食品汚染・残留農薬にもどる
t21604#イミダクロプリドの残留基準設定にもの申す〜コメの基準を5倍緩和#09-08
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【参考サイト】食品安全委員会:イミダクロプリド農薬評価書
厚労省:イミダクロプリドの残留基準で意見募集と基準案と参考資料
当グループパブリックコメント意見、パブコメ結果と厚労省見解
渡部さんのHP:ネオニコチノイドとイミダクロプリド総説
★129の農作物の残留基準案〜7作物は設定なしに
イミダクロプリドは日本で一番早く登録されたネオニコチノイド系殺虫剤(以下ネオニコという)で、現在、90を超える製剤(主な商品名:アドマイヤー)が登録されています。ミツバチ被害の原因のひとつであるクロチアニジンとともに、イミダクロプリドは、フランス、ドイツ、イタリア、スロベニアで使用規制され、イギリスでは土壌協会が政府に規制を求めていますし、蜂群崩壊症候群が顕著なアメリカでも環境保護団体が問題視しています。日本では、農薬使用者と養蜂業者の連絡を密にすることぐらいしか、ミツバチ対策がとられていません。
そんな中、8月3日に、いままで暫定基準であったイミダクロプリドの本格残留基準案が、厚労省から提示されました。
農作物関係では、129作物の基準案が示されましたが、表1(−省略−)には、新基準案が現行より高い値に設定された36作物(表中太字)と1.5ppmを超えて設定されているものをあげました。
いままで基準のあったシイタケやパイナップルなど7作物が設定なし(一律基準0.01ppmが適用される)と変更されたのは、良しとしても、新基準案には多くの問題点があります。
★現行5倍の1ppmとなったコメの基準案
コメについては現行基準の5倍の1ppmと提案されました。その根拠となる水稲の作物残留性試験は15件30事例ありますが、そのうち、最大残留値が0.1pppm以下が83.3%で、現行基準の0.2ppmを超えたのは2件4事例しかありません。この2件で、一番残留値の高い0.31ppmを示したのは、2%粒剤の育苗箱使用+50%顆粒水和剤の5000倍希釈2回散布でしたが、50%顆粒水和剤は現在、育苗箱での適用しかありません。
適用外使用の残留値を採用して、5倍も緩和するのは、今後適用方法の拡大をめざすためのものでしょうか。
過去にも、やはりネオニコ系のジノテフランでコメの残留基準が変更された例がありました。05年11月29日のポジティブリスト制度での最初の告示で残留基準は2ppmでしたが、これを改正し、07年1月28日から、1ppmが基準となりました(記事t17701参照)、その後、07年6月15日には2ppmに戻すという提案がなされ、07年10月26日から施行されました。
この基準緩和は、10%液剤と10%水和剤の使用方法追加による適用拡大にありました。最大残留値0.94ppmを示した水稲残留性試験では、10%ゾル剤を無人ヘリコプターで原液散布するという適用にはない散布方法がとられています。それまでの残留性試験で、1ppm以下で問題なかったのですが、この無人ヘリコプターによる過剰散布実験で得られた数値の2倍にしておけば、どんな散布をしても残留基準を超えることはあるまいとして、2ppmとされたと思われます。結局、1ppmが基準だったのは9ヶ月だけでした。まさに、異例なことです。
★農水省によるネオニコ系農薬の残留分析
ところで、コメにイミダクロプリドをはじめとするネオニコ系農薬がどの程度残留しているのでしょう。農水省の調査結果をみてみましたが、98年から07年にかけての分析検体数は表2のようで、分析値はいずれも検出限界以下でした。当該農薬が、登録されていない、従って、使用されていない年度のものの調査があるのは、政府所有のコメをまとめて分析したためと思われます。たとえば、クロチアニジンは芝用の登録が01年12月ですから、コメで分析して意味があるのは03年以後です。水稲用への使用が増える05年以後、分析がなされていないのは問題です。
表2 農水省によるコメのネオニコ系農薬の残留分析調査(検体数、-は分析例なし)
収穫年 98 99 03 04 05 06 07 厚労省03年
アセタミプリド - - - - - - - 16
イミダクロプリド 28 42 50 55 - - -
クロチアニジン 28 42 50 41 - - -
ジノテフラン 28 42 50 98 - - 1
チアクロプリド - - - 26 - - -
チアメトキサム - - - 28 - - -
ニテンピラム - - - 30 - - -
フロニカミド - - - - - - -
【参考サイト】農水省の米麦の残留農薬等の調査結果
★ほかにも残留基準アップ作物満載
コメ以外にイミダクロプリドの残留基準の緩和が提案されたのは、表1(−省略−)に太字で示した35作物です。私たちは、パブリックコメントで、基準案が1.5ppmを超えたものについて、再考するか、もしくは、残留値を設定しないよう求めました。
提案された基準値は、残留性試験で得られた最大残留値の2倍にあたる数値が設定されているケースが多くみられます。登録申請時に2事例を提出すればいいことになっていますが、高い方をとることは、統計学上、意味がありません。今後、試験数を6件程度に増やすことが検討されており、より科学的に意味のある残留基準の設定につなげてほしいものです。
また、日本の残留性試験で得られた最大残留値よりも高い、アメリカの試験結果が参照にされたり、当該作物の残留データが不明の場合、アメリカでの試験結果で、別の作物の残留試験が参照されて、残留基準が設定される例が多いのも解せない話です。
★ADI比はクリアしても、収穫前日まで使用可能でいいのか
農薬の残留基準値にそれぞれの食品を一日にどの程度食べるかの指標である食品ごとのフードファクター(たとえば、コメの国民平均摂取量185.1g/日、大豆56.1g/日、ほうれんそう18.7g/日、えだまめ0.1g/日など)を乗じて、合計すると、一日当りにその農薬をどの程度食べるかという数値(体重あたりに換算して理論最大一日摂取量という)が得られます。これが、ADI=一日許容摂取量を超えなければ、よしとするのが厚労省の残留基準設定の前提となります。この一日摂取量/ADI比が100%を超えなければ、設定した残留基準に問題ないというわけですが、食品以外からの取り込みもありますので、80%以下が目指されます。でも、この比が出来る限り低いにこしたことはありません。
イミダクロプリドの場合、ADI比は、国民平均で30.3%、幼小児1-6歳で60.3%、妊婦で23.5%、65歳以上で31.5%となり、数値上では、すべてのケースでクリアしますが、気になるのは、成人に比べ、体重あたりの食べる量が多い幼小児は、農薬摂取量を少なくすべきだと思うのにADI比が高くなる点です。
また、農薬の使用時期が、収穫前日まで可能となっている20の作物について、ほんとうに、提案された残留基準で大丈夫かと気になります。
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作成:2009-11-27、更新:2011-01-12