環境汚染にもどる
t22805#またぞろ有機塩素系薬剤が問題に〜ケルセンとパラジクロロベンゼン#10-08
04年に回収されていたはずの販売禁止農薬ジコホール(商品名:ケルセン)が今年4月、神奈川県で依然として使用されていたかと思ったら、02年に、ダイオキシン類含有が問題になった防虫剤・トイレ消臭剤パラジクロロベンゼンに光を照てると、新たにPCB(ポリ塩化ビフェニル)が生成することがわかった、とのことです。幽霊のように、有機塩素系物質がまたぞろ現れるのは、夏に相応しい話題でしょうか。
その1:ケルセン=ジコホールをトマトに使用〜神奈川県で発覚
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【参考サイト】神奈川県;7月3日記者発表資料
農水省:販売が禁止されている農薬の使用禁止の周知及び適正処理の徹底について(8/04)
今年の4月から農薬取締法で販売禁止農薬になった有機塩素系のジコホール(商品名ケルセン)がトマトに使用されていたことが、神奈川県の7月3日の立入調査で判りました。
きっかけは、横浜市保健所の収去検査で、トマトに0.08ppmのジコホールが検出されたことです。残留値は基準以下でしたが、神奈川県は、農薬取締法の使用基準違反の疑いで、JA神奈川県中央会に連絡して、調査を依頼しました。その結果、出荷元のJAさがみ湘南トマト茅ヶ崎出荷組合の1農家が、4月19日に、ケルセンを使用したことが判明しました。県は、調査の結果、当該農家に悪質性が認められないとして、農薬取締法に基づく告発は見送る方針です。
この農薬は、04年3月にメーカーのダウ・ケミカル日本らから製造中止届がだされ、自主回収が行われました。当時、私たちは、農水省に対して、行政責任で同剤を回収するよう求めましたが、メーカーが実施しているから行政はやらないとのことでした。また、05年に化審法で、「第一種特定化学物質」に指定された際にも、販売禁止農薬にすべきだとの要望を送りましたが、これも拒否され、結局、今年の4月まで実現しなかった経緯があります。このような行政姿勢が違法使用につながったと思います。
私たちは、メーカーの自主回収に応じず、ケルセンを保管し続け、なおかつ、有効期限を過ぎた農薬を使用した生産者がいたことを重くみて、農水省に対して、メーカーや販売業者に回収を指示するよう申し入れました。
その2:衣料防虫剤・トイレ消臭剤パラジクから光反応でPCB生成
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【電子版資料集】第8号 ダイオキシン含有農薬とPOPs系農薬
【参考サイト】エステーのお知らせ、白元のお知らせ
日本繊維製品防虫剤工業会
パラジクロロベンゼン(以下、パラジク)については、衣料防虫剤やトイレ消臭剤として、身の回りで使われ、その悪臭故に、毎年のように、主に化学物質過敏症の方から当グループに相談があります(記事t20507、記事t21208)。
ところが、昨年12月、メーカーのエステー株式会社と株式会社白元が新たな問題点が生じたことをHPで公表しました。その要旨は、
@原材料メーカーから、パラジクは光が当たると微量のPCBが生成
するという報告を受けた。
A工業会で、製品分析して、確認した。
B通常の使用において、その量は微量で、人の健康と環境に影響する
おそれのない数値であることが、第三者専門機関で確認された。
C安心して使用してもらえるようPCBの生成をさらに抑制するため、
光の遮断効果を上げた仕様への変更などをすすめる。
というものです。
私たちは、早速、前記2メーカーと日本繊維製品防虫剤工業会にどのような条件で、パラジクから、どのようなPCBがどの程度生成するか、ダイオキシン類のひとつコプラナーPCBはできないかなど24項目の問合せました。
その回答は後述するよう身のないもので、現在、所管の厚労省へ問合せ中です。
その前に、パラジク中に不純物としてダイオキシン類が検出された経緯にふれておきます。
★パラジク中のダイオキシン類検出の経緯
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1999年、環境省の調査で、有明海の海水に高い濃度のダイオキシン類が検出され、その原因を追及した結果、大牟田川水系にある三井化学大牟田工場の塩素化ベンゼンプラントが汚染源の元凶とされました。ここでは、パラジクなどが製造されていました。
2001年1月、私たち市民団体は、身の回りで使用されているオルトジクロロベンゼンやパラジクにダイオキシン類が含有されていることを懸念し、厚労省に製品調査を申し入れました。しかし、同省は独自の分析調査を実施せず、防虫剤工業会に調査を指導しただけでした。
その後、原体及び製剤メーカーが公表した分析結果では、コプラナーPCBを含むダイオキシン類はすべて、検出限界以下でした。
2002年の東京都の分析ではパラジク含有防虫剤と防臭剤にダイオキシン類が検出されています。さらに、同年、日本繊維製品防虫剤工業会は、会員会社のパラジク製品のひとつからコプラナーPCBが90pg/g検出されたと報告しています。
また、2002年には、市民団体がダイオキシン類調査を実施した結果、ダイオキシンとジベンゾフラン及びコプラナーPCBの合計値は0.011 から0.99pgTEQ/g(実測値で0.96から130pg/g)でした。
エステー社の ネオパラエースから、ダイオキシンとジベンゾフラン類が合計で0.09pgTEQ/g(実測値2.6pg/g)が検出されました。
白元社のパラゾールから、PCBが0.011pgTEQ/g(実測値110pg/g)が検出されました。
★まともに答えない業界〜蛍光灯照射でPCB-31が生成したとだけ
PCB生成について、日本繊維製品防虫工業会が、メーカーを代表する形で、答えてきました。その要旨は以下のようです。
@パラジク製の防虫剤(含む防臭剤)を分析し、微量のPCBの存在を確認した。
A防虫剤等に蛍光灯の光を照射することにより、PCBの生成を確認する試験を
実施した。その結果、生成するPCBは、PCB-31(2,4',5トリクロロビフェニル)
がほとんどであると判明した。(化学構造は右図参照)
B試験により得られた結果を基に、化学物質評価研究機構安全性評価技術研究所に
てリスク評価をおこなった。
ワーストケースのPCB-31の生成量を推算し、環境中の水生生物および一般環境中
のヒト健康に対するリスクは問題とならないレベルであると確認された。
CPCBの生成を抑制するために包装材料の光透過率を減衰させる対応を会員各社
に指導し、すでに対応している。
でした。
そして、最後に『いただきましたご質問のうち、企業情報につきましてはお答えいたしかねますことご理解いただきたく存じます。』とありました。
PCBの生成量がどの程度か、コプラナーPCBは生成しなかったのか、リスク評価でヒトや環境に影響ないと結論づけた理由はなにか、遮光効果で、どの程度PCB生成は減ったか、室内空気や水系を汚染しているパラジクが光反応によりPCB化しないかなど、私たちが知りたい基本的な疑問に全く答えてくれない業界の態度は、消費者をないがしろするものだと思いました。
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作成:2010-11-25