農薬の毒性・健康被害にもどる
t23105#農薬による事件・事故〜住友化学農薬工場事故で死者も。厚労省人口動態統計による死亡08年は523人#10-11
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★人口動態統計では死亡者数は減少傾向
【関連記事】記事t21402(2007年度厚労省統計)、記事t21901(2008年度農水省統計)
厚生労働省の人口動態統計によると、農薬関連の死亡者数は、05年637人、06年635人、07年547人と減る傾向にあり、08年は前年24人減の523人となっています。その大半は自殺者です。表に示すように、農薬の種類別で、除草剤・殺菌剤によるものが47人減りました。逆に、有機リン・カーバメート系殺虫剤によるものが19人増ふえて、196人となっていますが、この統計では、農薬成分名は不明です。
表 08年厚労省人口動態統計による
農薬種類別死亡者数
農薬の種類 08年死亡者数 前年
男 女 小計 増減
殺 有機リンと
虫 カーバメート系 127 69 196 +19
剤 有機塩素系 2 1 3 -2
その他 12 9 21 -9
除草剤・殺菌剤 94 92 186 -47
殺鼠剤 1 1 2 +1
その他の剤 4 4 8 0
不明 67 40 107 +14
合 計 307 216 523 -24
★除草剤による枯死事件
【参考サイト】金沢河川国道事務所:街路樹アメリカフウの衰弱は除草剤が原因と伐採します(7/22)
10年3月に、山梨県南アルプス市の果樹畑で高級スモモの木13本が枯死しているのが見つかりましたが、何者かが木にドリルで穴を開け、除草剤をいれたためとみられています。4月にも14本の被害がみつかり、いままでの被害は1千万円以上と見込まれ、南アルプス署が器物損壊事件として調べているとのことです。
また、09年6月、何者かによって除草剤グリホサートを撒かれて、樹勢が衰えていた金沢市の国道159号のアメリカフウ街路樹は、回復が見込めず、本年7月下旬に8本が伐採されました。
★石灰硫黄剤は指定なし、D-Dは劇物に
硫化水素自殺にも使われた石灰硫黄合剤のメーカー各社は、2月17日、500mL容器入り製剤の生産を中止(18L缶は継続)、通販・ネットによる販売自粛を業者に求める通知を発出しました。しかし、3月開催の厚労省「薬事・食品衛生審議会 毒物劇物部会」での審議で、毒劇法による同剤の「劇物」指定は見送られました(なお、D−Dが新たに「劇物」相当とされた)。
【参考サイト】ダウアグロサイエンス日本:Top Page、テロンの登録内容とMSDS、旭D-Dの登録内容とMSDS
D-D剤の劇物指定について (2010/12/31)、D-D 剤 劇物指定に関するよく聞かれる質問(FAQ)
★河川汚染〜千曲市更級川で農薬による白濁
【参考サイト】神奈川県:酒匂川(山北町向原)における魚の死亡について(6/28)
3月20日には、 長野県千曲市にある更級川で河川水が白濁しているのが見つかり、下流にある長野市清野浄水場の取水が一時停止されました。付近の果樹園等で使用された石灰硫黄合剤の投棄が疑われています。長野県では、春先になると、農薬による水質汚濁事故が多発するため、農薬の適正な使用・洗浄・処分を呼びかけていますが、事故をなくすことは出来ていません。
ほかにも、農薬が原因と思われる河川汚染が2件ありました。6月28日に神奈川県山北町の酒匂川でアユやオイカワが約100匹死亡しているのがみつかり、河川水にメチダチオンが1.7μg/L検出されています。9月24日に、山形市内の水路「八ヶ郷堰」で、河川水が白濁し、フナやザリガニ等が死んでいるのがみつかりました。報道によれば、殺虫剤臭がしたということですが、市の検査では異常はなかったということです。
★イハラケミカル静岡工場の爆発で通行人負傷
【参考サイト】イハラケミカルのHPにある
タンク破損事故発生についてのお知らせ(お詫び)と続報(3/19)
リン酸廃液タンク爆発事故報告書(10/07)
3月18日 静岡県富士市にあるイハラケミカルの農薬工場の廃液燃焼設備で爆発事故がありました。会社の説明によると、リン酸廃水をためておくタンクが、爆発破損し、タンクの一部は約35メートル先にある市道脇の従業員用駐車場に落下、自動車16台が被害を受けた上、市道の陥没、街路樹の破損のほか、爆発の粉塵が付近を歩いていた女性の眼に入って病院で措置を受けたとのことです。
同社による事故調査の中間報告が、10月7日に公表されましたが。原因については『当該タンク内のリン酸廃液に溶け込んでいたトルエン等の油分(可燃物)が蒸発し、空気中の酸素(支燃物)との爆発混合気体(トルエンの爆発範囲:1.2〜7.1容積%)を形成するとともに、発生した静電気エネルギーによって引き起こされたものと推定されます。』 と述べられています。会社は、タンク内が爆発雰囲気になる可能性はないと判断して、放爆構造にしていませんでした。
★住友化学三沢工場で死亡事故
【参考サイト】住友化学のHPにある三沢工場におけるタンク破裂事故発生について(9/24)
9月24日、青森県三沢市にある住友化学三沢工場のタンクで爆発事故がおこり、溶接作業中の関連会社の従業員が吹き飛ばされ死亡しました。同工場ではピレスロイド系殺虫剤を製造しており、報道によるとその原料である3−メチル-2−ブテニルアセテートのタンクを補修中だったということです。住友化学に原因を問合せたところ、『事故の原因や対策などにつきましては弊社としても調査・検討を進めておりますが、警察・消防の捜査がまだ継続しておりますので、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。』とのことでした。
このほか、農薬や塩素関連の事件・事故として、報道されたものは以下のようです。
・06/17 山梨県中央市のJA中巨摩東部忍経済センターの倉庫で火災が発生、
殺虫剤クロルピクリンが保管されていたため、周辺で一時立ち入り
規制がとられました。
・06/16 鹿児島県の宿泊温泉施設「鹿屋市交流センター・湯遊ランドあいら」
で、消毒作業中の職員2人が発生したガス(塩素と思われる)で、気分
が悪くなり病院へ搬送されたました。
・07/07 熊本市小国町で、4世帯が使用している井戸水に有機リン系殺虫剤が
投入されましたが、異常に気づいたため、人の被害はありませんでし
た。その後、犯人が逮捕されました。
・07/15 静岡県浜松市で、ペットの犬が死亡しました。ちくわに青い着色がみ
られ、毒物混入が疑われていますが、物質名は不明です。
・09/02 岐阜市の早田川に300匹の魚が浮かびましたが、明郷中学校から塩素系
消毒剤を投入したプールの排水が流入したのが原因でした。
・09/22 大分県の臼杵市の籠(かご)の瀬浄水場」で、消毒用の次亜塩素酸タ
ンクに誤って希硫酸を投入したため、塩素ガスが発生、職員ら4人が
眼やのどの痛みを訴えました。
・09/25 大阪の府立高校で、教諭が作ったゴキブリ駆除用ほう酸団子を、クッ
キーといわれて手渡された生徒がこれを食べ、胃洗浄を受けました。
・10/15 神戸市で、飼い犬が道に落ちていた青く変色していたちくわを食べ、
痙攣を起こしましたが、メソミルが検出されました。
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作成:2011-02-25