農薬の毒性・健康被害にもどる

t21605#農薬散布車スピードスプレーヤーによる死者すでに6人#09-08
【参考サイト】農水省:平成19年の農作業死亡事故について
       農作業安全情報センター農作業安全対策の頁農作業死亡事故調査

  反農薬東京グループの問合せ:農薬散布車の事故について(09/07/03)
                  スピードスプレーヤ事故の件
(09/12/04)

 今年の4月から6月にかけて、農薬散布車の横転による運転者の死亡事故が3件おこりました。この発生件数が多いので、農水省に尋ねてみました。その回答要旨を以下にまとめました。
 スピードスプレーヤーは、傾斜地でも小回りがきくことから、主に果樹園などで使われる自走式の農薬散布車です。車高は約1.2m、運転用ハンドルは車の右側にあります。薬剤タンクから農薬希釈液を送り込み、18個の散布ノズルから加圧噴射された農薬は車の後部にある大型送風機で飛散させます。運転席がキャビンのものもありますが、多くはオープン型で、散布・運転者は、カッパ、マスク、メガネ、手袋などの保護具をつけねばなりません。

★相次ぐ散布車事故
 農水省への質問の結果、わかったことは、表のようで、600Lタンクの4輪4駆車、運転者は66-77歳男性というのが共通点です。事故時どのような農薬が積載されていたかは不明ですし、事故後、農薬がどうなったかも、はっきりしません。表以外にも、3月に、1000LタンクのH20年製造4輪4駆、リンゴ園で死亡事故が起こったほか、4月には、2件の重傷事故(1件は3輪2駆車で後進運転中ミカン園圃場端から転落、もう1件はリンゴ園で、車両とリンゴの木に挟まれた)が報告されています。さらに、8月8日青森県で78歳男性、8月12日長野県で83歳男性が、散布車とリンゴ木に挟まれて死亡しました。
表2には、04年〜08年の死亡件数の推移を挙げました。ほかに、挟まれたり、ひかれたり、他の自動車と衝突した事例もありました。
表1 09年4月〜6月のスピードスプレーヤーによる死亡事故

                    天童市       福島市        弘前市

事故発生日         4/19 AM 6〜7時頃  6/25 AM 6〜7時頃 6/30 AM9時頃

場所                農道        モモ果樹園     リンゴ果樹園
事故状況        進行方向左の法面に 車両方前部の    右側に傾いて運転
            乗り上げ横転下敷き 下敷き       中、横転下敷き
死亡者(出典新聞報道) 60代後半男性    70代後半男性   60代後半男性
スピードスプレヤー機種 H16年製造4輪4駆   H3年製造4輪4駆 製造年不明4輪4駆
            タンク容量600L   同左        同左
事故時の農薬積載状況  不明        恐らく積載中    積載中
農薬名         不明        不明        不明
積載量         不明        不明        不明
事故による農薬漏れ   不明        漏れなし?     漏れなし
事故後の散布継続状況  散布中でない    ノズル開閉不明   ノズルコック閉

表2 動力防除機における死亡発生件数の推移

                 04年 05年 06年 07年 08年
圃場又は道路からの転落・転倒    3   2   2   3   1
★安全鑑定基準をクリアしても危険
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構では、安全鑑定基準なるものを設け、安定性や操作性をチェックしているそうで、表の3件の事故車はいずれも、鑑定適合機となっていました。
 死亡原因は、運転者が車の下敷きになったり、木と車に挟まれることですが、これらは、運転席をオープン方式でなく、キャビン方式にすれば、防げるはずです。

★メーカーの注意事項
 スピードスプレーヤーのメーカーのひとつ潟Vョーシンのホームページをみると、「安全作業のお願い」として、事故防止のための注意があり、乗用車の運転に比べ、格段の注意が必要なことがわかります。

★農水省の指導
 農水省では、生産局長通知「農作業安全のための指針」や生産資材課長通知「個別農業機械別留意事項」で防除機による事故防止対策を指導していますが、毎年のように死亡者がでています。
 農耕地内の安全な運転法などの教習については、全国の農業大学校などで、一般の農家等も対象とした安全運転研修が毎年開催されているそうですが、今回の被害者における免許取得や講習受講の状況については不明です。
 散布に際しては、前もって、散布車や散布装置、圃場の状況などの点検事項をチェックすることが、必要ですし、60代以上の人の事故率が高いことをみると、運転者の適正検査も実施すべきです。また、農薬が漏洩した場合の対応方法もマニュアル化しておくべきでしょう。さらに、一人作業を行っている場合、事故が発生しても、早期発見・通報ができません。この点については、車の改良が必要だと思います。

 鰍竄ワびこ:共立スピードスプレーヤーのリコール情報(10/29)
   国土交通省:リコール届

 潟Vョーシンのスピードスプレーヤーのリコール情報(12/01)
   リコールプラス:11209
   国土交通省:リコール届


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作成:2009-11-27、更新:2009-12-01