農薬毒性・健康被害にもどる
t20706#京都府京丹後市でクロルピクリン被害〜シート被覆なしで深層処理#08-11
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【参考サイト】農水省:通知「クロルピクリン剤等の土壌くん蒸剤の適正使用について」
       クロルピクリン工業会安全講習会講演資料
★11人が病院へ、20人が避難
 10月18日の夜9時過ぎ、京丹後市大野町の住宅地が、突然、刺激臭に襲われ、咳き込んだり、眼の痛みを訴えた住民11人が、市内病院に搬送されました(うち入院4人。最終受診者数19人)。10時半ごろには、警察と消防署が、周辺世帯に退避勧告を行い、20人が親戚や公民館等に避難しました。10時40分、原因が、住宅から最短で100mほど離れたタバコ畑でこの日使用された農薬クロルピクリン(以下、クロピク)であると断定されました。
 当該畑は国の事業として開発された国営農地で、営農者の責任で農薬が使用されているとのことです。18日は、朝の8時半から夕方の4時頃まで、1.8haの畑に、クロールピクリン(クロピク99.5%含有 南海化学工業製と三井化学製) の16.5kg入り缶が21個使用されました。約350kgのクロピクは、深層土壌くん蒸機で、1穴あたり2ml注入し、シート被覆は行われていませんでした。

★深層処理には、シート被覆義務なし
 農薬の使用上の注意は『たばこの立枯病に対して深層土壌くん蒸(深度30cm処理)する場合は、深層土壌くん蒸に適した深層土壌消毒機を用い、40cm×40cmごとに深さ30cmの位置に本剤の所定量注入し、直ちに覆土、鎮圧する。この場合、クロルピクリンのガスは土中で徐々に拡散し、地表面からの急激なガス揮散がないので、ポリエチレン・ビニール等による被覆は特に必要としない。但し、乾燥した砂質土壌や土塊の残る圃場等において、深層土壌くん蒸の覆土、鎮圧効果が期待できない場合は被覆を行うこと。』となっているため、使用者は被覆不要と考えたようです。
 クロルピクリン工業会の資料をみると、深層処理は被覆しなくともよいとのメリットを宣伝文句にしていますが、その根拠は、地表濃度の経時変化が図に示すようだからです。
 日本くん蒸技術協会「クロルピクリン土壌くん蒸安全対策推進運動に係る講習会」資料(平成20年9月30日)p34参照
 確かに、このデータを見る限り、 20時間以後は、シートをしなくてもよいようですが、注入する圃場土壌の良し悪しをどう判断するかは、不明です。

★住宅地近隣での使用を禁止すべき
 クロルピクリンの人への影響濃度は、0.3〜3.7ppm、3〜30分で催涙となっています。今回の事故後、防止対策として、京丹後市や京都府丹後農業改良普及センターは、施用直後にポリエチレンフィルムの被覆を確実に行うこと等を挙げています。例え深層処理であっても被覆しろということでしょうが、毎年のように、発生するクロピク事故を思えば、この薬剤の住宅地近隣での使用を禁止することが一番です。
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作成:2009-03-01