環境汚染にもどる
t20302#静岡市清水区で砒素、シマジンほか検出〜産廃埋設者のクミアイ化学は分析結果を公表せず#08-07
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農薬メーカークミアイ化学工業(庵原農薬、イハラ農薬を経て、1968年に現商号になる)の発祥の地 静岡市清水区(旧清水市)にある清水工場近くの巴川沿いの土地に同社が農薬廃棄物を埋設した疑いがあることが4月11日、新聞報道されました。
静岡市に問い合わせたところ、以下の回答(4月30日付け)がありました。
★市の水質調査で14農薬検出されず
【質問1】貴市は埋設地域で、環境分析調査を実施されるとのことだが、試料の種類と
採取地点はどこか。
【回答】試料の種類は地下水11検体、採取地点は清水区北脇新田地区及び能島地区です。
【質問2】クミアイ化学が埋設した時期はいつで、農薬等の物質名は何か。
【回答】昭和30年代から昭和50年代ごろ廃棄物を埋設しております。
なお、物質については調査中です。
【質問3】分析調査対象となる化学物質は何か。分析結果はいつごろ判明するか。判明し
たら公表されたい。
【回答】調査項目は、シマジン・チオベンカルブ・有機リン化合物12項目(イソキサチオン、
ダイアジノン、フェニトロチオン、イソプロチオラン、クロロタロニル、EPN、
ジクロルボス、フェノブカルブ、イプロベンフォス、パラチオン、メチルパラチオン、
メチルジメトン)です。
平成20年4月21日に公表しました。調査項目の物質は、検出されせんでした。
【質問5】今までに、埋設地周辺の住民から異臭や健康被害などのクレームや、水系汚
染・水生動植物の被害報告があったか。
【回答】過去にもそのような事例はない。
★第二回調査でアルドリン検出
5月13日に、市は二回目の調査結果を公表しました。前回の農薬に加えて、チウラムとPOPs系のアルドリン、ディルドリン、エンドリン、DDT、BHCが分析対象とされました。
試料採取は、11箇所の井戸水のほか、旧巴川河川水と河川擁壁からの絞り水の16箇所で行なわれました。検出されたのは、X地点絞り水のアルドリンのみで0.002mg/Lでした(ほかにウレタン硬化剤の4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン0.006mg/L検出)。アルドリンは、クミアイ化学で製造されたことのある農薬のひとつです。
★クミアイ化学からの回答
一方、クミアイ化学は、土壌調査を実施していましたが、その結果が、報告されたのは6月にはいってからです。同社に問い合わせた結果、以下の回答を得ました。
【質問1】農薬を廃棄されたということだがが、廃棄処分場の場所はどこか。地図でお示
しください。また、処分場として使用されたのはいつごろで、どのようなものがどの
程度廃棄されたか。
【回答】弊社は、昭和30年代から50年代に掛けて、現在の静岡市清水区北脇新田付近の賃
借した土地に産業廃棄物を埋設し、盛り土をして地権者に返却した事実はございます
が、行政への届出や指導を受けていた経緯と当時の法令に適合した埋設をしており、
不法投棄ではないと認識いたしております。調査したところによれば、当時、農薬自
体を埋設したわけではなく、工場廃棄物のダスト類、燃え殻、建築廃材、ガラスくず
などを埋設していたものです。
【質問2】清水工場の廃農薬等を巴川沿いの土地に埋設したことはあるか。また、 この
工場で発生した廃農薬や製造廃棄物はどのようにして処理され、どこに埋設・投棄さ
れていたか。また、廃棄物の年間発生量はどの程度か。
【回答】上記の工場廃棄物を埋設したものであり、廃棄農薬を埋設したものではありませ
ん。また、廃棄物の年間発生量は定かではありません。
【質問3】清水工場では、どのような農薬を製造されていたか。取り扱われた農薬成分名、
補助成分名(有機溶剤など)、その他の化学物質(熱媒体PCB類など)について教
えられたい。−以下略−
