環境汚染にもどる

t21305#農薬事件・事故#09-05

佐賀県での魚毒事件
 4月3日、佐賀県唐津市の玉島川水系の下流域で、アユなど約1000匹が死んでいるのが見つかりました。県が魚の病気や水質調査をした結果、魚病はなく、同日11時30分頃採取されたへい死発見場所付近の水質から1.3μg/L、死んだアユのエラから0.24μg/gの農薬トルフェンピラド(商品名ハチハチ)が検出されました。同地点の河川水中のトルフェンピラドはその1時間20分後には0.17μg/Lに減少、さらに約2時間後に採取された約2km上流の河川水は検出限界以下(0.08μg/L)でした。
 魚毒死の原因となったトルフェンピラドは魚毒性C類の殺虫剤で、『河川、湖沼、海域及び養殖池に本剤が飛散・流入する恐れがある場所では使用しないでください。』との注意書きがありますが、なぜ、河川に流入したかは、判明していません。
 玉島川では、一昨年6月12-13日、6月27日、8月28日に、今回よりも上流で、アユの大量死がおこっており、前2者は原因不明、8月のはトルフェンピラドが原因とされていました。  そこで、佐賀県に対して、玉島川流域地区での農薬の使用状況や同類事故の再発防止対策等を尋ねました。以下に回答の要旨をまとめました。

【ハチハチの使用状況】ハチハチはハウスみかん、施設コネギ、露地みかん、茶等に適用される。

【廃・残農薬処理など】県内の農業団体は廃・残農薬を回収し、その後、産業廃棄物処理業者に一括して処理を委託している。
 今回の事件で、関係団体等からの聞き取りの結果、当該農薬の不正投棄などの事実は確認できなかった。

【農薬使用履歴の帳簿記載】平成16年度から、県と市町及び関係団体等が一体となって、散布時期、散布場所、散布量等の栽培履歴記帳を推進してきた結果、ほとんどの農家が栽培履歴記帳に取り組んでいる。

【ほかの農薬取締法違反事例】玉島川流域で、07、08年度に適用外使用等の事例は発生はない。07年8月28日に、玉島川流域で、農薬を入れたタンクと配管をつないでいるバルブがはずれ、玉島川に流出する事故があり、再発防止の指導を行った。

【農薬使用者の研修等について】農薬の河川等への流出防止や農薬飛散防止等、農薬の適正使用については、これまでも、関係機関・団体と連携し、指導してきたが、引き続き、指導を徹底していきたいと考えている、との返事です。

 佐賀県が力をいれているのは、研修会で、07年度に5回(延べ604人)、08年度には4回(延べ630名)開催しており、09年においては、玉島川流域の農業者に対し、農薬の河川等への流失防止や、魚毒性の高い農薬を使用する場合の注意等農薬適正使用についての研修を行ったとのことですが、これらにより、2度のトルフェンピラドによる魚毒事件を防止し得なかったわけです。

 県は、研修だけでなく、農薬使用現場に赴き、農業団体や使用者に対する立ち入り検査など指導を強化すべきと思いますが、玉島川流域では、07年度も08年度も実施されていませんでした。
【参考サイト】佐賀県:
報道発表(09/04/10)

野鳥の大量死〜原因不明のまま
 全国各地で、カラスやハト、ヒヨドリなどの野鳥が大量死するケースが、よくみられます。新聞やテレビで報道されると、当グループは、まず、農薬などの毒物が原因ではないかが気になり、発生地の自治体へ問合せるのが常です。
 行政は、大量死が見つかった場合、鳥インフルエンザやウエストナイルのウイルスを疑い、その検査をすることになっています。死骸の様子や周辺に毒餌のような不審なものが見つかった場合には、吐瀉物や胃内容物の毒物検査が実施されるようです。今年起こった2つの事例を示します。

【岐阜県美濃加茂市】 美濃加茂市立山手小学校周辺で、1月27日から2月4日にかけて、ヒヨドリ37羽の死亡が確認されました。
 岐阜県中濃振興局環境課に問い合わせたところ、以下の要旨の回答が来ました。
 原因調査及び結果
 @現場及び周辺環境調査(半径500m):異常は認められない。
 A鳥インフルエンザウイルス検査:国立環境研究所でのウイルス確定検査で陰性。
 B病理解剖:岐阜大学応用生物科学部附属野生動物救護センターでの病理解剖では、
 「死因は、感染症、中毒、凍死などによるものでなく、誤嚥に起因する高度肺鬱血
  によるもの」との報告あり。
 1997年に、長野県で野鳥の大量死が多発した際、食べすぎによる窒息説、鳥が食べたピラカンサスの実に含有されている青酸配糖体によるシアン中毒説のほか、EPNやメソミル、ベンフラカルブなどの農薬が検出されたこともありました。37羽が一斉に誤嚥したとしても、その原因はなんだったのか、疑問が残ります。
【参考サイト】日本野鳥の会軽井沢支部:
信州の野鳥大量死

【神奈川県南足柄市】4月5日、南足柄市の山林やミカン畑で、カラス41羽の死骸がみつかりました(その後の発見を加え総計59羽)。その原因調査について、2度にわたり、県に問い合わせて得た回答の要旨は以下のようで、死因不明のまま幕引きとなりました。野鳥の大量死が人の健康被害につながらないとも限りません。原因究明はもっと力をいれてやってもらいたいものです。
 (1)鳥インフルエンザウイルス、ウエストナイルウイルス:いずれも陰性。
 (2)死骸のそばにあったミカン以外の不審な餌は確認できず。
 (3)69種のリン系殺虫剤(検出限界0.5 ppm)、8種のカーバメート系殺虫剤(同1.0)、
  ヒ素、銅、タリウム(同0.2)の検査:胃と腸組織、ミカンでいずれも検出されな
  いか許容の範囲内。3種の殺鼠剤(同0.05):腸組織で検出限界以下。
 (4)死骸検査:口腔内や総排泄腔周囲に汚れなし。4羽中3羽の頭蓋骨下に出血が
  認められ、胸腔及び腹腔内では1羽で肝臓から出血が認められた。その他の異状
  は認められず胃の中に残留物はなし。
 (5)毒性のある野草や種実の摂取検査、硫化水素、青酸ガス、二酸化炭素、くん蒸
  剤ほかの有毒ガス類の調査、揮発性有害物質の調査、被害現場周辺の水系及び
  土壌汚染調査は実施せず。
 (6)現場周辺に工場、廃棄物焼却施設、廃棄物埋立処分場、有機肥料製造場等なし。
  また、廃棄物の不法投棄はなし。
 (7)新たなカラスの死亡が確認されていないことから、今後の調査の予定なし。
【参考サイト】神奈川県報道発表
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作成:2009-08-29