農薬の毒性・健康被害にもどる

t23802#2009年度の農薬危被害事例〜農水省は3人死亡/76人中毒 厚労省の人口動態統計では540人死亡#11-06

【関連記事】記事t21901(08年の農水省統計)
【参考サイト】農水省:農薬の使用に伴う事故及び被害の発生状況について(H17〜H21年)
       クロルピクリン工業会:トップページ

 3月末に農水省・厚労省へ提出した農薬危害防止運動への要望の前文で、昨年度の被害事例を記述しましたが、4月になってからも農薬が原因と思われる事件・事故が判明しています。農水省が公表した2009年度の農薬危被害報告及び厚労省の人口動態統計とともにその内容を紹介します。

★各地で犬の毒殺事件
 報道によれば、宮崎県新富町では、1月から4月にかけて、犬が中毒や死亡する事例が5件あり、殺虫剤メソミル入りの毒餌が疑われています(NHK)。
 三重県松阪市では、2月中旬から4月上旬にかけて、散歩中の飼い犬が毒餌と思われるものを食べ、10匹以上が嘔吐や下痢などの症状を示した後、呼吸器障害で死亡していることがわかり、原因としてパラコート系除草剤が疑われています(中日新聞)。
さらに、和歌山県有田市では、イノシシや猟犬が毒餌で死亡する事例が多く見られるとのことです。昨年12月には、山中で、イノシシの集団死亡がみつかっただけでなく、ミカン山に入った猟犬がなにかを食べて死亡する事例がみられ、猟友会有田支部が調べたところ同様な猟犬の不審死は3年間に14事例あったとのことです。ほかにもミカン山でヒヨドリ約180羽死亡した例もあり、農家が鳥獣被害防止のため、殺虫剤入り毒餌が使用した疑いがあります(読売新聞)。
 また、山口県宇部市では、5月8日から9日にかけて、民家や公園でカラスが計14羽死んでいるのがみつかりました。鳥インフルなどは陰性なので、毒餌の可能性があります。 

★倉吉市ではエンドスルファンなどによる魚毒事件発生
【参考サイト】鳥取県報道発表:第一報(4/26)、第2報(4/28)、第3報(4/29)、第4報(5/02)

 鳥取県倉吉市で発覚した農薬による魚毒事件の発端は、4月26日、自宅の池でコイが1匹死に6匹が弱っているとの住民からの通報でした。池の水は用水路から取り入れており、同所周辺には「若土専用水道」の水源があり、市水道局は取水停止をして(4月28日午後に飲用停止を解除)、調査を行いました。
 用水路は小鴨川から流入しており、同じ水系の数軒の池でもコイ、カエル、ドジョウなどが死んでいました。また、聞き取り調査により、前日朝に、白濁した水が流れ、農薬臭がしたとの情報も得られました。
 26日に採取した池の水と死亡したコイの農薬分析を実施した結果は、下表のようで、鳥取県は、魚毒性の強いエンドスルファンなどの農薬が死亡原因としましたが、どのような経路で汚染されたかは不明のままです。
    検出農薬     池の水        コイ検体
         検出濃度(mg/L) mg/kg
    エンドスルファン
                0.0026          2.6
    MEP    0.00002      0.0005 
    DDT類       -             0.003
    トリフルラリン -        0.0006
★農水省の2009年度農薬被害は76人
 農薬危害防止運動実施通知とともに、ホームページに公開された2009年度の危被害の発生数を表1に示しました。なお、統計結果の公表は、08年度のものが09年10月29日に公表されて以来(記事t21901)、1年7ヶ月ぶりのことです。
 人の死者は、昨年と同様誤用による3件3人、中毒件数は24件、被害者は76人でした。農作物被害は8件とミツバチと魚介類被害は各5件ありました。
 人の中毒27例については、表2に詳細報告をまとめました。原因でいちばん多かったのは、農薬使用後の作業管理不良によるもので、5件39人が被害を受けました。そのうち、3人は土壌くん蒸剤D−D、残り34人はクロルピクリンによるもので、土壌処理後の被覆を行わなかったり、不十分であっため、薬剤が揮発して周辺住民が体調不良を訴えたものです。クロルピクリンが原因の中毒は、ほかにも、運搬中の破損漏洩で8人、薬剤が残った容器処理で4人、家屋解体の際の容器破損で4人の被害がでています。
 誤用は死亡・中毒あわせて19件37人でした。なかでも、農薬を別の容器に移し替えたり、飲料と同じ冷蔵庫に保管したため、誤飲・誤食した事例が12人(うち死亡3)あったことは、農薬管理の杜撰さをうかがわせます。

 表1 08年度の農薬危害件数(農水省公表) 〜省略〜

表2 2009年度の人の農薬事故原因 (農水省詳細報告資料より作成) 〜省略〜

★人口動態統計による農薬死亡540人
 一方、厚労省が集計している人口動態統計によると、農薬関連の死亡者数は、06年635人、07年547人、08年523人と減少傾向にありましたが(記事t23105a参照)、09年は、表3のように前年より17人増え540人になりました。その大半は自殺者と思われます。農薬成分別の実数は不明ですが、有機リン・カーバメート系殺虫剤が昨年より18増え、214人となっています。除草剤による死亡数は5増え、191人です。
   表3 2009年の 厚労省人口動態統計より農薬による死亡者数

   農薬の種類                   男   女   合計  前年増減

   有機燐及びカルバメート殺虫剤   137      77      214      +18
   ハロゲン系殺虫剤                 1       -        1      - 2
   その他の殺虫剤                  19      11       30    + 9
   除草剤及び殺菌剤               107      84      191     + 5
   殺鼠剤                           1       1        2       0
   剤不明                        1       3        4      - 4
   詳細不明                     64      34       98      - 9
   合計              330   210   540      +17

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作成:2011-06-26