農薬の毒性と健康被害にもどる
t20208#農薬事件・事故#08-06

★クロピクがらみの事件がつづく
 本誌201号の天草だよりでは、植村振作さんが、熊本市でのクロルピクリン自殺の二次中毒に触れましたが、クロピクの被害がほかでもおこっています。
 5月7日、島根県の県川本合同庁舎で刺激臭が漂い、職員9名と来庁者1名が目やのどへの痛みを感じ、病院で受診するという事故がおこりました。調べたところ、庁内にある西部農林振興センター県央事務所に保管されていた土壌処理剤「ソイリーン」(クロルピクリン40%、D−D52%含有)が漏洩したことが判りました。同庁では、2000年に農薬の効果試験に用いた15L入りのソイリーンの缶を分析室内に保管(缶が大きすぎて劇物保管庫には入らなかったとのこと)していましたが、缶の底面が腐食し、内容物が漏れ出たということです。幸い、被害程度は軽く、入院することもありませんでした。
 島根県は、指導すべき立場の県の施設で、劇物農薬の取り扱いがきちんとなされていなかったことを反省し、毒劇法等の関係法令を遵守した業務が行われるよう、職員に徹底をはかるなどの対策をとるとのことです。

6月6日、徳島市のリサイクル会社旭金属で、廃金属を扱っていた従業員ら30人が、刺激臭で、眼の痛みなどを訴え、病院で治療を受けました。処理施設に持ち込まれたクロルピクリン・D−D剤の空き缶に農薬が残っていたのが原因と考えられています(6月6日付徳島新聞)。

 また、長崎県雲仙市でダイコン栽培農家が、隣接するジャガイモ畑で使用したクロルピクリンで成長障害などが起きたとして、散布した農家に約610万円の損害賠償請求訴訟を起こすそうです(5月10日付毎日新聞)。

【参考サイト】島根県:
川本合同庁舎における薬剤の漏出について

★野鳥の死亡事件

 4月23日、沖縄県豊見城市の遊水池で、ボラなどの魚60匹と環境省が絶滅危惧TA類に指定しているクロツラヘラサギ1羽がが死んでいました。ほかに衰弱した2羽のクロツラヘラサギもみつかりました。
 県の調査で、ボツリヌス菌や鳥インフルエンザ検査はいずれも陰性でしたが、パラチオンが以下のような試料から検出され、死亡原因と推定されました。
 河川水:0.2μg/L 
 ボラのエラ:0.74、1.42μg/g
 クロツラヘラサギの胃内容物:0.1μg/g
  同口腔内の魚: 7.5μg/g
 その後、保護されていた衰弱の2羽は、野生生物ドクターの治療を受け、回復・放鳥されました。

 埼玉県川越市の市営住宅で、5月4日に1羽、5月5日に4羽、5月9日に1羽のドバトの死んでいました。県が胃内容物を分析(83種の農薬など)した結果、パラチオンとフェニトロチオンが検出されました。
 パラチオンは登録失効して36年も経つ特定毒物指定の有機リン剤ですが、いずれの県でもその由来は不明です。いまだ、農家の納屋に残っているのでしょうか。

 また、青森県弘前市の水田で、5月11日、カルガモ13羽の死骸が見つかりました。胃から毒物指定のある有機リン系殺虫剤EPNが検出されました。稲もみにEPNをまぶした毒餌として、同剤が目的外使用されたようです(5月26日付東奥日報)。

【参考サイト】埼玉県:
ドバトの不審死について
       那覇自然環境事務所:クロツラヘラサギ3羽の収容について

購読希望の方は、〒番号/住所/氏名/電話番号/○月発行○号からと購読希望とかいて、 注文メールをください。
年間購読会費3000円は、最初のてんとう虫情報に同封された振替用紙でお支払いください。
作成:2008-09-27