農薬の毒性・健康被害にもどる
t25105#胆管がん原因説の1,2-ジクロロプロパンは農薬D−Dに含まれる?#12-07
【関連記事】記事t05601、記事t09804
【参考サイト】厚労省:胆管がん相談窓口
胆管がんに関する相談状況について (6/12)
胆管がんに関する労災請求について(6/25)
胆管がんに関する一斉点検結果の取りまとめ等について(7/10)
ダウアグロサイエンス日本:Top Page、テロンの登録内容とMSDS、旭D-Dの登録内容とMSDS
D-D剤の劇物指定について (2010/12/31)、D-D 剤 劇物指定に関するよく聞かれる質問(FAQ)
5月開催の産業衛生学会で、産業医科大学の熊谷信二さんが、印刷会社の若年労働者に胆管がんがみられ、その原因として溶剤1,2-ジクロロプロパン(以下、1,2-prと記す)などが疑われるとの報告を行いました。これを契機に、厚労省も本格的な労災職業病としての調査に乗り出しています。
じつは、1,2-prは、農薬成分として使用量第一位の土壌処理用殺虫剤D−D(別名テロン)に含まれる物質です。環境省の農薬データベースにもでており、製造輸入量の推移(化審法監視物質で農薬用以外も含む)が掲載されています。
★D−Dが増大した背景
1981〜84年のことですが、アメリカでくん蒸用途の殺虫剤EDBの発がん性が問題になりました。日本でもくん蒸処理する港湾労働者の保護、果実やコムギ及びコムギ製品への残留規制、土壌くん蒸による地下水汚染防止が求められました。農水省は、82年1月、くん蒸処理する農薬使用者に対し、EDBを取り扱う際の注意事項を発出しました(ただし、EDBに発がん性があることは書かれていない)。
82年9月に、アメリカで、土壌くん蒸剤EDBが使用禁止となった後、83年6月には、農水省は、EDBの製造・使用自粛を要請しました。その時、同省が、EDBの代替として挙げたのが同じハロゲン系のD−D剤です。D−D剤の出荷は84年には83年から倍増し、その後も8000〜12000klの製造が続いています。
★製造時期により異なる1,2-pr含有量
D−Dの活性成分は1,3-ジクロロプロペン(以下 1,3-pr)ですが、1,2-prも含有され、その組成は、以下のように製剤登録時期、即ち製造時期により、違います。
・登録番号〜5000の製剤 ジクロロプロペン/ジクロロプロパン/その他の炭化水素の塩化物合計100%
(→その後D-D(1,3-pr)55%となる)
・登録番号7000〜11700 D-D(1,3-pr)55%
・登録番号15000〜21000 D-D(1,3-pr)92%
・登録番号22000〜 D-D(1,3-pr)97%
これらの数値からD−D製剤の活性成分1,3-prの含有率が55%、92%、97%と変化していることがわかりますが、アメリカの1,3-pr:52%のD−D製剤には、いま問題になっている1,2-pr:29%のものもあります。日本の製剤は1,2-pr含有率が不明なため、農水省に尋ねています。
5月28日: 農薬中の補助成分と不純物についてのお尋ね(まだ、回答がありません。)
★農薬製剤には毒性情報を記すべき
【参考サイト】アメリカでの製剤の説明書:D-D/クロロピクリン剤、テロンUのMSDS
アメリカでは、テロンU液剤(1,3-pr97.5%)の説明書に、発がん性情報として、主成分の1,3-prがマウスの動物実験でオスに良性肺腫瘍が増加したことを、又、1,3-prとクロルピクリンの複合製剤に、急性毒性と発がん性のため、使用を有資格者に限る旨の記載があります。
私たちは、農薬危害防止運動への要望で、農薬使用者の保護のため、神経毒性や発がん性が認められる旨を記した説明書を製剤に添付するように求めましたが、農水省は『農薬がどのような毒性を有するかを表示するのではなく、−中略−、どのような防護装備を着用し、何に注意して散布すべきなのか等を農薬ラベルに使用上の注意事項として示すことが重要と考えています』としただけでした。防備や使用上の注意は必須ですが、それに加えて、使用者には、農薬毒性情報を正確に知らせるべきです。
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作成:2012-07-26