農薬の毒性・健康被害にもどる

t24003#農薬を「普通物」と呼称しないよう通知指導を求める〜農薬危害防止運動月間中も被害続出#11-08

 6月から始まった農薬危害防止運動は多くの県では、8月末で、終了することになっていますが、この運動に関する要望と、期間中に各地で起こった農薬による危被害を新聞報道や行政資料から紹介します。

★「普通物」使用をやめるよう指導を求める
 記事t23902に、農薬危害防止運動関係の行政への要望質問で、毒劇指定のない農薬について、「普通物」との呼称をやめるよう申し入れたところ、「安全だとの誤解が生じる恐れがあるため、このような呼称を用いないよう、留意して参りたいと考えています」との回答を得ました。そこで、厚労省、農水省、環境省および都道府県に要望を送りました。
私たちは、いままでにも、行政や業界に対して、「普通物」を使用しないよう求めてきました。たとえば、農薬工業会には、FAO(国連食糧農業機関)の「農薬の流通と使用に関する国際行動規範」の広告に関する規定に則り、「普通物」などという語句を使用しないよう求めましたが、『当会においてもFAOの広告に関する諸規範等を参考としたコンプライアンスを推進することとしております』との回答のみで(記事t16203)、農薬メーカーや販売業者は、「普通物」を使い続けています。
 また、神奈川県では、2004年の県民交渉で以下の質疑がありました(いのくらのHPにある2004年第3回 県民部 交渉記録)。
 質問:農業振興課のホームページ内に、「毒劇法上の分類のないもの」と書けばいいの
    に、「普通物」という表現が非常に多い。ところが出先では「普通物だから大丈
    夫だよ」と言ってしまうのです。別の所管の法律なので、それに沿って職員に徹
    底した方がいいのではないか。
 県の回答:指摘は的を射ていますので、これから担当職員にそういう形で対応するよう
    にしたいと思います。(農業振興課)
    しかし、以下の事例にみるように、依然として「普通物」が使われています。
・農水省や林野庁、農林水産消費安全技術センターなどのHPにある登録農薬一覧表の毒性の項には「普通物」「普」の記載がある。 ・農薬工業会のHPの解説文書や植物防疫協会(農水省消費・安全局農薬安全管理課、植物防疫課監修)発行「農薬要覧」の毒性別生産量・金額、成分一覧表の毒性欄に「普通物」と表記あり。 ・緑の安全協会の適用農薬一覧や全国農薬協同組合発行の「農薬安全適正使用ガイドブック」の製剤毒性欄に「普」マークあり。 ・東京都や神奈川県:販売届申請書類の農薬名の毒劇区分に普通物と記載するようになっている。
    ***  三省への要望  ***

1,「普通物」という呼称は毒性がないという誤解を与えるので、使用しないという
  通知を発出してください。
2,現在も、この呼称を使用している行政担当部署や農業および農薬関連団体、農薬
  使用者等へ、使用しないよう指導してください。
3,まず、最初に農水省、環境省、厚労省が「普通物」という呼称を使わないよう、
  通知、指導文書、解説などから削除してください。  
★大阪市の水道水の異臭事件
【参考サイト】大阪市:報道発表
 6月5日、大阪市東淀川区の民家から水道水に異臭があるとの通報で、市水道局が調べたところ、1民家の水道で白濁と異臭が認められました。この時、採取された水道水からフェニトロチオンが0.00035mg/L検出されましたが、水道水質監視の評価値0.003mg/Lよりも低い値で、異臭の原因が農薬であったか、どうかも不明です(翌日には不検出となる)。当日、地区内でフェニトロチオン剤の散布が実施されていましたが、これが水道に混入したかどうかも明らかになっていません。

★原因追求はうやむやに
【参考サイト】石川県:報道発表。飯田市:報道発表
 石川県金沢市を流れる浅野川で、1万匹を超えるアユの大量死がみつかったのは6月14日のことです。その後に回収されたものを加えると約3万匹が被害を受けたと推定されています。ほかにも、ヤマメやカニの死骸も確認されたということです。
 原因追求のため、市の環境課が河川水について、県保健健康環境センターがアユについて、有害物質の検査を行いましたが、水質汚濁防止法の対象の農薬やそれ以外の16農薬などは検出されませんでした。県は、7月11日、原因の特定にいたらなかったとして、調査を終了しました。
 7月19日には、飯田市妙琴(みょうきん)浄水場にある汚泥処理施設で、イワツバメ約250羽の死骸が見つかりました。長野県環境保全研究所が死因を調べましたが、農薬200項目は検出されなかったとのことで、原因は不明のままです。

