食品汚染・残留農薬にもどる
t20403#食品中の残留農薬〜ポジティブリスト制度下で違反はつづく#08-08
 記事t19605で、07年5月から07年12月前半までに判明した農作物等での残留基準や一律基準違反事例を報告しましたが、その後、新たに行政や新聞報道で、公けになった基準違反事例を紹介します。

★国産農作物の違反13件
 08年1月から7月までの約半年間に報告された事例を表1に示しました。
表1 農作物等の残留基準・一律基準を超えた事例

判明月日 発表者  作物名    産地等   農薬名と検出値ppm(基準)     原因
  
07/12/10 茨城県  シュンギク 行方市   MEP 0.8(0.2)、                   e
                                            MPP 0.02(0.01)
07/12/17 京都府  シュンギク JA園部   イソキサチオン 0.22(0.1)         e
07/12/21 埼玉県  シュンギク 秩父市   ホスチアゼート 0.2(0.1)          e
07/12/25 JAしまんと ニラ    JAしまんと チオファネートメチル 13.3(3)    a2
                       アゾキシソトロビン  11(5)
08/01/15 群馬県  シュンギク JA太田市    イプロベンホス 0.09(0.01)        e
                JA赤堀町   カズサホス 0.02(0.01)
08/01/18 長野県  リンゴ   JA須高     アセフェート 0.22(一律基準)      b?
08/01/25 新潟県  アスパラ菜  
                             JA越後さんとう ジクロシメット 0.09(一律基準)   d
08/01/25 群馬県  ホウレンソウJA新田郡  MEP 12.7ppm(基準0.2)           a2
                       DDVP 0.20ppm(基準0.1)
08/02/29 コープながの
                スナップエンドウJA種子屋久くまげ地区 PAP 0.17ppm(0.1)      e
08/03/12 コープとうきょう
                  コカブ     JA柏市     イソキサチオン 0.28ppm(0.1)     c

08/07/02 奈良県  フダンソウ  斑鳩町   EPN 0.17ppm(0.01)               a
08/07/02 福島県  キュウリ   JA新ふくしまアトラジン 0.08ppm(0.02)         b?

 【原因の凡例】a:適用外使用 a1:県の防除基準誤記  a2:使用基準違反
  b:近接からのドリフト又は流入 c:防除器具の洗浄不足 d:土壌残留 e:不明
 表のほかに、残留基準を超えませんでしたが、不適切な農薬使用やドリフトによる汚染事例もみられました。
 08年1月には、福岡県内の生協の自主検査で、鹿児島県東串良町園芸振興会出荷のピーマンにピペロニルブトキシドが0.02(2ppm)検出され、回収されました。農薬としてしての使用ではなく、土壌活性剤に含有されていたものが移行したとのことです。
 08年3月、徳島県板野産のミブナにクロルフェナピルとプロチオホスが適用外使用されました。いずれも0.2ppmで、残留基準は超えませんでしたが自主回収となりました。

★続々と設定される魚介類の残留基準
【参考サイト】島根県報道発表−シジミのダイアジノン:7月18日7月22日

シジミの農薬残留基準・一律基準(0.01ppm)違反は、06年秋に問題となり、漁業関係者は高い残留基準を設定することを求めてきました。私たちは、関連流域での農薬使用規制を第一にとるべきだとし、農薬使用量と残留量の関係が不明のまま、実測値でなく、理論値により、残留基準を拙速に設定することに反対してきました。
 たとえば、ブロモブチドの魚介類残留基準を4ppmに設定することに反対する意見で、理由として、『環境省の農薬残留対策総合調査によると、大阪府佐備川の調査では、2004年度にコイ肝臓で0.03ppm、2005年度にオイカワ肝臓で0.13ppm、コイ肝臓で0.05ppmの検出値である。農薬は肝臓に蓄積されやすいと考えられるから、魚総体としてはより低濃度と推定される。』としましたが、
 厚労省の見解は『ご指摘いただいた濃度が検出された魚の捕獲地点で観測された同化合物の河川水中最高濃度は、2005年度が0.5-0.6ppbである一方で、同年度に観測された他の河川中のブロモブチドの濃度は最大で5.15ppbとされ、魚が捕獲された地点より高い値が報告されており、より高い濃度が検出された河川での魚における残留量が不明であること』あげています。
 不明だから、高い値に残留値を設定しておけば問題ないとするのは、納得できません。
 07年8月のクミルロンを皮切りに、表2に示すように、つぎつぎと一律基準より高い残留基準が設定されています。08年7月には、大阪市の収去検査により、鳥取県東郷湖産のシジミに、ダイアジノンが0.042ppm検出され、一律基準を超えたため、東郷湖漁協は、出荷停止措置をとりました。その後、県が実施した調査ではも0.05〜0.09ppm検出されています。
 シジミが何種類もの農薬で汚染されていても、個々の残留基準がクリアしていればよいということで、さらに、残留基準が設定されるということでは、先が思いやられます。
表2 魚介類に設定された残留基準(単位:ppm)

  農薬名      告示日   残留基準
 クミルロン     07/08/21    0.4 
 シメナゾール    07/12/28     0.02   
 クロマフェノジド  08/04/30     0.06
 ダイムロン       08/04/30    0.4
 チアジニル       08/04/30   0.03
 アゾキシストロビン08/06/30    0.08* 
 オキサジアルギル 08/06/30   0.02
 カルプロパミド  08/06/30   0.6 
 ブロモブチド   08/06/30   4
  シラフルオフェン     案         0.4
  ジチオピル           案         0.2
 エスプロカルブ    案      0.2
 チオベンカルブ    案      0.5(貝類)
                   0.02(貝類以外)
  カフェンストロール  案     0.2
 イソプロチオラン   案     3
 インダノファン    案     0.04
 フルトラニル     案      2
 メフェナセット    案       0.8

 *:当初の残留基準は0.008ppmと告示されていたが、07年9月21日に基準が削除された
【魚介類の残留基準】日本食品化学研究振興財団の残留基準のHPより魚介類の残留基準
   さけ目魚類うなぎ目魚類すずき目魚類その他の魚類
     貝類甲殻類その他の魚介類

★輸入食品の違反122件(07年11月〜08年4月) −省略−
【参考サイト】輸入食品監視業務ホームページの輸入届出における食品衛生法違反事例(速報)

★解明されない農薬・殺虫剤混入事件
【関連記事】記事t19804記事t20007c

 中国産冷凍加工食品には、輸入元や販売業者の分析で、メタミドホスだけでなく、パラチオン、メチルパラチオン、ホレートやDDVPが検出されましたが、このうち徳島県の生協でのDDVPは店内に置かれた殺虫剤プレートによる汚染であることが判りました。
 しかし、 中国産冷凍ギョーザのメタミドホス事件、姫路市と東京都の2件の茶飲料へのグリホサート混入、5月の東京都のコーヒー飲料へのプロポキシル混入、6月神戸市のマンゴジュースへのテトラメトリン混入事件、さらに、7月には、やきとりのたれに、毒入り危険のシールを貼った製品(グリホサート検出)など国内外での農薬の食品混入事件は、犯人がなかなか特定できないのも問題です。
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作成:2009-01-25