残留農薬にもどる
t22504#国産農作物のネオニコチノイド系殺虫剤の残留検出数が増加〜農水省、08年度の農薬使用状況と残留農薬調査#10-05

農水省は、08年度の国内産農作物における農薬の使用状況と残留状況調査結果を公表しました(07年度については記事21504参照)。
【参考サイト】農薬コーナー:残留農薬モニタリングのページにある2008年度の調査結果

★農薬の不適正使用は12件
 調査対象となったのは、コメや野菜、果実など20作物の栽培農家で、総数は4,729戸、その結果、12戸(0.3%)で不適正な農薬使用が認められましたが、違反がみられた作物と違反別件数は表1のようです。不適正農家数は、前年度の15件より少し減って12件ありました。
 作物別で、不適正使用が2件だったのは、ホウレンソウとイチゴ生産者でした。内容の内訳は、使用時期の誤り5、適用外使用4、使用量の誤り3、使用回数の誤り2件でした(重複あり)。
表1 08年度の農薬不適正使用農家数
  (ムギ類189/エダマメ129/ダイコン根270.ハクサイ240/レタス175/ピーマン257/
  ニラ254/リンゴ115/モモ139/ブドウ157各生産者はすべて適正使用)

 作物名     農家数 農薬の総 不適正     不適正使用の内容別農家数
                 使用回数 農家数    適用外 使用量 使用時期 使用回数 

 コメ     371     1918        1          1       0        0        0
ダイズ        192     975    1     0       1        0        0
 サヤインゲン  165    740    1      1       0        0        0
 キャベツ    247    2384    1     1    0     0    0
 イチゴ      237     4956    2      0    1     2    0
 トマト     323   4537    1     0    0    0    1
 キュウリ     315    4313    1     0    0    0    1
 ホウレンソウ  382   1092      2      0    1     2    0
 コマツナ   302    755     1      1    0    0     0
 シュンギク  270    743     1      0    0     1     0
合計      4729    42059      12      4    3     5    2
★農薬検出数は21農作物で延べ1166件
 農作物21種1428検体について、142種の農薬の残留調査が実施されました。ただし、農作物によって、分析対象となった農薬数は異なります。作物別の分析農薬数、検出農薬数などは表2のようで、すべてのの農作物で、なんらかの農薬が検出されました。検出された農薬の種類は69種で、延べ1166検体(複数農薬が検出された例あり)に農薬が残留していました。
 検出数が多いのは、イチゴ155、ニラ134、キュウリ110、トマト107、リンゴ101、ピーマン100、ブドウ95などでした。残留基準を超えたのはありませんでした。

 表2 08年度の農作物別の検体数と分析対象農薬数、延べ検出数 −省略−

★検出率の高い農作物-農薬の組合せ
 検体総数をベースに、単純計算した検出率は、05年度から増加傾向にあり、08年度は81.7%となっていますが、1検体に複数の農薬が残留している例もあるでしょうから、いわゆる検体ベースの検出率は算出できません。
 農作物と農薬の組み合わせで、検出率が50%以上になるものを、最大残留値とともに、表3に示します(1検体しか分析していないものは除く)。検出率が100%だったのは、オオムギのプロピコナゾール、ダイズのプロシミドン、エダマメのシラフルオフェン、イチゴのジフェノコナゾールとボスカリド、コマツナのチアメトキサム(ネオニコチノイドのひとつ)です。ほかにもネオニコ系のジノテフランはコマツナやシュンギク、同じくクロチアニジンはピーマンやニラに80%以上の検出率で見出されているのが目立ちます。殺菌剤クレソキシムメチルのニラでの検出率は90.2%、最大残留値16ppmで、基準が30ppmと高いので、違反とはなりません。
 コメでは、殺菌剤フルトラニルが66.7%の検出率でした。
総じて、野菜ではコマツナ、ピーマン、ニラ、トマト、キュウリ、果実ではイチゴ、リンゴ、モモ、ブドウなどに農薬が残留している率が高いことがわかります。
  表3 検出率50%以上の作物と農薬の組合せ