【回答】昭和30年代から50年代当時、清水工場で製造していた農薬は、パラチオン・マラ
ソン乳剤、硫酸ニコチン、石灰硫黄合剤、CAT粒剤、IBP粉剤2、マンネブ水和剤、
ジネブ水和剤、ベンチオカーブ粒剤などであります。
【コメント】ほかに有機砒素系農薬のアソジン、ネオアソジンほかが製造されていたこと
も同社社史で明らかになっています。
【質問4】報道では、約20ヶ所のボーリング調査を実施されると報道されているが、調査
個所を地図でお示されたい。
【質問5】分析対象は何か。土壌汚染対策法の特定有害物質と農薬成分、その他に分けて
化学物質名を教えられたい。PCB類とダイオキシン類は分析対象にか。
【回答】土壌、河川水等について、土壌汚染対策法に定められた物質を対象に分析いたし
ました。調査場所や分析対象等、調査の詳細については、地権者等のご要望により、
ご回答は差し控えさせていただきます。
【コメント】土壌汚染対策法における、特定指定物質は、水銀、鉛、ヒ素の重金属のほか、
POPsではPCB、有機リンでは、パラチオン、EPNなど4種、ほかに農薬成分であるD-D、
シマジン、チオベンカルブ、チウラムであり、クミアイ化学はこれ以外の農薬やダイ
オキシン類の分析をしていないということか。
【質問6】分析調査結果を教えられたい。
【回答】分析結果は、地権者等のご要望により、ご回答は差し控えさせていただきます。
【コメント】報道等によると、土壌調査の結果、クミアイ化学に関連のある有害物質とし
て、砒素が25箇所中13箇所(土壌基準の50〜60倍検出。ほかに1箇所の水質か
ら検出)、シマジン、チオベンカルブが数箇所で土壌溶出量基準値を超えて検出され、
同社に関連のない有害物質として、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン等が
7箇所、セレンが8箇所で基準値を超えて検出されています。
【質問7】いままでに、埋設地周辺の住民からの異臭や健康被害などのクレーム、水系汚
染・水生動植物の被害報告はなかったか。
【回答】これまでに、弊社が、当該埋設地周辺の住民からの異臭や健康被害などのクレー
ム、水系汚染・水生動植物の被害報告などを受けたことは一切ございません。
★静岡市の方針
静岡市は静岡県立大学の岩堀恵祐環境科学研究所長、同牧野正和准教授、富士常葉大学の村上篤司防災学部長からなる評価検討会議を設置し、環境調査結果の検討とクミアイ化学への対応方針を検討し、指導内容をとりまとめました。
同社に対して、市は(1)掘削除去の措置を講じること、(2)措置を講じるまでの間の暫定対策、(3)地下水のモニタリング調査の実施等を指導しました。一方、クミアイ化学は、私たちへの回答の中で『弊社との関連がない物質も多数検出されましたが、静岡市当局のご指導ご助言を受けながら、弊社は原則として土壌汚染対策法に準じた除去措置を地元自治会や地権者等に十分説明し、ご理解をいただいた上で実施いたします。』と答えています。
クミアイ化学が、地権者の意向を盾に、土壌汚染調査結果の詳細を公表しないまま、ことは推移しそうです。埋設周辺の住民や環境への影響を考えると、公表して然るべきなのに、土地の持ち主の意向しか配慮しないという企業姿勢はいただけません。汚染の可能性のあるダイオキシン類の調査もなされていません。
市の評価検討会議の中では、「自社に関連のない有害物質で汚染された土地も含めて、土壌汚染対策法に準じて、掘削除去による措置を講じたい」という同社の提案及び姿勢を高く評価する意見があったそうです。埋設農薬の掘削処理には、新たな大気汚染、水系汚染を惹き起す恐れがあります。周辺への十分な情報提供と住民監視の眼が不可欠です。
【追加情報】クミアイ化学のニュースリリース(12月1日)
静岡市内の産業廃棄物処分場跡地の汚染除去措置に関するお知らせ
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作成:2008-12-25