環境汚染にもどる

t22602#農薬によるミツバチ被害〜都道府県アンケート調査と畜産草地研調査結果より(その2)養蜂業者と農薬使用者の連携でミツバチ被害は防げるか#10-06

【脱農薬ミニノート】2号:ミツバチは農薬が嫌い
【参考サイト】農水省・厚労省の通知:2010年度農薬危害防止運動の実施について
       農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所:4月13日プレスリリース調査研究報告書
       日本養蜂はちみつ協会

 その1で、紹介した都道府県アンケートには、その後、茨城県からも回答があり、結局、未回答は宮城県のみになりました。
 アンケート結果などを踏まえ、ミツバチ被害がおこる背景について、いくつかの検証をしてみたいと思います。

★検証1:ミツバチ被害状況はただしく把握されているか
 表には、農水省調べによる都道府県別の養蜂業者数と群数(09年1月1日現在)及び日本養蜂やちみつ協会の調べによる農薬被害件数を示しました。
 09年の養蜂業者数は約5千、蜂群数は約17万で、業者の多くは、蜜源を求めて、全国各地を転飼します。延べ数で約2600の業者(蜂群数でいえば、約13万群)が県外へ転飼しています。転飼の受け入れが多いのは、北海道3万7千群を筆頭に、いずれ約1万群レベルで秋田県、鹿児島県、青森県、千葉県がつづきます。
 都道府県別の農薬によるミツバチ被害件数は、08年183業者1万1659群、09年301業者1万1553群で、前号の畜産草地研の報告より多くなっており、09年の被害を受けた蜂群の比率は約7%ということになります。
 08年と09年の合計で、県別の被害業者数の多いのは、長崎83、愛媛60、和歌山47、北海道54、岩手38の順です。また、被害群数の多いのは 北海道5938、和歌山2068、長崎2015、岩手1956、栃木1300、三重1050の順です。原因となった農薬は不明ですが、表の備考欄には、散布状況や散布対象となった作物名などを記しました。稲やみかんが多いことがわかります。ゴルフ場での散布や空中散布による被害もあります。また、転飼先で被害にあった事例もあります。
 いままで示した3つのミツバチ統計をみても、三者三様で、被害実態がただしく把握されているとはいえません。農薬による被害を確定するには、どのような農薬を、どのような場所で、どのような方法で、いつ使用し、ミツバチは、いつ、どのような被害を受けたかを詳細に調べる必要があるように思います。

  表 都道府県別の養蜂状況と農薬によるミツバチ被害状況 −省略−

★検証2:養蜂業者と農薬使用者の連携を密にする
 今年度の農薬危害防止運動の実施要綱には、ミツバチ被害防止のため『昨今、減少が問題とされているみつばちについては、その原因は特定されていないものの、農薬も原因の一つであると考えられていることを考慮し、養ほう関係者や農薬使用者、農業団体等が緊密に連携し、農薬使用に際しては事前に農薬使用予定の情報提供を行う等、これまで以上に取組みを強化するよう指導する。』とし、05年夏、岩手県でのミツバチ被害を踏まえ、同年9月12日に発出した通知「みつばちへの危害防止に係る関係機関の連携の強化等について」等を参照することになっています。
 このことは、都道府県アンケート調査の結果とも一致します。
   回答のあった46都道府県すべてで、農薬散布についての情報交換・関係者の連携が謳われています。しかし、具体的な内容には、温度差があり、農薬危害防止運動の一環としての取り組みで、研修会や講習会を通じて、指導するところもあれば、県独自で、被害防止のための連携強化の文書をだしているところもあります。稲や果樹栽培における農薬使用者や、高濃度で広い範囲で農薬を散布する有人ヘリコプター及び無人ヘリコプターによる空中散布実施者に、特に注意喚起を求めている県もあります。
 最初にミツバチ被害が問題となった岩手県の「農薬によるミツバチへの養蜂危被害防止対策」では、養蜂家・養蜂組合の取組みとして 周辺農家への巣箱位置の周知などが、生産者・農協の取組みとして、害虫防除内容(散布地域、散布日、農薬の種類等)の情報提供 が挙がっています。
 被害ミツバチの農薬分析を行いジノテフランを検出した長野県では、「みつばち危害対策連絡会(地方事務所農政課、市町村、農業改良普及センター、JA、農薬使用者、養蜂業者からなる)」を開催し、農薬使用上の注意喚起を有線放送や広報紙、チラシ、ホームページ、ケーブルTV等で行って、農薬散布情報を周知するとともに、養蜂業者には、飼育場所情報を伝達し、蜂場マップの作成するよう、との通知文書が出されています。
 長崎県では、「ミツバチ等有用昆虫に影響を及ぼす恐れのある農薬の使用に関する指導の徹底について」という文書で、『農薬を使用する場合は、使用地域内の養蜂業者と連絡、協議する。』として、飼育業者や転飼業者の一覧表が添付されています。
 農水省や都道府県の指導方針の骨子は、ミツバチに有害な農薬を使用規制するのではなく、ミツバチの飼育・活動範囲で農薬に曝されないようにすればいいということであり、不適切な使用のため、農薬による健康被害や残留基準違反は起こっていることに対し、農薬は有害だが、適正に使用すれば安全だと、いい続けている行政・農薬業界・農業団体の主張と共通するものです。
 蜂箱を農薬散布区域に置かない、ハチが活動する時間に農薬を散布しない などの注意はミツバチが直接農薬に被曝しなければ、被害が防げるとの大前提にたっていますが、このような考えだけで、ミツバチ被害が防止できないことは、養蜂群の約7%が被害を受けていることで明らかです。


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作成:2010-11-25