作物名   農薬名          検体数 検出数 検出範囲ppm  検出率%

オオムギ  プロピコナゾール    2        2     0.04〜0.06   100
ダイズ    プロシミドン        5        5     0.17〜0.22   100
エダマメ   シラフルオフェン    3        3     0.05〜0.1    100
イチゴ    ジフェノコナゾール  3        3     0.03〜0.1    100
イチゴ    ボスカリド          2        2     0.02〜1.5    100
コマツナ   チアメトキサム      2        2     0.05〜0.6    100
ニラ     クレソキシムメチル 51       46     0.03〜16      90.2
コマツナ   ジノテフラン       17       15     0.01〜0.8     88.2
ピーマン   クロチアニジン      7        6     0.01〜0.4     85.7
ニラ     クロチアニジン     26       22     0.006〜1.3    84.6
リンゴ    フェンプロパトリン 23       19     0.03〜0.2     82.6
キュウリ   プロシミドン       30       24     0.04〜0.4     80
シュンギク ジノテフラン       15       12     0.01〜2.1     80
トマト    ボスカリド         13       10     0.01〜0.4     76.9
リンゴ    イプロジオン        4        3     0.07〜0.21    75
ピーマン   プロシミドン       15       11     0.06〜1       73.3
モモ     ビテルタノール     15       11     0.02〜0.07    73.3
イチゴ    プロシミドン       14       10     0.05〜1.3     71.4
ブドウ    イミダクロプリド   20       14     0.02〜0.1     70
エダマメ  エトフェンプロックス19       13     0.03〜0.5     68.4
コメ     フルトラニル        3        2     0.03〜0.4     66.7
ホウレンソウジノテフラン       3        2     0.02〜0.06    66.7
ブドウ    アゾキシストロビン 29       19     0.01〜0.28    65.5
ホウレンソウ
          フルフェノクスロン  17       11     0.02〜0.6     64.7
リンゴ    ジノテフラン       17       11     0.01〜0.05    64.7
ニラ     アゾキシストロビン 22       14     0.01〜1       63.7
コマツナ   シアゾファミド     13        8     0.04〜0.37    61.5
リンゴ    アセタミプリド     36       22     0.01〜0.08    61.1
キュウリ   クロルフェナピル   26       15     0.01〜0.07    57.7
ニラ     フルジオキソニル   14        8     0.013〜0.62   57.1
モモ     クロチアニジン      9        5     0.01〜0.04    55.6
ピーマン   ジノテフラン       20       11     0.03〜0.8     55
シュンギク フルフェノクスロン 46       25     0.02〜2.1     54.3
エダマメ   アセタミプリド      4        2     0.02〜0.03    50
エダマメ  フェンピロキシメート 6        3     0.02〜0.08    50
ダイコン根 ジノテフラン        4        2     0.01〜0.03    50
ダイコン根 ホスチアゼート      4        2     0.06〜0.07    50
ハクサイ  トラロメトリン      2        1     0.02          50
レタス    フルバリネート      2        1     0.01          50
イチゴ    フルバリネート      4        2     0.08〜0.11    50
キュウリ   チアクロプリド      2        1     0.09          50
キュウリ   トリクロルホン      4        2     0.06〜0.2     50
キュウリ   ピリダベン          2        1     0.03          50
ホウレンソウテフルベンズロン   2        1     0.8           50
ニラ     イミダクロプリド    2        1     0.02          50
コマツナ   フルフェノクスロン 14        7     0.13〜0.55    50
リンゴ    クロルフェナピル    2        1     0.03          50
リンゴ    フルバリネート      2        1     0.06          50
リンゴ    ボスカリド          2        1     0.03          50
ブドウ    クロルフェナピル   16        8     0.01〜0.09    50
★検出数が多いのはアセタミプリド
 農薬別の検出数(検出された作物の種類数と検出検体数)及び最大検出値を示した農作物のリストを表4に示しました。
検出数が多い農薬はアセタミプリド132、ジノテフラン94、クレソキシムメチル92、アゾキシストロビン 65の順でした。検出値が高いのは、シュンギクのホセチル32.8ppmが最も高く、ついで、ニラのクレソキシムメチル16ppm、ホウレンソウのシアゾファミド8.5ppmでした。野菜では、シュンギク、ホウレンソウ、ニラ、ピーマンに、果実ではイチゴ、ブドウに高い数値が目立ちました。
表4 農薬別の検出数(作物の種類数と検出検体数)と最大検出作物(数値は検出値ppm)

