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t21705#文部科学省 ようやく、劇毒・販売禁止農薬調査結果を発表〜学校衛生管理マニュアルの発行はまだ#09-09
【関連記事】記事t20606、記事t21304
昨年10月に発覚した西東京市にある東大多摩農場での水銀系販売禁止農薬の使用問題を契機に(本誌206号参照)、文部科学省は、全ての大学及び高等専門学校に対し、農薬等の使用や毒劇物の適正管理について指導を強化するとともに、農薬の使用・管理状況について調査を実施していました。
このような調査は、3ヶ月もあれば、回答がまとまるであろうと考え、1月23日付けに発した同省宛ての「学校や研究機関等での農薬・殺虫剤等の使用について」と題する要望と質問にも当該調査結果の公表を折込んでいました。しかし、回答期限の2月25日、さらには、3月2日、4月7日と二度にわたる催促にも返答なしのままでした(1月23日付要望、4月7日付要望)。
そして、ようやく、8月18日に、使用・管理状況調査結果が発表されました。以下にその概要を紹介します。
★全国1235機関の36.1%が農薬を所持・使用
文部科学省は、全国の大学等1235機関(うち大学767、短期大学404、高等専門学校64)を対象に、03年3月10日(改定農薬取締法施行日)以後、08年10月30日までの期間について、農薬の所持・使用状況などの調査を行い、そのすべてから回答を得ました。
その結果の概要を表1に示します。全体の36.1%にあたる446機関が農薬を所持・使用しており、そのうち、使用禁止農薬(農薬取締法でいう販売禁止農薬)については76、毒物・劇物については272、特定毒物については58機関が所持・使用していました。
表1 文部科学省による農薬の所持・使用状況調査結果>
調査項目 大学 短期大学 高専 合計
農薬の所持・使用状況 所持・使用 326 87 33 446(36.1%)
使用禁止農薬の所持・使用状況 所持・使用 70 5 1 76(6.2%)
うち 研究目的で使用 56 2 1 59(4.8%)
うち 研究目的外で所持・使用 14 3 0 17(1.4%)
登録農薬の所持・使用状況 所持・使用 214 41 17 272(22.0%)
うち 研究目的で使用 97 6 3 106(8.6%)
毒劇物農薬の所持・使用状況 所持・使用 167 29 8 204(16.5%)
特定毒物農薬の所持・使用状況 所持・使用 49 7 2 58(4.7%)
【参考サイト】文部科学省:農薬の使用状況等に関する調査の結果についてと調査結果
★不適切な機関は延べ33機関
毒劇法違反など、農薬を不適切な所持・使用していたのは、重複違反もあり、延べ33機関でした。このうち使用禁止農薬を試験研究目的外で使用していたのは東京大学と岡山大学。また、試験研究の目的で使用される登録農薬についてその種類や数量を適切に把握できていなかったのは岡山大学でした。
岡山大学では、04年に水銀系殺菌剤を大麦に使用しており、東京大学では、本年4月に、新たにパラチオンが見つかりました。
毒劇物指定や特定毒物指定の農薬の管理等が不適切で、毒劇法違反であった機関は表2に示したようです。
表2 毒劇法違反の機関数
適切に保管できていない 使用量を把握するなど 特定毒物研究者の許可を
(10機関) 管理が適切でない(6機関) 受けていないで所持(14機関)
東京大学 東京大学 東京大学 鹿児島大学
愛知教育大学 愛知教育大学 浜松医科大学 札幌医科大学
岡山大学 岡山大学 名古屋大学 杏林大学
兵庫県立大学 東北公益文科大学 愛知教育大学 日本獣医生命科学大学
近畿大学 近畿大学 名古屋工業大学
久留米大学 立命館アジア太平洋大学 京都大学
中村学園大学 岡山大学
拓殖大学北海道短期大学 九州大学
実践女子短期大学 佐賀大学
中村学園大学短期大学部 熊本大学
★大学、高専だけでない事故事例〜早急に学校環境衛生管理マニュアルの作成配布を
農薬による被害は、大学や高専などだけではありません。北海道旭川市の緑が丘中学校では、08年7月には、アリ駆除に用いた有機リン系のスプラサイド乳剤で生徒30人が頭痛や吐き気を訴えました(記事t20404参照)。同年5月の出雲市でのスミパインMC剤の松枯れ空中散布による児童・生徒を中心として1200人の健康被害(記事t20201と記事t21001参照)、さらに、08年7月30日には、山形県三川町の横山小学校のプールに農薬空中散布中の無人ヘリコプターが墜落するという事故も起こっています(記事t20402と記事t20501参照)。
今年になっても、新聞報道によると、4月28日、富山県立入善高校の農場で、農薬棚を整理中、クロルピクリン入りビンが落下・破損し、被害には至りませんでしたが、刺激性ガスが漏れ出ました。
このような、農薬・殺虫剤関連の被害事例等を知るため、私たちは、前述の文部科学省への要望と質問で、『学校(貴省所管の初等、中等、高等の教育機関をいう)や貴省所管の研究機関等で発生した、農薬や殺虫剤等による健康被害や環境汚染事例を教えてください。』との項をいれましたが、依然として回答はありません。事故等の対策を講ずるには、まず、その事例を把握することが重要なのに、同省は、いまだ、何の調査もしていないのでしょうか。
さらに、文部科学省は、「学校環境衛生基準」(学校での農薬や殺虫剤等の使用にについての項目も含まれる)を改定し、今年の4月から実施されていますが、その内容を具体化した「学校環境衛生管理マニュアル」は約2700万円の予算で、09年度内に作成・配布されることになっているものの、未だ、発刊されていません。
学校でのシックハウス症候群や化学物質過敏症に苦しむ子どもたちのためにも、一日もはやく、マニュアルを作成・配布してもらいたいものです。
【参考サイト】学校環境衛生基準、旧マニュアル(2004年3月)
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作成:2009-12-25