農薬の毒性と健康被害にもどる
t20004#クロルピクリンによる井戸水汚染が発覚#08-04
【関連サイト】クロルピクリン工業会のHP

 秋田県潟上市と新潟県新潟市の民家の井戸水が土壌くん蒸剤クロルピクリンで汚染されていることがわかりました。いずれも、昨年秋頃から、住民は風呂にはいると、眼がチカチカする、咽喉が痛むなどの異常を訴えていましたが、すぐに、水質調査はなされず、分析調査でクロルピクンの存在がわかったのは、潟上市の場合は12月、新潟市の場合は3月のことでした。

★潟上市の被害は2世帯5人
 秋田県の事例では、住民からの訴えがあったのは、10月頃です。その後、県内の機関に分析が依頼され、12月にクロルピクリン7.8mg/Lが検出されました。
 県と潟上市は、1月25日、1月28日及び2月4日、クロルピクリンが検出された井戸を含めた13か所の井戸水について、分析しましたが、当該井戸水からクロルピクリン3.6mg/Lが検出されたものの、周辺12か所の井戸水からは検出されなかったということです。
 また、3月24日、当該井戸水について潟上市が分析した結果、クロルピクリンは検出されませんでした(検出限界は0.0002mg/L)。
 県に、問題の井戸周辺の農地におけるクロピク使用状況を聞きましたが、使用者3名の栽培履歴・使用時期・使用量・保管状況など適正であり、不法投棄はみられなかったとの回答しか得られませんでした。
 また、同県からは、井戸水の採取場所については、個人情報となるので公開しない、周辺住民の健康調査結果(10世帯31人)、異常を訴えたのは当該世帯を含む2世帯計5人で、いずれも軽症であり、クロルピクリンとの因果関係は不明だとの返答がきています。さらに、同県内ではクロピクの大気汚染による被害事例はなく、「クロルピクリン剤等の土壌くん蒸剤の適正使用について」と「住宅地等における農薬使用について」の両通知に基づき対応していくとのことです。

★新潟市が動いたのは秋田事例を知ってから
 新潟市の事例についても問い合わせましたが、市の回答の要点を以下に示します。
【汚染経緯にいて】、
 ・07年11月8日に,「井戸水を使用しているが,半年前より,シャワーを
  使ったり風呂に入ると目が痛い。」という相談が保健所にあり,同日午後,
  職員が自宅に訪問し調査を行い,同様な状況を確認した。原因は不明で,相
  談者には水質検査を実施するよう指導した。
 ・12月6日に,相談者より保健所に検査結果が報告された。検査は11項目
  (一般細菌,pH 値など基本的な項目。農薬は含まれていない。)行われ,結
  果はpH 値が5.4 であり,水道水質基準である5.8〜8.6 より低い値であった。
  保健所は相談者に上水道へ切り替えるよう指導した。
 ・08年2月6日付けで厚生労働省より,秋田県内における井戸水からのクロ
  ルピクリン検出事例の事務連絡があり,市では,相談内容がこの事例に類似
  していることから,当該相談についても,クロルピクリン剤による水質異常
  を疑った。
 ・直ちに市衛生環境研究所では標準試薬を手配し,同2月26日に相談者の井戸水
  の水質検査を実施し,クロルピクリンを検出した。
 ・昨年11月に相談があった段階で,速やかに厚生労働省に連絡すべきであっ
  たと考える。

【井戸水調査結果】
 ・14か所について,聞取り調査及び水質検査を実施し、異常のあった1か所
  から0.4mg/L検出。採取地点は,個人情報保護のため示せない。
 ・異常のなかった1か所の住民からの聞き取り:2年ほど前入浴時にチカチカ
  した。長くは続かなかった。
【クロピクの使用状況】
 ・周辺の農地について,平成18〜19年の使用状況を調査したところ,主に
  葉たばこの土壌消毒のため12か所の圃場でクロルピクリン剤「ドロクロー
  ル」が使用されていた。
【住民の健康被害状況】
 ・クロルピクリンが検出された世帯について,保健師により家族全員の詳細な
  健康調査を実施した。
  @昨年11月に症状を訴えた家族は,全員,入浴中の目の痛みを強く訴えて
   いました。
  A追加調査でクロルピクリンが検出された1世帯の家族は,数名,言われて
   みれば目が痛い,とのことであった。
【クロピクの大気汚染被害】
 ・平成18年に2回あり、住宅地に近接する圃場でドジョウピクリンを使用し
  たのが原因。
【被害防止対策】
 ・農協等関係機関に対し,住宅地周辺100m以内でのクロルピクリン剤の使
  用自粛と薬剤処理後は必ず被覆するよう指導を徹底するよう通知するととも
  に,対象農家に上記事項の徹底を図るためのチラシを配布した。
 ・農薬販売業者を対象に,クロルピクリン剤を販売する場合は,必ず上記事項
  について説明するよう通知しました。
 ・今後,関係者と協議を行い,代替策について検討する必要があると考えてい
  る。
【参考サイト】新潟市:報道資料(3月11日)
★クロルピクリンは水質基準にいれるべきだ
 過去においても、クロピクの井戸水汚染は、81年に福島県会津坂下町で、94年に宮崎県串間市で、03年に栃木県大田原市(記事t13906b参照)でも起こっています。クロピクは大気汚染も地下水汚染も要注意だということです。
 上述の2つの事例では、汚染原因、地下水汚染経路などは明確になっていません。
 なによりも問題なのは、井戸水や水道水の水質基準にクロルピクリンがはいっていないことです。私たちは、03年3月に厚労省が実施した「水質基準の見直し等について」の意見募集の際、『クロルピクリンは、94年に串間市簡易水道に混入して被害者がでたことがあり、モントリオール議定書により使用禁止となる臭化メチルの代替品として使用が増える恐れがある。また、フミン酸の塩素処理で生成することも知られている。』との理由をあげ、クロルピクリンを水質基準の分析対象物質とすべきとの意見を述べましたが、実現しませんでした(記事t14005参照)。基準があれば、井戸水汚染がもっと早い時期に判明したものと思います。改めて、クロルピクリンを水道水質基準に組み入れるよう、厚労省に要望しました。
【参考サイト】 ・03年3月の水道水質基準の見直しパブコメ募集 パブコメ結果回答
・08年7月の「水質基準に関する省令」等の一部改正案についてのパブコメ募集当グループの意見募集結果
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作成:2008-08-25