農薬の毒性・健康被害にもどる
t20404#旭川市の中学校で、アリ駆除に有機リン系農薬使用、生徒30人が病院へ#08-08
【参考サイト】メチダチオン(商品名:スプラサイドなど)の国際化学物質安全性カード
永美大志ほか:日本農村医学会雑誌 61巻2号 109ページ 2012
 7月15日、北海道旭川市の緑が丘中学校で、授業中の生徒が頭痛や吐き気を訴え、22人が病院に搬送されるという事件(別に8人が診察を受けた)が起こりました。原因を調査したところ、学校用務員が、花壇・草地周辺のアリ駆除のために、殺虫剤スプラサイド乳剤(メチダチオン40%含有)を原液のまま、約80ml、5、6個所の巣穴に撒いたため、窓を開けて授業していた教室に薬剤が流入したことがわかりました。
 同校では、いままでに、保管していた農薬類はすべて処分した、しかし、問題のスプラサイドが物置に残っており、安易にそれを使ってしまった、ということのようです。
 メチダチオンは劇物指定の有機リン系殺虫剤です。しかし、登録農薬を不快害虫のアリ駆除に使っても、農薬取締法違反にも、薬事法違反にもならないのが現状です。それにしても、原液のまままいたとは、思わず絶句します。

★教育委員会は、有機リン剤使用を禁じていたが
 学校で、しかも、授業中に農薬や殺虫剤を散布するケースは、いままでにも、当グループに訴えがありましたし、学校関連の農薬被害も何度かとりあげましたが、20人を超える生徒が病院に搬送されたのはまれなケースです。神経毒性の強い有機リン剤を生徒の居る場で使用するのは、論外です。
 すでに、旭川市の教育委員会は、06年7月13日に「農薬の適正使用について」という学校長宛の通知をだし、旭川市議会で、陳情書「学校における有害農薬の使用の禁止について」(有機リン系と有機塩素系農薬の使用を一切やめることを求めるもので、05年月9月提出、06年2月審議された)が採択されたことを述べ、『散布作業者等に従事する学校用務員等の職員に対する周知徹底するようお願いします』との指導を行っていました。
 緑が丘中学校では、この通知が守られず、しかも、農水省・環境省二局長連名通知「住宅地等における農薬使用について」も無視されていたわけです。

★新たな通知で、保管農薬の点検指示
 教育委員会は、7月20日に、あらためて、有機リン系及び有機塩素系の成分を含む農薬の使用禁止を指導するとともに、『現在、学校において保管する農薬の状況を点検し、農薬の名称、用途、製造者名、成分等について、至急、任意の様式により報告されるようお願いします。』との通知を学校長あてに出しました。
 緑が丘中は、『基本的には、空き教室前で作業、休み時間や放課後の作業とする。』とした上、今後の対策として、@業務吏員と管理職との作業内容の綿密な打ち合わせ、A校内の危険物の管理体制の再確認を挙げています。しかし、こんな対策で再発防止がはかられるとは思えません。第一にとられるべきことは、、農薬や殺虫剤に対する有害性の認識不足を改め、学校での農薬や殺虫剤使用をなくすことではないでしょうか。

【追記】市教委は、殺虫剤を散布した業務職員を9月5日付で戒告の懲戒処分としたと発表しました(毎日新聞9月6日)。
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作成:2008-10-27