ネオニコチノイド系農薬・斑点米関係にもどる

t21708#Q&ARネオニコ粒剤散布で、どうしてカメムシが死ぬのか#09-09
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【参考サイト】三井化学アグロ(株):ジノテフラン(商品名スタークル粒剤)
       住友化学のi-農力:クロチアニジン(商品名ダントツ粒剤)
   クロチアニジンの残留性試験結果残留基準ジノテフランの残留性試験結果残留基準イミダクロプリドの残留性試験結果残留基準

Q:カメムシ防除にネオニコチノイド系(以下「ネオニコ」)農薬が多く使われているということですが、どういう農薬が使われているのですか。
A:ネオニコの基本的なことについては記事t216で書きましたが、実際に使われているのは、2005年に岩手県でミツバチ大量死の原因となった商品名ダントツ(成分名クロチアニジン)とか、商品名スタークル(成分名ジノテフラン)などが多いようですね。
 2008年農薬年度ではジノテフラン粒剤が2481.8トン、クロチアニジン粒剤が713.1トン出荷されています。これがすべてカメムシ防除に使われたかは不明ですが。

■カメムシは稲の茎葉を吸って死ぬと
Q:粒剤が多いとのことですが、粒剤だと、たとえカメムシに当たったとしても、滑り落ちて効果がないのではないかと思うのですが。
A:接触・経皮毒を考えると、そうですね。
Q:じゃあ、カメムシは粒剤でどうして死ぬのですか。
A:実は、それが不思議だったので、ダントツ粒剤のメーカーの住友化学(株)と、スタークル粒剤のメーカーである三井化学アグロ(株)に、質問を出しました。
Q:へえぇ、回答がきたのですか。
A:ええ。スタークル粒剤メーカーの三井化学アグロは、「水稲のカメムシ類の多くは水分を稲の葉や茎から吸汁する。水田に散布されたスタークル粒剤は稲に吸収され、それを吸汁したカメムシは稲の穂を加害できなくなると考えている。カメムシが減少していなくても、被害が押さえられている事例も多く、死に至らない場合でも『吸汁阻害効果』によるカメムシ防除効果があることを確認している」というものでした。
Q:カメムシが稲の茎や葉を吸うことによって、ジノテフランがカメムシの体内に入り、死ぬということですか。
A:まあ、そういうことでしょうね。死ななくても効果があるとも言っています。
 住友化学の回答も同じようなものでしたが、まず、「ダントツ粒剤が水稲カメムシに対してどのように作用するかについては、充分解明できていない」といって、次のような推定をしています。「水田に散布された粒剤から有効成分が溶け出し、稲の根、または葉茎部から速やかに稲に吸収され、主に葉茎部に移行する。斑点米カメムシは穂のみ吸汁しているのではなく、葉茎部を吸汁して水分補給を行っている。」
 つまり、田んぼに撒かれたネオニコ粒剤は水に溶け、稲に吸収され、カメムシが吸うことによって効果がでると言っているわけです。もっとも、茎や葉に多く浸透移行して、穂にいくのは少ないとも言っています。

■米に残留しているのではないか
Q:じゃあ、稲の茎や葉にはカメムシが死ぬほどのネオニコがあるということですね。それって怖いことじゃないですか。穂には移行しないのですか。
A:ネオニコに限らず、虫が浸透性農薬の残留している葉などを食べれば死に至ることになります。穂にも移行しますが、問題なのは、それが玄米に残っているか、稲ワラを飼料に使った場合、家畜に害を与えないかですね。
 玄米については、残留基準はジノテフラン(スタークル)が2ppm、クロチアニジン(ダントツ)は、0.7ppmです。残留基準違反は見つかっていませんが、他の野菜や果実の残留分析に比べ、米は分析していないのではないかと思うくらい分析件数が少ないです。農水省や厚労省資料には、06年以降は玄米での分析調査はみられません。
Q:じゃあ、残留しているかもしれないじゃないですか。
A:その可能性はあると思います。基準以下なら公表されないこともありますし。
 表に登録される前の段階での残留性試験の結果を示しましたが、玄米にも稲ワラにも残留していることがわかります。表で#印をつけたのは、使用条件などが登録とは違っていることを意味します。
 一般に残留基準は、最大残留値の2倍以上の数値に設定される場合が多いです。
  表 農薬登録時に提出された残留性試験(厚労省資料より)

剤型       使用方法等   使用回数 散布後経過日数   検体   最大残留量 ppm                        
クロチアニジン    (残留基準 0.7ppm。稲ワラ飼料 2ppm) 
@2.5%粒剤    育苗施用     1回       21日     玄米     0.134#
 +16%水溶剤    +4000倍散布  +3回       14日     稲ワラ    0.11#
A2.5%粒剤    育苗施用         1回         14日       玄米     0.2 #
 +0.5%粒剤     +水面施用    +3回           14日        稲ワラ      0.72#
 
ジノテフラン         (残留基準 2ppm)
@ 2%粒剤     育苗施用      1回         21日       玄米     0.44#
 +20%水和剤    +2000倍散布   +3回         7日       稲ワラ   0.34 #
A 2%粒剤     育苗施用      1回          14日       玄米    0.04 #
 +1%粒剤      +水面施用   +3回         7日        稲ワラ    0.44 #
B2%粒剤      育苗施用     1回          14日        玄米    0.39
 +10%液剤       +8倍無ヘリ散布 +3回          7日       稲ワラ    3.00  
Q:ところでカメムシはどのくらいの濃度で死ぬのですか。
A:住友化学はクロチアニジンのカメムシに対する半数致死濃度(経皮)は、0.21〜2.5ppmと言っています。三井化学はスタークル粒剤(ジノテフラン)は経口で1〜5ng / 頭、経皮で3〜25ng / 頭と回答しています。両社ともデータは少ないと言っています。
Q:他の生態系への影響はどうなんですか。特に水生生物については?
A:水稲育苗箱でイミダクロプリドを使った場合、この苗を田植えをすると、根に残留していたネオニコが本田水に溶出して、アカトンボの幼虫の餌となるミジンコ類を殺してしまい、トンボが生きられないという研究。トビケラ幼虫のネオニコ半数影響濃度は、急性毒性試験に用いるミジンコよりも1000倍から10万倍も低いという報告あります。
Q:とんでもない話ですね。
【参考サイト】農業環境技術研究所研究成果情報 平成19年度 (第24集) より
       コガタシマトビケラ1齢幼虫を用いた農薬の急性毒性試験法マニュアル
   
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作成:2009-12-27