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t22008#市民団体「いのくら」が神奈川県と交渉−アメリカ軍ゴルフ場の農薬使用とと河川敷の農薬規制#09-12
 09年11月に行われた神奈川県と市民団体との交渉で、米軍基地内のゴルフ場を県が訪れ、農薬の適正使用と使用報告書の提出を要請していることがわかりました。また、河川敷で使われる農薬についても、使用報告書の記入欄を具体的にしたり、使用時に下流水道事業者に連絡するよう、河川敷の利用者に求めたりしました。
県内の市民団体「いのくら」では、例年神奈川県や横浜市等と交渉を続けていますが、この中で農薬に関係する2つの内容について伝えます。

★米軍ゴルフ場、わからない使用実態
【関連記事】記事t18006記事t20902
【参考サイト】神奈川県ゴルフ場農薬安全使用要綱
       相模原市;キャンプ座間ゴルフ場からのゴルフボール飛び出しについて

 県内には、52の民間ゴルフ場があり、県は「農薬使用実績報告書」の提出を受けて、使用量と使用実態を確認しています。また、農林水産省神奈川農政事務所は、同様に「ゴルフ場農薬使用計画書」を使用前に求めています。
 ところが、「米軍基地は、日本の法令に服さない」とした日米地位協定の壁に阻まれ、県内2つの米軍基地内ゴルフ場は、提出を免れていたのです。
 しかし、ここから排出される農薬の環境影響については、民間のものゴルフ場と同様と考えられることから、米軍にも提出の協力について県から求めるよう、市民団体から要請しました。
 県は、11月18日(水)にゴルフ場を対象とした農薬安全使用研修会を実施しましたが、米軍2ゴルフ場にも参加を呼びかけるため、米海軍厚木基地と米陸軍キャンプ座間を初めて訪れ、このお願いとともに、県の農薬安全対策事業について説明を行いました。
 あわせて、住宅地等における農薬の通知や、環境省による「公園・街路樹等病害虫・雑草陸軍暫定マニュアル」などの情報や通知についても説明しました。
 基地内で使われる農薬は、米国からの持ち込み品の可能性があり、毒性、残留性、不純物量、使用基準が国内の登録農薬と異なる可能性があるのです。
 いまのところ県は、農薬使用結果等の報告は受けていませんが、「粘り強く働きかけていきたい」としています。
 基地問題は、国の専管事項ですが、環境保全や被害防止のへの働きかけは、自治体でもできることがわかりました。

★河川敷の農薬使用が減る
 神奈川県は、「県が管理する河川敷では、原則農薬を使わない」といった要項を97年に定め、これに基づいて、河川敷を運動場や公園として借用している市町村など(=占用者)に対し、1年間に使った農薬の使用報告を求めています。
 いのくらでは、毎年この個別の調査結果を情報公開させていますが、使用基準違反は毎年減りつつあるものの、ことしも適用害虫を「毛虫」「ダニ類」などこん虫名を特定しないで提出する例が目立ちました。また、有機リン系殺虫剤ディプテレックスを、アメリカシロヒトリには1500倍希釈率が使用基準なのに、1.5倍も濃い1000倍でまいていた業者が2者いました。
 県河川課は、占用者の記入ミスは点検し、それでも違反の疑いが濃い事案については、農業振興課に連絡して、必要な措置を執ってもらうこととし、こうした違反が起こらないように、再度改めて指導・周知すると約束しました。
 また、調査票の様式についても、こん虫名を具体的に記入するよう、改善することとなりました。

★人にも犬もやさしい公園に

 実は、この要項には副次的な効果が出ています。相模川・酒匂川の2大河川は、河川敷が広くほとんどが運動場や公園として整備されています。ジョギングや犬の散歩、夕涼みなど市民の憩いの場ともなっています。かつては、マツにスプリンクラーを取り付け殺虫剤をまいていたり、早朝の農薬散布もあったりましたが、こうしたところでの農薬使用がかなり減ったため、一般の公園より安心度が高くなりました。

★水道取水事務所への報告
 厚生労働省から農水省に「水道における農薬の検査に関する周知について」(健水発第071200号)という通知が04年7月12日に出ています。これは、農薬を使用したら、下流の水道事業者に情報提供するよう協力を求めているものですが、実際の連絡はほとんどありません。
 河川敷は、堤防の内側にあり、場所によっては、畑や水田となっているので、ここに農薬が使われると、一般農地より河川に流入する危険が高いため、極力使わないことが先の要項に定められていますが、やむを得ず使用する際は下流取水事務所への連絡が必要です。今回県河川課は、農業振興課(=現:就農参入支援課)と協力してこうした占用者に対して、このことを通知するようにしました。
 特に、相模原市内を流れる相模川には、面積の広い中州状の水田地帯や、堤防内の水田があり、5月の田植え後には相当量の除草剤が散布されています。そうした際の連絡も不十分でした。
 また、新たな問題として、堤防内農地の一部に民有地がある場合、個人所有なので県の占用許可がいりません。このため、河川課からの協力依頼ができないので、この部分については、県農業振興課(=現:就農参入支援課)から市町村を通じて、また、全農・全中から個別の農協あてに通知されるとしています。これが末端まで周知されているか課題となっています。

 米軍基地の農薬についての働きかけや、河川敷への農薬不使用の協力など、他県には見られないユニークな取り組みです。
 国の法令に基づかなくとも、要項を作り(県が独自に)実施しているところは、高く評価できますが、これは不断の市民の働きかけがあってのことなのです。(新巻圭)

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作成:2010-05-27