環境汚染にもどる
t20102#PRTR法の指定物質見直しで農薬は190へ〜39農薬削除案は再検討を#08-05
【関連記事】記事t09801記事t10002記事t10102
【参考サイト】経済産業省:PRTR法(化管法)のTop Page対象化学物質対象事業者集計結果
【参考資料】
PRTR対象物質等専門委員会合同会合報告(案)に対する意見の募集当グループ意見
報告案関連資料参考資料
 中央環境審議会の見直し答申(08/07/11)、見直し後の対象物質数答申
PRTR法施行令の一部を改正する政令案に対する意見の募集について(お知らせ)(08年9月29日-10月29日)

  PRTR法は、有害な化学物質の環境中への排出を削減を目的に、99年7月公布された、環境・経済産業・厚労の三省所管の「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」の略称です。その骨子は、PRTR(化学物質排出・移動量届出:Pollutant Release and Transfer Register。指定物質を年間1トン以上取り扱い−特定第一種は0.5トン以上−、雇用者21人以上の事業所は排出・移動量届けが義務づけられる)とMSDS(化学物質等安全データシート)の二つの制度で、指定された化学物質のうち第一種指定化学物質(そのうち発ガン性のあるものは特定第一種)は、PRTR制度とMSDS制度が、第二種指定化学物質はMSDS制度が適用されます。
 4月28日、PRTR対象物質等専門委員会合同会合で検討された指定物質の見直し案が提示され、パブリックコメントが求められました。

★農薬は第一種159、第二種31に
 提示された案では、第一種指定化学物質が342から449種に、特定第一種指定化学物質が12から15種に、 第二種指定化学物質が81から101種となっています。このうち農薬関連物質の総数は、約40増えて190となり、その内訳は、第一種が159(うち特定第一種5)、第二種が31です。具体的な農薬名を以下に示しました。
       PRTRリスト中の農薬関連物質の改定個所

★見直しの考え方
 今回の見直しは、有害性に関する新たな知見、国際的なGHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)との整合化、生産・輸入・使用量や環境汚染の状況などを勘案して、実施されました。
 有害性判断基準としては、従来と同様の発がん性/変異原性/経口慢性毒性/吸入慢性毒性/作業環境許容濃度から得られる吸入慢性毒性/生殖発生毒性/感作性/生態毒性(藻・ミジンコ・魚類を用いた試験結果)/オゾン層破壊物質の9項目(農薬の場合慢性毒性はADIが参照にされる)が対象になりましたが、新たにGHSの情報も加味されました。
 環境での存在に関する判断基準としては、第一種指定化学物質の1年間の製造輸入量が一定量(100トン、農薬及び特定第一種指定化学物質については10トン、オゾン層破壊物質については累積製造輸入量が10トン)以上のもの(=製造・輸入区分1)又は一般環境中で最近10年間に複数地域から検出されたもの、第二種指定化学物質については、1年間の製造輸入量が1トン以上のもの(=製造・輸入区分2)又は一般環境中で最近10年間に1地域から検出されたもの、という現行基準が踏襲されました。
 この方針に基づき、新たな物質が選定され、基準を満たさないものはリストから削除されることになりました。

★削除された農薬
 現行の指定化学物質から削除された農薬は39あります。その理由として、有害性が確認されない(表中に削tと記す)と生産量が少ない(表中に削pと記す)の二つが挙げられています。生産量が少ないとして削除された農薬は36(うち有害性が確認されない3)あり、そのうち登録失効したのは21(表では農薬名を太斜字で表記)です。
 有害性が確認されないとされたグルホシネート、チフェンスルフロンメチル、ピラゾレートは登録農薬であり、食品安全委員会での健康影響評価が終わっていません。その結果がでるまで、削除すべきではありません。
 有害性があっても生産量の面から削除された33農薬の中で、登録農薬は次の14あります。06年の原体や製剤の生産量は、下表のようで(出典農薬要覧2007年版)、XMC以外、生産量が少ないとして、指定物質から削除すべき農薬ではありません。これらは、削除せず、PRTR指定物質として生産・使用量・環境調査などを継続すべきです。
  農薬名               06年生産量(トン)

  XMC           -
  イミベンコナゾール    原体  19.8
  エスプロカルブ   複合製剤 1176
  シアノホス        単製剤   221
  ジクロフェンチオン  単製剤 127 
  シクロプロトリン    単製剤 127
  シペルメトリン      単製剤 136
  シメトリン          複合製剤 2986
  テニルクロール      複合製剤 132
  ピリミジフェン     単製剤  8.1
  フェンバレレート    複合製剤  79
  フルスルファミド      単製剤 4074
  フルバリネート   単+複合製剤  29.6
  プロパニル      単製剤  34.6
★追加された農薬
 今回、追加された農薬は第一種が55、第二種が17あり(表中に追加と記す)、製造・輸入区分については、第一種はビンクロゾンとトリクロロ酢酸以外すべて区分1に、第二種はメトキシクロル以外は区分2となっています。
 しかし、私たちが、いままで、問題視してきた農薬関係の化学物質で、追加指定されていないものもあります。たとえば、HCBはそれ自体は使用されていませんが、他の物質の不純物や焼却による非意図的生成物であり、ダイオキシン類と同じ位置づけにすべき物質です。除草剤のグリホサートは、農薬だけでなく、非農作物用の除草剤として、何の規制もなく製造販売されており、その生産使用量すら不明な状況では困ります。これらは、PRTR法の対象にすべきです。

★失効農薬にもMSDSが必要
 有害性があるにも拘らず、生産量が少ないとして指定化学物質からはずすことは、問題です。なぜなら、いままで、必要であったMSDSの提供義務がなくなるからです。
現に登録農薬として製造・使用されて、有害性のランクが高い物質については、少なくとも、第二種指定化学物質として継続すべきです。
 また、登録失効したため、生産量が減少し、指定物質からはずされた農薬も使用が禁止されたり、回収されるわけでなく、使用が続くわけですから、事故が起こった場合に備え、MSDSが入手できるようにメーカーに義務づけておく必要があります。

 
購読希望の方は、〒番号/住所/氏名/電話番号/○月発行○号からと購読希望とかいて、 注文メールをください。
年間購読会費3000円は、最初のてんとう虫情報に同封された振替用紙でお支払いください。
作成: