食品汚染・残留農薬にもどる

t22502#農薬は厳しい毒性・残留性試験を経ている、適正に使えば安全」のうそ〜アセフェート使用を止めさせよう#10-05
【関連記事】記事t22401記事t22904 【参考サイト】メタミドホス:農薬評価書
       アセフェート:パブリックコメント募集農薬評価書案

 記事t22401で、食品安全委員会が、アセフェートのADI(一日摂取許容量)を従来の10分の1以下の0.0024mg/kg体重/日として、パブリックコメント募集していることをお知らせしました。すでに、ADI見直しを前に、「かんきつ」(みかんほか)への登録農薬の適用除外を予告して、動き出しているアセフェート製剤メーカー(全農、北興化学、アリスタ、住友化学)に事の次第を問合せました。その回答(住化はなし)をみると、いままで、農薬業界、農水省、食品安全委員会、厚労省が主張していたことが全くの絵空事であることが分りました。

★根拠となる毒性試験は30年前の試験とは
 わたしたちは、今回のアセフェートのADI再評価では、新たな毒性試験結果がでてきたからだろうと思っていました。ところが、『ADI算出のもとになり、最小無毒性量0.24mg/kg体重/日を得たラットの慢性毒性/発がん性毒性試験は、いつ、どの機関で実施されましたか。 そのデータについて、農薬抄録やその他の文献で詳細が公表されていますか。公表されていたら論文等をお示しください。』との問いに、
 メーカーからの回答は
  『アセフェートのADI設定の根拠となった毒性試験は、米国のバイオ/ダイナ
  ミックス社で実施されたラットにおける2年間慢性毒性/発がん性併合試験で、
  1981年に最終報告が取り纏められている。
  本試験の農薬抄録は、現時点では未公開だが、アセフェートの残留基準値が決定
  した後にアセフェートの農薬抄録の一部が公開される予定。本試験の概要につい
  ては、2002年のJMPRのモノグラフで公表されているので、参照されたい。』
 というものでした。
 30年前の毒性試験は、科学的知見や実験設備・装置、解析法などが、現在よりも劣っていたことは確実です。JMPRは、2005年にはADIを0.03mg/kg体重/日と評価しているのです。いままで、この数値が安全の根拠とされてきました。ところがその毒性試験の見直しで、ADIが一気に10の1以下になるいうのは、『農薬は、厳しい毒性試験を実施され、残留基準以下なら安全である』といい続けた業界・行政の主張が口からの出任せだった証しです。
 アセフェートのように、古くから使われている農薬すべてについて、早急な毒性試験データの見直しが必要だということです。
 しかも、その毒性試験が農薬評価書より、詳細に記述されている農薬抄録を公開するのは、厚労省が残留基準を決めてからとは、あきれてものも言えません。
 食品安全委員会のADIに対するパブリックコメント募集で、健康影響評価案の是非を求められているのに、データが掲載されている農薬抄録の公表は、ADIが決まり、その後、厚労省の発する残留基準が決まってからというのは、国民を愚弄したとしかいいようがありません。

★理論最大一日摂取量はかんきつだけで、ADIを超える
『ADI占有率の観点から、「かんきつ」の登録を削除せざるを得ないことがわかったとありますが、その根拠となった内容、「かんきつ」への適用を除外した理由を教えてください。アセフェートの理論最大一日摂取量(TMDI)をお示しください。
 食品別数値とその総計値でお願いします。TMDIはかんきつの登録削除前後で、どのようにかわりますか。数値をお示しください。』という質問への回答は以下です。
 『かんきつの1日当たりの農産物摂取量は、国民栄養調査結果によると、国民平均で
  44.1gです。内訳―中略―
 アセフェートの摂取量の合計(かんきつのみ)は国民平均で220.5μg(=44.1g×
 5ppm:注みかん類の残留基準)となる。一方、 国民平均の体重は53.3kgなので、
 アセフェートADI案から国民平均の1日当りの摂収許容量を計算すると、127.9
 μg(=0.0024mg/kg/日×53.3kg)となる。
 従って、かんきつのみで理論最大1日摂取量(TMDI)がADI案の枠を超え、
 かんきつの登録を削除せざるを得なくなることが判明した。』
 私たちは06年から施行されたポジティブリスト制度実施前から、提案された残留基準案でTMDIがどの程度になるか、明らかにすることを求めましたが、当時は実現しませんでした。
 アセフェートは、ADIが低い値で、TMDIがこれを超えたため、残留基準を変更し、農薬登録の適用作物も削除せざるを得なくなるという、最初のケースです。

★みかんだけでなく、野菜も問題だ
【参考サイト】日本食品化学研究振興財団HPにあるポジティブリスト制度でのアセフェートの残留基準

 フードファクター(食品別の国民平均摂取量)×(残留基準)からアセフェート摂取量を算出することができます。
 アセフェートの残留基準が高い食品については、前号にあげましたが、1食品で、新ADIを超えるのは、かんきつだけではありません。基準5ppm以上の野菜のTMDIを下表に示しました。体重53.3kgの成人なら、アセフェートのADI対応量は0.128mg/日、6歳以下の体重15.8kgの小児なら0.0379mg/日です。
  作物名    国民平均摂取量、 小児平均摂取量
        食品 アセフェート 食品 アセフェート
         g/日  mg/日     g/日 mg/日
  ミカン    41.6  0.208   35.4 0.177
  ハクサイ   29.4  0.147   10.3 0.0515
  トマト     24.3   0.1215   16.9 0.0845
  キャベツ    22.8  0.114    9.8 0.049
  ホウレンソウ 18.7   0.1122   10.1  0.0606
  キュウリ    16.3   0.0815   8.2  0.041
 アセフェートの残留基準の一部が設定され、施行されたのは、表のホウレンソウ以外は、94年4月からで、基準値は5ppmとなっていました、この基準の下で、私たちは、長年、安全なものとして、これらの野菜を食べてきました。生でキャベツやトマトを平均一日当り10gや20gを食べるのは日常的です。その中には、今回の新ADIを超えた摂取もきっとあったことでしょう。
 ADIを超える食品を今後も、食べることがないよう、ミカンだけでなく、表のような野菜へのアセフェート使用は即刻禁止にすべきです。
『アセフェート剤の他の登録作物の見直しは、今後、ADIが決定され、現行の残留基準値が見直しされた後に行う予定。』と答えているメーカーに抗議の声を!

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作成:2010-10-25