(FAO/WHO 合同残留農薬専門家会議)によりなされたADIが0.004 mg/kg 体重/日、急性参照用量(ARfD。ヒトの24 時間又はそれより短時間の経口摂取により健康に悪影響を示さないと推定される量)が0.01 mg/kg 体重/日となっていました。
 今回の食品安全委員会での評価は以下のようになりました。
 ・イヌを用いた1 年間慢性毒性試験の0.06 mg/kg 体重/日を根拠として、安全係数100 
  で除した0.0006 mg/kg 体重/日をADI(案)と設定した。
 ・単回投与試験で得られた無毒性量の最小値は、ラットの急性神経毒性試験で得られた
  0.3 mg/kg 体重であったことから、これを安全係数100 で除した0.003 mg/kg 体重/
  日をARfD(案)とすることが妥当である。
 これらをまとめると次のようになります。

          ADI ARfD
           mg/kg体重/日
  JMPR      0.004   0.01
  オーストラリア 0.0003   0.003
  EU       0.001    0.003
  食品安全委員会 0.0006   0.003
★安全性よりも国際流通を優先した厚労省の罪
 前述のように、従来のメタミドホスの残留基準は、「その他の野菜」について30ppmとなっており、これだけ残留しているウドやタラの芽を国民平均摂取量のフードファクター分14.7g(6才児の場合10.3g)食べると、メタミドホス0.44mg(6才児0.31mg)を摂取することになります。体重あたりの量は50kgの成人で0.0088mg/kg体重、20kgの子どもで0.016mg/kg体重となり、JMPRのADIはもちろん、子どもの場合はARfDを超えてしまいます。  このような高い値を国際基準があるというだけで、暫定基準として採用した厚労省の方針は、国民の健康よりも、国際的な食品流通に重きをおいたポジティブリスト制度だという私たちの批判を地でいったものです。結局、日本での健康被害があって初めて、その改定につながったわけです。

★ARfDはフードファクターとは相容れない
 ところで、今回、ADIだけでなく、ARfDが毒性の評価が参考として取り入れられました。ADIは、人が一生涯摂り続けても健康影響を受けない量です。しかし、急性中毒防止のためにには、ARfDを採用すべきだとの声がでてきました。これは、24時間に満たない短期間の摂取で健康への影響がないとされる量です。ADIをもとにした曝露評価では、食品別の残留基準にその食品のフードファクター(国民の一日当たりの平均摂取量)を乗じた数量の総和との比較がなされ、合計値がADIの80%以下になるのことが、ひとつの目安になります。
 しかし、ARfDに基づく曝露評価の算出方法は決められていませんが、ADIのようなフードファクターによる評価では意味をなしません。なぜなら、年に数回しか食べず、一日平均摂取量が1gに満たない食品でも、旬の物として1度に50gとか100g食べることがあるからです。また、人によって趣好が違いますから、この点も考慮する必要があります。たとえば、ソバのフードファクターは1日3.7gですが、毎日ソバを100g以上食べる人のADIやARfDはどうなるのでしょう。
 ARfDで規制する場合、少なくとも体重20kgの子どもが1食品につき1日100gくらい食べても健康に影響ない量を基準とすべきでしょう。とすると、メタミドホスについて、ARfD:0.003mg/kg体重/日に対応する残留値は0.6ppmとなります。現行暫定基準で、これを超える食品(トマト、モモ、ブドウ、ミカンなど)は、基準を下げねばならないということになります。
【関連記事】ARfDってなんですか


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作成:2008-06-28