農薬名        検出数   最大検出作物     農薬名        検出数   最大検出作物
アクリナトリン        2種: 4  イチゴ:0.08         トリクロルホン(DEP)   3種: 4  キュウリ:0.2
アセタミプリド       12種:132  シュンギク:2         トリフルミゾール      3種: 6  イチゴ:0.14
アセフェート          7種: 21  ブドウ:0.82          トリフロキシストロビン1種:  9  リンゴ:0.2
アゾキシストロビン    9種: 65   イチゴ/ニラ:1        トルクロホスメチル    1種: 1  レタス:0.03
イプロジオン          7種: 22   ピーマン:2.5         トルフェンピラド      2種: 3   トマト:0.2
イミダクロプリド      9種: 31   ホウレンソウ:2       ビテルタノール        2種: 24   イチゴ:0.55
エトキサゾール        1種:  3   イチゴ:0.3           ビフェントリン        1種: 1  ブドウ:0.01
エトフェンプロックス  5種: 20  エダマメ             ピリダベン            3種: 4  ピーマン:0.09
                             /サヤインゲン:0.5       ピリダリル            4種: 18   ピーマン:0.3
オキソリニック酸      2種:  3   ハクサイ:2           ピリミホスメチル      1種: 3  コマツナ:0.07
キャプタン            4種: 14   リンゴ:0.19         フェニトロチオン(MEP) 3種: 4  エダマメ:0.07
クレソキシムメチル    7種: 92  ニラ:16                フェノブカルブ(BPMC)  2種: 2  ピーマン:0.1
クロチアニジン        8種: 48   ニラ:1.3             フェンバレレート      1種: 1  レタス:0.36
クロルピリホス        1種:  9   リンゴ:0.02          フェンピロキシメート  5種: 9  サヤインゲン:0.15
クロルフェナピル      7種: 45  ピーマン:0.3         フェンプロパトリン    1種: 19   リンゴ:0.2
クロルフルアズロン    1種: 1  ピーマン:0.05        フルジオキソニル      6種: 40  サヤインゲン:0.7
クロロタロニル(TPN)   6種: 44   ピーマン:0.6         フルトラニル          1種: 2  コメ:0.4
シアゾファミド        5種: 17   ホウレンソウ:8.5     フルバリネート        4種: 5  イチゴ:0.11
シプロジニル          2種: 8  ブドウ:0.3       フルフェノクスロン    7種: 53   シュンギク:2.1
シペルメトリン        5種: 38  コマツナ:1.2         フルベンジアミド      4種: 10   ハクサイ:0.07
シモキサニル          1種:  1   トマト:0.02         ブプロフェジン        1種: 2  トマト:0.1
シラフルオフェン      1種: 3  ダイズ:0.1           プロシミドン          6種: 53   イチゴ:1.3
ジノテフラン         13種: 94   シュンギク:2.1         プロピコナゾール      2種:  7 コムギ/オオムギ:0.06
ジフェノコナゾール    2種:  4   イチゴ/トマト:0.1    ヘキシチアゾクス      1種:  2  イチゴ:0.04
ジメトエート          1種: 1  ニラ:0.2             ペルメトリン          7種: 12  ピーマン:0.24
スピノサド           5種: 11  ニラ:0.4               ホスチアゼート        2種: 5  ダイコン根:0.07
ダイアジノン          1種: 1   ホウレンソウ:0.04    ホセチル              1種: 1  シュンギク;32.8
チアクロプリド        6種: 15  イチゴ:1             ボスカリド            4種: 14   イチゴ:1.5
チアメトキサム       5種:  7   コマツナ:0.6         ミクロブタニル        2種: 16   イチゴ:0.27
テトラジホン          1種:  1   イチゴ:0.09          メソミル              5種:  9   モモ:0.08
テフルトリン          1種: 2  コマツナ:0.05        メタミドホス**        6種: 21  エダマメ/ハクサイ/
テフルベンズロン      5種: 5  ホウレンソウ:0.8                                     ブドウ:0.2
テブフェンピラド      1種: 13   イチゴ:0.09         メタラキシル          4種: 14   コマツナ:0.3
トラロメトリン        2種: 3  ハクサイ:0.02        メプロニル            1種:  1   コメ:0.05
トリアジメノール*     1種: 4  ニラ:0.5             ルフェヌロン          2種:  7   イチゴ/トマト:0.04
トリアジメホン        2種: 2  キュウリ:0.03    * トリアジメホンの代謝物    ** アセフェートの代謝物

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作成:2010-12-25