食品汚染・残留農薬にもどる
t25104#柑橘類のアゾキシストロビン〜残留基準を5倍にしてまで、食品添加物認可へ#12-07
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【参考サイト】薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会(5月30日):
アゾキシストロビンの食品添加物の指定に関する部会報告書(案)と議事録
薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会資料(6月22日):
アゾキシストロビ残留基準案の資料
農薬を収穫後に使用するポストハーベスト適用は、多くの場合、日本では認められません。特に、防かびを目的とした薬剤は、たとえ、農薬の殺菌剤の登録があっても、食品添加物の認可を受けねばなりません。
09から10年に、殺菌剤フルジオキソニルが問題となり、私たちの反対にも拘わらず、11年9月に、みかんを除く柑橘などに使用できる食品添加物・防かび剤として、認可されました(本誌232、233号等参照)。
今回、同じように食品添加物の認可を狙っているのは、殺菌剤アゾキシストロビンです。同剤はイギリスのゼネカが開発した薬剤で、日本では、1998年4月に農薬登録され、商品名アミスターとして知られています(ここ数年の成分出荷量は年間約60トン)。現在の登録製剤は単剤11、複合剤22で、コメ、コムギ、豆類、ぶどうなどに適用があり、イモチ病や紋枯れ病対策で水田空中散布にも使われます。
食品安全委員会は、毒性評価の結果、ラットの慢性毒性/発がん性併合試験 の無毒性量18.2mg/kg体重/日を根拠にADIを0.18mg/kg体重/日に設定、残留基準については、すでに2回のパブリックコメント意見募集を経て、現在、農作物120種(畜産、魚介類を含む全体で149食品)について0.01-50ppmに設定されています。
★アメリカが食品添加物認可を求める
5月30日開催の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会に提出された報告書には、アメリカで、アゾキシストロビンはポストハーバスト用防黴剤として、使用されている/日本では、農薬のポストハーベスト適用はなく、食品添加物の認可が必要になると記され、アメリカでの残留試験成績が出ています。
通常の栽培方法に従い、果実に散布処理を 2 回した後、成熟果実を収穫した。防かび処理は浸漬処理または荷造工程スプレー処理で 1 または 2 回行ったとあり、最大残留値の範囲以下のようです。
グレープフルーツ(11事例):0.101-5.427ppm
オレンジ(11事例):0.087-3.994ppm
レモン(11事例):0.515-9.812ppm
これを基に、提案されている規格は
@かんきつ類(みかんを除く)以外の食品に使用してはならない。
Aアゾキシストロビンとして、かんきつ類(みかんを除く)にあってはその各々の
1kgにつき 0.010g (ppm単位では10)を超えて残存しないように使用しなければ
ならない。
ですが、これでは、現行の基準を超えることになります。
★残留基準を5倍緩和すれば問題解決?
そこで、6月22日の、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会に提示されたのは、次頁の表のような残留基準緩和案です。アメリカの要求どおり、みかんをのぞく柑橘類は、現行2ppmを5倍緩和した10ppmで、ポストハーベストの食品添加物・防黴剤を認可しても違反にならないよう考慮されています。ちなみに、この日の提案をみると、ほかの農作物でも残留基準の緩和がみられます。
厚労省は、このような緩和でも、理論最大一日摂取量(TMDI)は、下のようで、問題ないとしています。
国民平均 幼少児 妊婦 高齢者
TMDIμg/人/日 3729.6 2125.9 3003.0 3950.4
対ADI比% 38.9 74.8 30.0 40.5
アメリカのいいなりになって、残留基準を緩和してまで、食品添加物を増やして、国民の健康は守れるというのでしょうか。
表 アゾキシストロビンの残留基準緩和案 (単位;ppm)
食品 現行残留基準 改定案 食品 現行残留基準 改定案
みかん 1 1 にら 5 70
なつみかん全果 2 10 パセリ 30 70
レモン 2 10 その他せり科野菜50 70
オレンジ 2 10 しいたけ - 3
グレープフルーツ 2 10 その他きのこ - 3
ライム 2 10 その他の野菜 50 70
その他かんきつ類 2 10 その他スパイス 30 70
クレソン 3 70 とうもこし油 - 0.1
その他きく科野菜50 70 とうがらし乾燥 - 30
たまねぎ 1 10 乾燥ハーブ - 300
にんにく 0.1 10
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作成:2012-10-27