★山口県では農薬不法投棄
【参考サイト】山口河川国道事務所:第1報第2報第3報第4報第5報6報7報
 8月1日、山口市内を流れる佐波川の農薬が投棄されているとの住民からの通報が山口警察署にはいりました。河川を管理する国土交通省山口河川国道事務所が調べたところ、川底にダンボール2箱にはいった農薬が見つかりました(7月28日には当該場所にあったことが判明)。同事務所が撤去した農薬は約42kgで、イモチ病殺菌剤キタジンP(有機リン系イプロベンホス)3kg袋7個とツマサイド粉剤30DL(MTMC:94年登録失効のカーバメート剤)が3kg袋7個が投棄されていました。
 下流域の河川水が分析されましたが、定量限界以下だったとのことで、魚等の斃死は確認されていません。8月9日に、山口河川国道事務所は、山口警察署に刑事告発状を提出、受理されたので、警察が捜査することになりました。

★農薬工場からの漏洩事故
 7月16日、高知県高知市にある南海化学土佐工場から、農薬クロルピクリンがタンクから漏洩し、付近のクリーニング工場の従業員26人と近隣の男性1人が、眼やのどの痛みを訴えました。
 同工場では、02年7月に塩素漏れ事故(記事t13004c)を、03年7月にクロルピクリン漏洩事故(記事t14507b)を起こしています。

★農薬残留基準違反も次々と
【参考サイト】JAおおいた:お詫び。岡山県:報道発表。香川県:報道発表。神奈川県:報道発表

 6月1日は、大分県で、JA大分豊後大野事業部が出荷したゴーヤから、EPNが残留基準の0.01ppmを超える2ppmが検出され、出荷停止となりました。これは、自主検査の結果わかったものです。毎日新聞の報道によれば、県農協は出荷37ケースのうち1ケースしか回収できなかったとのことで、さらに、適用外のメソミルも0.02ppm見つかったとのことです。その後、県内のゴーヤ生産者14個所を調べたところ、杵築市の生産者が適用外のカスミンボルドーを使用していたこともわかりました。JAグループ大分は、21日に対策会議を開き、農薬の適正使用と出荷前の生産履歴確認および残留検査結果の確認後の出荷など申し合わせ、再発防止に取り組むことになりました。
 6月17日は、岡山県真庭市内で生産され、びほく農協北房総合センター出荷のアスパラガスから、ジメトモルフ0.18ppmが検出され(残留基準0.01ppm)、県が回収命令をだしました。
6月24日、香川県丸亀市が、学校給食に使用された香川県産ホウレンソウからEPN0.55ppm(残留基準0.01ppm))が検出されていたことを公表しました。同市の学校給食センターに6月3日に納入されたホウレンソウで、生産者8人はいずれも、EPNの使用を認めておらず、他の圃場からのドリフトも確認できなかったとのことです。なお、給食を受けた3幼稚園と10の小中学校の約5900人から、健康被害の報告はないそうです。
 7月26日、神奈川県は、秦野市内の生産者が出荷した十六ささげにプロチオホス0.29ppm(残留基準0.01ppm)が検出されたことを明らかにしました。生産者の適用外使用が原因でした。ささげは、直売所で128袋販売されていましたが、健康被害の報告はないとのことです。
 7月27日、岩手県のJAいわい東の1生産者の出荷したキュウリにディルドリンが0.03ppm検出され(残留基準0.02ppm)、72の生産者が生産した152トンの自主回収をはじめました。ディルドリンは登録失効から40年以上たっていますが、土壌残留性が高く、またキュウリへの移行性が大きいため、しばしば、残留基準超えを起こすことがよく知られています。 8月9日、大仙市のJA秋田おばこが出荷したモロヘイヤに殺虫剤フィプロニルが0.2ppm(基準0.01ppm)検出され、回収命令が出されました。前作の水稲育苗で使用した成分がハウス内土壌に残留し、モロヘイヤに吸収されたものと推測されています。

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作成:2011-08-30