食品汚染・残留農薬にもどる
t23202#農薬「フルジオキソニル」が食品添加物にもなったわけ〜消費者の利益を守る行政はなし#10-12
【関連記事】記事t23004、記事t23203
【参考サイト】厚生労働省:フルジオキソニル残留基準パブリックコメント募集と当グループ意見
食品添加物パブコメ募集と当グループ意見及び厚労省見解と
薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会議事録(12月22日)
消費者庁:Top Page
消費者委員会:Top Page、会議資料
第4回 食品表示部会(10月4日)(配布資料あり)
果実の防かび剤フルジオキソニルが新たに食品添加物として指定されようとしています。消費者庁、消費者委員会は指定された後の表示に限って審議したため、消費者の利益のためにあるべき消費者庁、消費者委員会が役割を果たしていないと、当グループを始めとする14団体が関係行政に質問と要望を出しました。(記事t23004参照)
11月22日に、岡崎消費者庁担当大臣と消費者庁消費者安全課が回答しました。その内容と食品添加物指定の問題点を報告します。
★厚労省の審議会では反対意見なし
フルジオキソニルは、農薬メーカーであるシンジェンタ・ジャパンが厚労大臣に食品添加物としての指定を申請し、厚労省は08年11月に食品安全委員会(以下「食案委」)に健康影響評価を要請。食案委は最終的に09年7月に厚労大臣に「ADIを0.33mg/kg/体重/日と設定する」と通知しました。
その前、6月24日に厚労省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会が開かれ、フルジオキソニルの新規指定の可否について審議が行われました。この分科会は15人の委員で構成され、すべて専門家です。ここでは、主に食案委の農薬評価書案の説明がなされ、農薬と添加物の基準が同じであること、摂取量の対ADI比も少ないため問題ないなどが説明されました。
また、諸外国では農薬として扱われているが、アメリカでは2004年頃ポストハーベスト使用が認められ、バナナや柑橘類以外にも使用されている。日本では防かび殺菌剤でポストハーベスト処理された食品はその薬剤に食品添加物認可がなければ輸入できないため、輸入できるように申請がなされたのだという説明もありました。70カ国以上の国がフルジオキソニルを使用しているといいますが、それらは栽培中の使用であり、収穫後に使われるのはアメリカだけということになります。
アメリカの果物を輸入するために、日本の消費者に新しい食品添加物を食べさせようとしているのに、この部会の先生方は、その点には一言も触れませんでした。食品添加物の新たな指定には、安全性の確認と同時に、必要かどうかを審議したうえで、総量規制や予防原則を考えて、認めるかどうか検討しなければなりません。1972年国会付帯決議には「食品添加物は、極力その使用を規制すべきである」と書かれています。しかし、この部会では必要性について何も吟味されないままフルジオキソニルの新規食品添加物指定を認めました。
これを受けて、厚労省薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会が10年10月8日に開かれました。添加物分科会の上の分科会になります。この分科会の委員は20名で、消費者らしい人は2人、全国消費者団体連絡会事務局長の阿南久さんと日本生活協同組合連合会の山内明子さんです。(生協は消費者団体というより企業と位置づけた方が適切と思われます。)山内さんはいっさい発言していません。阿南さんは質問はしていますが、フルジオキソニルが食品添加物指定されるのに反対はしていません。誰も反対しないため、新規指定は、ここでも一回の審議で決まってしまいました。アリバイ的に審議しただけとも言えます。
★消費者庁、消費者委員会は表示のみ審議
厚労省の審議会で新たな食品添加物が必要かどうかの議論は一切なされず、簡単に指定が決まり、厚労省はWTOに事前意図公告として、フルジオキソニルを食品添加物として指定するので意見はないかと聞いています。その後、農薬として使用されているフルジオキソニルの残留基準の改定(食品添加物の規格に合わせるため、従来の残留基準を引き上げた)と食品添加物指定に関するパブコメを始めました。
パブコメが終了してない9月30日に、消費者庁は消費者委員会にフルジオキソニルの表示に関する審議をするよう諮問し、消費者委員会は食品表示部会にかけました。この部会では、部会長が表示以外の、食品添加物の安全性や必要性などについては、一切、議論してはいけないと委員の発言を妨げ、はっきりと反対の意見が出されているにもかかわらず、採決もせず、うやむやのうちに、諮問通りに決定されたとしました。
