農薬の毒性・健康被害にもどる

t22102#農薬被曝事故は業務上過失傷害か、警察が被害届を受理(その5)北海道のゴルフ場農薬事故を追う#10-01

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 前号で、北海道虻田郡のゴルフ場で除草剤散布中に起こった散布者の農薬中毒事故を、農水省が知らなかったことを報告しましたが、この事故を調べるうちに、縦割り行政の実態が明確になってきました。

★労基署の事故情報は道庁には伝わらず
【参考サイト】北海道労働局のHPにある平成20年有害物質等による急性中毒等発生状況

 虻田郡のゴルフ場での農薬事故は、小樽倶知安労働基準監督支署の管轄する地区で、08年7月5日に起こりました。この時期は、道庁が実施している、平成20年度農薬危害防止運動月間の最中でした。危害防止運動は、農水省消費・安全局と厚労省医薬食品局の2局長連名で発出した通知をもとに、実施されていますが、道庁の農政関係部署は、ゴルフ場事故の発生を知りませんでした。事故情報は、旧労働省のルート−地元労基署→北海道労働局労働基準部→厚労省労働基準局−に伝わっただけで、危害防止運動を実施している道庁には届きませんでした。同じ厚労省の部局でありながら、医薬食品局と労働基準局との間にも情報の共有はなく、旧態依然とした縦割り行政が変わらないことが、露呈しました
 さらに問題なのは、事故原因となった農薬の種類について、農水関連部署ならば、成分を公表するのが常ですが、労働基準局は個人情報の保護を盾に公表を拒んでいることです。
 千葉県の習志野ゴルフクラブの事故は、県の農政部署に情報が挙がったのに、農水省の農薬対策室が、知らなかったことも、考えあわせると、農薬等による健康被害事例についての一元的な情報収集とデータベースの作成・公開が、事故の再発防止のために、ぜひとも必要です。

★北海道庁によるゴルフ場への指導
 北海道のゴルフ場での農薬使用はどのように指導されているか、道庁に尋ねました。回答の要旨を以下に示しますが、08年の事故について、ゴルフ場から報告がなかったのは、指導が十分でなかった証拠です。
【参考サイト】北海道:ゴルフ場農薬対策についてゴルフ場で使用される農薬等に関する環境保全指導要綱
 1)道では、ゴルフ場事業者及びその従業員などを対象とした北海道農薬指導士認定
  研修会を開催し、認定した指導士の活動を通じて農薬の適正・安全使用に係る知
  識の普及、法令等の遵守の指導を行っている。
  ○農薬指導士の認定状況(ゴルフ場関係)
    04年 05年 06年 07年 08年 合計  
     37人  16  18  40  51  162人

 2)90年から「ゴルフ場で使用される農薬等に関する環境保全指導要綱」による指導
  を行っている。要綱では、ゴルフ場事業者に対し、農薬使用責任者の選任、危被
  害の防止措置、水質測定、農薬散布従事者の健康管理などの対応を求めている。

 3)通知「住宅地等における農薬使用については、市町村や関係団体に周知している
  ほか、毎年度開催する北海道農薬指導士認定研修において同通知の遵守を説明し、
  指導士を通じた周知徹底を図っている。
   また、ゴルフ場農薬使用についてのHPを開設し、各ゴルフ場事業者に通知した
  ほか、業界団体から傘下への周知を依頼している。さらに、主旨を記載した啓発
  資料を毎年送付することとしている。
    ゴルフ場防除業者に対しては、ゴルフ場事業者が防除を依頼するときに、法の
  遵守や環境等への配慮について指示を行うこととしている。
   プレイヤー等に対しては、ゴルフ場事業者が実施する環境等への配慮について、
   クラブハウス内の掲示板やホームページにより公表することを推奨しており、
   この各ゴルフ場の公表を通じた周知を図っている。

 4)「指導要綱」においても、農薬の散布に当たっては周辺住民、従業員及び利用者
  並びに動植物に対する十分な危被害の防止対策を講ずることを定め、ゴルフ場事
  業者に取組を求めている。

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作成:2010-06-27