環境汚染にもどる

t22604#ネオニコチノイド系農薬の食品残留と水系汚染#10-06
【関連記事】、記事t22207
【参考サイト】国会会議録検索システム 参議院環境委員会(10年4月27日)、加藤修一議員の質疑(126番から158番まで)

 ネオニコチノイド系(以下、ネオニコ系)のアセタミプリドを含むマツグリーンは、04年、群馬県での松枯れ対策の地上散布後、周辺住民に健康被害を起こしました(本誌155号参照:環境病患者会のHP)。
 また、225号で紹介したように、クロチアニジンによるミツバチ被害が問題となっています。さらに、記事t21708のQ&Aでとりあげた茶葉のように残留基準の高いケースがある上、農水省の残留実態調査では、シュンギクにアセタミプリドやジノテフランが、ホウレンソウにイミダクロプリドが、ニラにクロチアニジンが、イチゴにチアクロプリドが1〜2.1ppm見出されていました(記事t22501)。
 4月27日の参議院環境委員会で、加藤修一議員が、ネオニコ系農薬について質問しましたが、この時、議論された内容に関連した資料を厚労省から得ましたので、紹介します。

★輸入食品中の残留調査
 国会質疑では、09年度の輸入食品違反は、アセタミプリドについては検査数7115件で2件、イミダクロプリドについては、9524件で5例ということでしたが、今回の5月の資料では速報値ということで、違反数が19と増えています。違反にある種実は、アセタミプリドのピスタチオナッツ、イミダクロプリドのカカオ豆やゴマ、ジノテフランの果実はバナナでした。
 表1には、08年と09年の農薬別の検出率、検出範囲を示しました。検出範囲の数値のあとに括弧で記したのは、最高数値が検出された食品の種類名です。いままで、厚労省が輸入食品監視で公表してきたのは、残留基準違反したものに限られており、基準を超えないものについての情報は不明でした。今回、産地別、作物別の検出値は明らかになっていませんが、食品の種類別で検出された範囲が示されたのは、一歩前進です。

   表1 輸入食品のネオニコ系残留農薬検査結果 −省略−

 今後は、厚労省の輸入食品監視支援システムのデータベースの公開を求めていく必要があります。
 ネオニコ系で、1〜5%台の検出率で見出されたのは、08年でアセタミプリド、イミダクロプリド、ジノテフラン、09年はこれら3農薬のほかチアメトキサムが加わりました。 検出値で高かったのは、09年の野菜のジノテフランで5ppm、ついで、08年の野菜のイミダクロプリド1.79ppm、09年の茶のチアメトキサム1.0ppmでした。野菜類や茶の残留基準が高く設定されているため、違反はなくとも、高濃度の食品を口にしている一端がうかがわれます。

★ネオニコ系の一日摂取量
厚労省が取りまとめている農薬の一日摂取量は、マーケットバスケット方式*によるもので、表2のような結果でした。表の数値は、体重50kgの人に対する数値で、( )内は、ADIに対する比率%です。摂取量が多いのは、アセタミプリドで、99年には、19.6μg(対ADI比0.59%)ありました。
*:14の食品群別に国民平均摂取量の食品を入手し、調理すべきは調理し、食品群ごとに残留農薬調査を実施する
表2 ネオニコチノイド系農薬の一日摂取量(単位:μg/50kg体重/日、( )内は%)

 年度        1999    2005    2006    2007     2008
アセタミプリド  19.63(0.59)  −    2.42(0.07) 9.79(0.27)  4.80(0.14)
イミダクロプリド   −   7.05(0.25)   −    2.39(0.08)  2.16(0.08)
クロチアニジン       −      3.63(0.07)    −       4.02(0.08)   1.62(0.03)
ジノテフラン       −       3.65(0.03)   −    −     −
チアクロプリド     −       5.38(0.90)  0.95(0.16)  2.37(0.40)   2.11(0.35)
チアメトキサム    −        3.65(0.41)      −      2.84(0.32)   2.15(0.24)
★残留農薬調査結果の発表
 厚労省が、いままで公表してきた地方衛生研究所などでの残留分析を集大成した報告書「食品中の残留農薬」は2008年12月に、04年度のものがホームページにアップされた以後みられません。
 このことについての厚労省の言い訳は、公表に向け取りまとめ作業中だが、ポジティブリスト制度の導入により、集計区分が変更になった上、電算処理業者の入力ミス・集計ミスが判明して、チェックに時間がかかっているとのことです。

★ネオニコの水系汚染が明らかに
 厚労省の資料によると、同省の厚生労働科学研究費補助金を用いた「飲料水の水質リスク管理に関する統合研究」の一環として実施された河川水の調査では、表3のような結果がでています。この研究の2008年度の報告では、イミダクロプリドの検出率が河川水78.8%、水道原水32.7%でした。
 2009年度の調査で、測定したのは、横浜市内を流れる鶴見川の河川水で、09年5月から10月に、7個所で採取されました。イミダクロプリドの最高値は、寺家の0.418μg/L(7月13日)、アセタミプリドの最高値は千代橋の0.062μg/L(6月15日)、チアクロプリドは亀の子橋のみで検出され、その最大値は0.18μg/L(5月25日)でした。この川は、東京都町田市や神奈川県川崎市、横浜市を流れる都市河川ですが、流域には水田、畑、果樹園などがあり、イミダクロプリドについては、周辺の水田からの流入が考えられます。0.418μg/Lという数値は、過去に問題となった水田除草剤CNPの汚染を思い起こさせる高い数値です。
 横浜市環境科学研究所の研究者は、鶴見川流域の農薬調査を継続的に実施していますが、平成19年度の調査結果(07年4月から08年3月採取、80農薬対象)では、DDVP、MEP、MPP、IBP、エスプロカルブ、モリネート、メフェナセットなど26種の農薬が検出されていました。ただし、ネオニコ系は分析対象になっていないので不明です。

★水道原水からも検出された
 厚労省の上記の研究では、奈良県水道局福岡県南広域水道企業団における水道原水と浄水についてのイミダクロプリドの調査が実施されています。
 奈良県の場合は、桜井浄水場の原水(室生ダム)で、09年3月9日から10月27日に、30回の採水が行われました。原水の最大検出値は7月22日と28日で、0.06μg/Lでしたが、浄水場での処理後には、ND=検出限界以下となり、蛇口水には検出されなくなっています。
福岡県の場合も、同じ傾向で、荒木浄水場の原水(筑後川)の3月10日から11月17日の14回の採水で、6月22日に最大値0.14μg/Lが検出され、浄水ではNDとなりました。
ネオニコ系の水系調査では、底質も含め、河川水について、もっと検体数を増やして、汚染状況を明確にすべきであり、水道水については、塩素処理等による化学反応生成物の研究も必要です。
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作成:2010-11-25