消費者委員会は、消費者庁も含めた関係省庁の消費者行政全般に対して監視機能を有するとされているのに、その機能は実に不十分であり、最近では消費者委員会無用論まで出されています。従来にない画期的な使命を持ったこの委員会が十分な働きができるよう体制強化すべきなのに、政府は予算を減らし、その権限の縮小をねらっているとしか思えません。また、消費者委員会のメンバーも「権限がない」と自ら権限を縮小し、任務を果たす気概が見えません。
★消費者庁消費者安全課が独断で「意見なし」と厚労省に回答
11月22日、消費者庁担当の岡崎大臣は担当の消費者庁消費安全課と共に、反農薬東京グループなど14団体が出した質問と要望に関して回答しました。
食品衛生法に基づいて厚労省が消費者庁にフルジオキソニルの新規指定に関して協議の申し入れにどこがどのように対応したのかという質問に対して、消費者安全課の課長は「7月8日に申しれがあり、8月17日に回答した。消費者安全課が対応し、厚労省からきた資料を検討した。」と回答しました。
消費者庁が厚労省に出した回答は「表示基準改正に該当する規則別表第3第11号ハの改正について検討を進めていることを申し添えた上で、意見なし」というものです。
消費者にとって、新たな食品添加物の指定が必要かどうかは一切、検討せず、ただ表示について検討を進めているということを知らせただけで、ご無理ごもっともといっただけです。
しかも、消費者安全課だけで検討したのであって、会議を開いたわけではないので議事録はだせないとのことでした。消費者庁は消費者問題に対して司令塔になるとかいう話がありましたが、実態は、厚労省の下請けを唯々諾々とやっているとしか思えません。消費者の安全を守る行政の担当はなさそうです。
★指定が決まる前に表示を決める
厚労省がパブコメ中でまだ正式に指定が決まってない段階で、なぜ、消費者委員会が表示を審議するのかという質問に対しては「現在、指定されている防かび剤はバナナと柑橘にしか表示義務がないので、このままだと無表示で流通することになり、消費者に不利益になる」という回答でした。
有用性、必要性について何の審議もしないで、新規指定を既定路線としているのは、本末転倒です。消費者にとって使ったという表示よりも使用されない方がずっと利益になるわけですから。
さらに、フルジオキソニルの食品添加物指定に合わせて、農薬として栽培中に使用されている残留基準を引き上げています。
果実類の残留基準と食品添加物の規格案の主なものを表に示します。表中の現行基準は06年5月29日からのポジティブリスト制度実施に伴うもので、#印は99年4月時点から適用があった基準です(なお、この時のADI0.033mg/kg/日でした。詳しくは記事t23203)。
国産みかんは、食品添加物として使用してはならないことになっているためか、0.1ppmを超えてはいけませんが、果実は軒並み10倍になっています。
話し合いの中で、岡崎大臣も問題があるのではないかとの発言もありました。質問の全ての回答をえられていないので、もう一回話し合うことになっています。
表 フルジオキソニルの残留基準と
食添規格(単位:ppm)
果実名 残留農薬基準 食添規格案
現行基準 基準案
あんず 0.5# 5.0 5.0
おうとう 0.5# 5.0 5.0
キウイ 20 変更なし 20
ざくろ 5* 変更なし 5
すもも 0.5# 5.0 5
西洋なし 5 変更なし 5
ネクタリン 0.5# 5.0 5
びわ 5 変更なし 5
マルメロ 5 変更なし 5
もも 0.5# 5.0 5
りんご 5 変更なし 5
みかん 0.1 変更なし
なつみかんの果実全体1 10 10
レモン 10 変更なし 10
オレンジ 1 10 10
グレープフルーツ 10 変更なし 10
ライム 1 10 10
その他のかんきつ類 1 10 10
* その他の果実としての基準
# 99年4月時点から適用があった基準
★表示についてのパブコメを求める消費者庁
【参考サイト】消費者庁:食品衛生法施行規則等の一部改正案に関する御意見募集と当グループの意見
消費者庁食品表示課は、11月29日から12月28日まで、「食品衛生法施行規則等の一部改正案に関する御意見募集」を実施しています。これは、いままでの規則では、かんきつ類とバナナについてのみ、防かび用食添の表示が必要であったものを、新たに12果実についての表示を義務付ける改定案ですが、フルジオキソニルの食品添加物認可を前提にしたものです。それを認めるものではありませんが、表示するのなら果実を入れるダンボールなどの箱材への表示だけでなく、店舗でバラ売りの果実にも、きちんと表示されることを条文で義務付けることも必要ではないでしょうか。
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作成:2011-03-28