農薬の毒性・健康被害にもどる
t20006#Q&ACARfDってなんですか#08-04
【参考サイト】農業と環境No.91 (2007.11)、WHOのガイダンス
食品安全委員会農薬専門調査幹事会:第61回にあるARfDについて
第97回にある基本的考え方、 基本的考え方(2014/02/14決定)
吉田ほか:日本における農薬等の急性参照用量設定の基本的考え方(食衛誌 54,p331,2013)
厚労省:薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会(2014/03/18)資料にある
急性参照用量を考慮した残留農薬基準の設定についてと別添スライド
質問:最近、厚労省や農水省が盛んにARfDと言う言葉を使います。ADIとどう違うのでしょうか。
★ARfD(急性中毒参照用量)とは
ARfDは「急性中毒参照用量」(Acute Reference Dose)の略称です。通常の毒性評価はADI(一日摂取許容量)ですが、これは、人が一生涯にわたり、摂取し続けても健康に影響を与えない量を意味します。これに対して、ARfDは「ヒトの24 時間またはそれより短時間の経口摂取により健康に悪影響を示さないと推定される量」とされ、一度に、摂取しても健康に影響を与えない量はどの程度かを評価したものといえます。
★何を毒性出現の指標とみるか
ARfDは1990年代半ばに出てきた概念で、2000年代にはいって、JMPR(FAO/WHO合同残留農薬専門家会議)などで論議が本格化されてきました。問題なのは、健康への影響とは何であり、動物実験データで得た、何を毒性出現の指標とみるか、安全係数はどうするかです。
「急性」ということで、一回投与のデータが採られるにしても、いままでの急性毒性試験成績で評価することはできません。これは致死量を推定するための試験で、一回投与による無毒性量を求める試験ではないからです。
解決すべき問題点として、
・妊婦の一時期の農薬高摂取が胎児の組織形成、生殖系、脳・神経系、免疫系など
の発達にどのような影響を与えるかの評価がどのようになされるか。
・発達・発育段階にある乳幼児や子どもへの影響は成人とは異なると考えられるが、
この点の毒性評価はどのようになされるか。
・化学物質過敏症患者や高齢者への影響がどのように評価がなされか。
などがあり、ARfDの評価方法は、まだ議論の段階にあるといえます。
★残留基準の緩和や出荷停止判断に使われるARfD
現在の残留基準はADIを基にきめられていますが、食品からの摂取量がADIを超えるケースもでてきます。たとえば、使用禁止になって30年以上を経たディルドリンについては、その土壌残留により、キュウリのような移行性の高い農作物には、いまだ検出され、残留基準を超えるケースがしばしばあります。ヨーロッパでも、この事情は同じで、オランダではズッキーニが残留基準の0.02ppmを超える例があり、0.05ppmに緩和することが求められました。欧州食品安全機関は、0.05ppmであってもADIの3倍にあたるARfD0.003mg/kg体重以下におさまると評価しています。このように、ARfDは一般にADIよりも高い数値なので、残留基準の緩和の根拠にされます。
また、残留基準を超えた食品をすべて流通規制をするのはモッタイナイとの主張もなされています。食品の出荷停止や回収措置は、ADIよりも数値が高いARfDを超える恐れのある場合にしよういうわけです。しかし、個人嗜好により個々の食品の摂取量が異なる点や季節食品を一時期にたくさん食べる場合、ARfDが当該食品における残留農薬規制にどのように反映されるのかよくわかりません。
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作成:2014-03-17