環境汚染にもどる
t20902#環境省のゴルフ場使用農薬の07年度調査と農薬取締法の違法行為がわからない実情#09-01
【関連記事】埼玉県鳩山町の石坂ゴルフ倶楽部訴訟:記事t18804、記事t19308、記事t19807
【参考サイト】環境省:ゴルフ場暫定指導指針対象農薬関連の頁
環境省は、ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁の防止を図るため1990年5月に「ゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁の防止に係る暫定指導指針」を公表し、ゴルフ場排水や周辺水系の環境調査を関係者に求めて来ました。指針値が設定されている分析対象農薬は、01年12月の改正で45農薬となったまま、現在に至っています。
環境省は08年10月16日に、07年度の水質調査結果を発表しましたが、その内容について、いくつか問題点があり、同省に質問を行い、回答を得ましたので、それらをまとめて紹介します。
★総検体数は2万7365だが
都道府県別の分析結果を表1−略−に示しました。総検体数は水質の検体数×その試料の分析対象農薬数を意味し、2万7365件になっています。754個所のゴルフ場すべてで45種の農薬が分析されているわけではないことは、1ゴルフ場あたりの平均検体数が36であることからもわかります。都道府県で分析する農薬が9-45種とバラツキがみられるのは、それぞれの判断によって調査を実施しているためということです。検体数が2万を超えるといっても、各ゴルフ場で、年に1回程度の調査しか行われていないことは明らかです。
また、県別の調査ゴルフ場数をみると、兵庫県は113個所で、総検体数の27.6%の7551件の分析がなされている、一方で、青森、山梨県の調査数は0、岩手、山形、群馬、東京、石川、三重、鳥取、徳島、高知、宮崎、沖縄の11県で調査数1となっています(このうち、沖縄を除く10県は環境省地方環境事務所が調査実施)。
表1 都道府県別のゴルフ場農薬調査結果 −略−
【参考サイト】GDOのゴルファーズブログにある都道府県別ゴルフ場数(06年東京ゴルフサーチ調べ)
★ゴルフ場の一部しか調査が実施されていない
調査対象ゴルフ場数の経年推移は、次頁の図−略−のようになっています。1998(H10)年の1990個所をピークに調査されるゴルフ場の数は、漸減傾向にあり、06(H18)年度からは800個所以下となっています。表1に示したように、06年度のゴルフ場数は2362個所あり、調査されたのは3分の1以下です(県別でみれば、調査比率は0から100%)。無農薬で植栽管理がされているところが、それほど多いとは思われません。環境省は、減少の理由ははっきりとは分からないが、都道府県の財政事情等が理由とも考えられるとしています。分析の実施が法律で義務付けれられているわけではないのもその理由のひとつでしょう。
環境省の地方事務所が独自に分析したケースは少なく、07年では、21個所で2.8%を占めるに過ぎません(総検体数では3.5%)。
★登録失効している農薬も検出される
ゴルフ場排水口での分析結果(農薬別水質調査結果)で検出された農薬を次頁の表2−略−に示しました。指針値のある45農薬のうち24種の農薬が検出されており、最高値はアシュラムの0.19mg/Lで、指針値を超えたものはありませんでした。
すでに登録失効した農薬のうちイソフェンホス(04/04/14失効)、ピリダフェンチオン(07/02/28失効)、ベンスリド(06/12/04失効)、メチルダイムロン(05/07/14失効)は検出されていませんが、除草剤テルブカルブ(98/07/09失効)が、9年前に失効しているにも拘わらず、いまだ検出されています。
なお、07年4月には三重県の伊賀ゴルフコースで使用された除草剤ハロスルフロンメチルによると思われる魚毒事故が発生していることを付言しておきます(記事t19006参照)。
また、07年度に使用された農薬成分名を都道府県ごとに、教えてくださいとの質問を環境省にしましたが、『本調査においては使用農薬に関する報告を求めていないため、お問い合わせの内容についてはお答えすることができません。』との答えが返って来ただけでした。
PRTR法で届出外排出量として報告された農薬有効成分(指定第一種化学物質)について、ゴルフ場での農薬使用量をみると、06年度は、38成分で約251.6トンとなっており、そのうち指針値のある農薬は16で約170トンです。残りは、使用されているにも拘わらず、分析対象となっていません。
このように、分析対象農薬と実使用農薬に相違があることが問題です。01年に対象農薬が改定されて以来、使用される農薬がどのように変化しているかの情報なしに、水系汚染の実態を知ることはできないはずです。環境省は現在、見直しを検討しているということですが・・・。
★農水省は立ち入り検査をすべき
【参考サイト】課長通知:農薬を使用する者に対する農薬使用計画書の提出依頼についてと
ゴルフ場で農薬使用計画書様式
03年の農薬取締法改定に伴い、「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」が公布されました。その第五条(ゴルフ場における農薬の使用)で、農薬使用者は、ゴルフ場において農薬を使用しようとするときは、毎年度、使用しようとする最初の日までに、使用者の氏名・住所と当該年度の農薬使用計画書(変更があった場合もその旨届出)を農林水産大臣に提出しなければならない、となっています。これは義務条項で違反すると罰則が適用されます。
しかし、届出は、使用農薬の商品名と成分名、剤型とコースのどの場所に、どのような方法で使用するかを一覧表にして出すだけで、使用期日や使用量の報告義務はありません。
届出るのはゴルフ場責任者ではなく、農薬使用者(多くの場合は防除業者)です。書類には、当該ゴルフ場の名称と所在地を記載することになっていますので、どのゴルフ場でどのような農薬が使用される予定であるかはわかることになっています。
ところで、この届出先は、農林水産省の出先機関である地方農政事務所(地方農政局が所在する府県は農政局)となっています。農政事務所は旧食糧庁の食糧事務所で、米の検査を主な業務としていたところです。そのような部署が、提出された農薬使用計画の内容に虚偽がないかどうか、ゴルフ場で計画通りの農薬使用がなされているかきちんと現場点検しているとは思えません。
指導指針に『農薬使用状況等の的確な把握』として、『関係行政部局、市町村、団体等の協力分担の下に、管内ゴルフ場関係者との間の連絡協議を密にして、必要な資料の収集整理に努めるもの』とした環境省は、農水省との間で適宜情報を交換しているといいますが、農水省本省は、ゴルフ場に関し、罰則も適用される義務条項の実態も把握していませんでした。計画書だけでなく、実績も提出させ, 立ち入り調査を行わなくては、省令を無視する輩がでてきても、取締りもできません。
★アメリカ軍のゴルフ場も規制対象に
【参考サイト】武正公一議員の在日米軍基地内ゴルフ場施設の利用に関する質問主意書への政府回答
自衛隊専用のゴルフ練習場が基地内に12ヶ所あることが問題となりましたが、治外法権のアメリカ軍管理下のゴルフ場については、08年3月に提出された武正公一議員の質問主意書への政府回答で明らかになっています。
全国に10のコース(青森県1、東京都2、神奈川県2、山口県1、沖縄県4)があるそうです。神奈川県にあるキャンプ座間ゴルフ場では、コースからのボールの飛び出し事故が続き(4月〜10月で90個)、市民団体や相模原市が防止対策を求めています(この過程で、利用者の8割が日本人だったことも明らかになった)。キャンプ座間については除草剤散布問題を記事t18006でとりあげましたが、アメリカ軍のゴルフ場でも、日本の法令遵守を求めるべきです。
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作成:2009-06-28