農薬の毒性・健康被害にもどる
t24101#農薬の《普通物》という呼称をやめるよう都道府県に要望〜反対はひとつもなし「留意する」が大部分#11-09
記事t24003で報告したように、毒劇指定のない農薬を《普通物》と呼称しないよう、農水省、厚労省、環境省の三省と都道府県に指導強化の要望を送りましたが、都道府県からの回答がまとまりました。
*** 都道府県への要望 ***
1,《普通物》という呼称は毒性がないという誤解を与えるので、使用しないようにとい
う指導通知等を発出してください。
2,現在も、この呼称を使用している行政担当部署や農業および農薬関連団体、農薬使用
者等へ、使用しないよう指導してください。
3,県の通知、指導文書、解説文書、ホーページなどから《普通物》という呼称を削除し
てください。
この要望に対してほとんどの都道府県が回答してきましたが、回答してこなかったのは、富山県、山梨県の2県でした。
★「誤解されないよう留意する」が71%
回答のあった45都道府県の中で、普通物という呼称を今後も使い続けるというものは、ひとつもありませんでした。ほとんどが、厚労省の回答と同じ「毒性がないという誤解を与えないよう留意する」というもので、その書き方自体、模範解答があったのではないかと疑いたくなるような画一的なものでした。
たとえば、「本県としましては,今後は,毒物・劇物に該当しない農薬を《普通物》と称することにより,当該農薬に毒性がないとの誤解を生じることのないよう留意し,農薬の適正指導に努めて参りたいと考えております。」というのが典型です。
こうした回答は、秋田県、宮城県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県、埼玉県、東京都、神奈川県、静岡県、新潟県、長野県、岐阜県、愛知県、石川県、三重県、京都府、大阪府、奈良県、和歌山県、兵庫県、島根県、徳島県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県の32県(71%)でした。
★国の指導を受けて対応する
県独自に判断するのではなく、国の対応をみてから考えるという回答もありました。
北海道は「全国的に統一した対応を取るべきものと考えますので、今後、農林水産省等からの指導を受けて適正に対応してまいります。」でした。
同様の回答は、岡山県、山口県、香川県、愛媛県、福岡県を加えた6道県でした。
★使用する場合、注釈をつける
いくつかの県は、呼称の廃止には消極的ですが、そのまま使用するのではなく、注釈をつけるとしています。
たとえば、青森県は、「現在、農作物病害虫防除指針において、《普通物》という呼称を用いており、農薬の使用者、指導者、販売者の間で浸透していることから、この呼称を廃止することは、現場での混乱を招くものと考えています。しかしながら、《普通物》という呼称が毒性がないという誤解を与えるという御指摘であり、今後は《普通物》の呼称を用いる場合に、注釈を付すなどの対応をとることとします。」
高知県は、「常日頃から県の出先機関、JA等の関係団体に対し注意喚起を行っています。また、本県の病害虫防除指針にも《普通物》は「毒物及び劇物以外の毒性を示すもの」と記載しています。今後も、普通物と称している農薬について、ご指摘のような誤解を与えないよう、啓発に努めて参ります。」とのことでした。
岩手県、滋賀県も同様の回答でした。
★《普通物》呼称は使用していない
和歌山県は「これまでも《普通物》という呼称は用いておらず、引き続きこのような呼称を用いないよう留意いたします」ときっぱりした回答でした。
福井県も使用している実態はないが、使用を認めた場合は、削除する、もしくは注釈を付すとのことでした。
広島県の場合は、担当部署によって回答が違っています。環境県民局環境保全課は、ゴルフ場水質自主検査の報告等では《普通物》は使用していないとのことです。健康福祉局薬務課は、「《普通物》という呼称は安全だとの誤解が生じる恐れがあるため,このような呼称を用いないよう留意が必要と考えております。」という回答でした。農業技術課は、「《普通物》という呼称の取り扱いにつきましては,今後,農林水産省において検討されると聞いています。本件に係る対応については,各都道府県での独自の表記,対応などによる混乱を避ける上でも,全国統一的な対応を行うべきであると考えており,当県としても今後の農林水産省の検討状況を踏まえ,対応したいと考えております。」とのことでした。全国統一的な対応も結構ですが、まず、県での統一見解を出してほしいと思います。
佐賀県は、使用する場合は注釈を付けるとの回答でしたが、環境担当部署は《普通物》という呼称は使用したことがないとのことでした。
★全ての農薬の適正使用の徹底
群馬県は「従来から、毒物・劇物に該当する農薬はもちろん、これらに該当しない農薬についても、鍵をかけての保管管理、飲食品の空容器等への移し替えの禁止、使用基準の遵守について指導を徹底しているところです。今後も、引き続き指導を徹底し、農薬の安全使用の確保に努めて参ります」と、鳥取県は「今後も農薬による事故を未然に防止する観点から、毒劇物に限らず全ての農薬についてリスクを周知啓発するとともに、農薬使用者・販売者等に対して適正な使用及び保管管理の徹底を指導してまいります。」との回答がありました。
★指導通知を出す県はない
質問2の他部署や農業団体等への指導、質問3の県の指導文書、ホーページなどから《普通物》という呼称の削除に関する要望には以下のような回答がありました。
静岡県は、 「既存資料等の訂正は行いませんが、ホームページの中で現時点の資料として掲載されているものに「普通物」の呼称が使用されている場合は、注釈を付けるなどの対応を行います。」「今後、資料作成や刊行物の監修にあたっては、《普通物》の呼称を用いないようにし、「普通物」の呼称を用いる場合は、注釈を付すように致します。」秋田、神奈川県も同様の回答でした。
長野県は、「今のところ国より《普通物》の呼称変更等に係る取扱いについては通知されておりませんので、長野県として通知を出す予定はありません。「現在、長野県のホームページにおいては、行政用語として農薬にかかる《普通物》の表記はありません。」とのことでした。
三重県は「今後の資料等の作成にあっては、なるべく《普通物》の呼称を用いない。 用いる場合は、注釈を付ける」「ホームページで資料として公開しているものについては、随時、改定を行って行く。」「刊行物の監修にあたっては、《普通物》の呼称を用いる場合には、注釈を付すなどの対応を求める等の対応を農林水産省とも連携し、とっていきたい」
鳥取県は、「呼称を使用しないよう指導する法的根拠はなく、現時点では指導通知等の発出は考えていません。」「今後、国から正式な方針が示されれば、対応を検討していきたいと考えています。「県としては、基本的に《普通物》の表現は使用していません。」とのことでした。
徳島県は、大多数の農業者や農薬販売者は,《普通物》は毒性がないとの誤解が生じることはないと考えているが、「一部の農薬使用者等において誤解が生じる可能性がありますので,今後,不特定多数の農薬使用者が目にする機会のある県のホームページでは,《普通物》という呼称を用いないようにし,この《普通物》の呼称を用いる場合は,注釈(「毒劇物に該当しないものの通称」など)をつけるなど留意して参りたいと考えております」
《普通物》呼称を使用していないという県もいくつかありましたが、ほとんどの都道府県は「留意する」だけで、使う場合は注釈を付けるというものでした。やはり、農水省のきちんとした通知が必要です。
購読希望の方は、〒番号/住所/氏名/電話番号/○月発行○号からと購読希望とかいて、
注文メールをください。
年間購読会費3000円は、最初のてんとう虫情報に同封された振替用紙でお支払いください。
作成:2011-09-26