環境汚染にもどる
t25204#琵琶湖河川や愛媛県でのネオニコチノイド系農薬の水系汚染#12-08
【参考サイト】日本環境化学会:第21回環境化学討論会プログラム(12年7月11日(水)〜 7月13日(金)、於愛媛県松山市)
ミツバチやアカトンボの生育に影響を与えているネオニコチノイド系農薬の水系汚染について、奈良県室生ダムや福岡県筑後川の水道原水、横浜市の鶴見川その他の市内河川水や海水の汚染、秋田県雄物川や西目川、大阪府の淀川などでの、検出報告がありますが(記事t22604、記事t23907、記事t24407参照)、7月に愛媛県松山市で開催された第21回環境化学討論会の研究発表で、あらたに、滋賀県と愛媛県の水系にネオニコチノイドが検出されたことがわかりました。
今後とも、研究者による更なる水系汚染データの蓄積が望まれます。
【琵琶湖水系の汚染】
LC/MS/MS(液体クロマトグラフ/質量分析/質量分析)装置を用いて、水道水の農薬検査法を開発している株式会社「日吉」の川嵜さんらは、2011年から12年にかけて、琵琶湖水系の2つの河川と横浜市鶴見川の水質中の9農薬について実態調査を行いました。そのうち、ネオニコチノイド系の6種について分析結果を表1に示します。
表1 琵琶湖水系と横浜市鶴見川水系のネオニコチノイド調査結果
採取場所 滋賀県瀬田川 滋賀県宇曽川 横浜市鶴見川
採取期間 11/04-12/01 11/04-12/01 11/04-11/10
検出数 検出率 最大濃度 検出数 検出率 最大濃度 検出数 検出率 最大濃度
農薬名 /検体数 % μg/L /検体数 % μg/L /検体数 % μg/L
アセタミプリド 0/30 0 - 1/54 1.9 0.005 40/115 35 2.41
イミダクロプリド 0/30 0 - 10/54 19 0.013 58/115 50 3.07
クロチアニジン 6/30 20 0.015 38/54 70 0.208 36/115 31 3.17
ジノテフラン 13/30 43 0.024 54/54 100 10.2 62/115 54 1.69
チアクロプリド 3/30 10 0.004 1/54 1.9 0.006 54/115 47 1.82
チアメトキサム 0/30 0 - 27/54 50 0.066 26/115 23 1.86
琵琶湖南側から流れ出る瀬田川では、ジノテフランが一番高い検出率と、最大濃度を示しましたが、アセタミプリド、イミダクロプリド、チアメトキサムは検出限界以下でした。鈴鹿山脈から琵琶湖東岸に流入する宇曽川では6種のネオニコチノイドが検出され、ジノテフランが100%の検出率で最大濃度も10.2μg/L、ついで、クロチアニジンが検出率70%、最大濃度0.208μg/Lでした。水稲のカメムシ駆除にスタークル(ジノテフラン)やダントツ(クロチアニジン)などが散布されるためだと思われます。
同表にある横浜市の鶴見川水系の2011年の調査でも、6種のネオニコチノイドが23〜54%の検出率で見つかっていますが、その最大濃度は、前年までの調査で0.1μg/Lのオーダーだったのに対し、2から3μg/Lと一桁高くなっているのは、気になるところです。
研究者は『最高濃度は登録保留基準値に対してほぼ1/50 以下ではあったものの検出率の高い農薬が多くみられたため、今後、より詳細な調査が必要であると考えられる。』と結語しています。
ネオニコチノイド類のADIは高目に設定されているため、水道水の場合、たとえ、1-10μg/Lであっても、水質目標値に到達するには余裕がありますが、トビケラを用いた水生生物への影響試験*では、EC50(半数影響濃度)のレベルとなります。
また、記事t25203にある、ハチのイミダクロプリド試験(0.7μg/kg=μg/L投与)でもわかるとおり、かりに、この水を使用してつくった砂糖水を給餌したら、昆虫の生育に影響がでても不思議ではありません。
*注:トビケラを用いた水生生物への影響試験
農業環境技術研究所の横山淳史さんが開発した水生生物の農薬影響評価法で、
コガタシマトビケラ1齢幼虫を用いた農薬の急性毒性試験。従来のミジンコ、
魚類、藻類を用いた試験法より、感度が高く、日本の自然環境に即した手法
として、普及が図られている。EC50は、遊泳・匍匐運動をしないトビケラに
水流刺激した際の運動の状態を観察し、半数が無反応(死亡又は瀕死状態)と
なる濃度をいう。
【参考サイト】農業環境技術研究所の研究成果情報 平成19年度 (第24集) より
コガタシマトビケラ1齢幼虫を用いた農薬の急性毒性試験法マニュアルとマニュアルDLサイト
【愛媛県下の水系汚染】
愛媛大学の原口さんらは、愛媛県でのネオニコチノイドの水系汚染状況を調べました。田面水・水田排水・流入河川水等の調査結果は、表2のようでした。
2010年は6-11月に、A地点3個所とB地点2個所で24検体、2011年は7月から翌年1月に、A地点4個所、B地点2個所で39検体の分析が行われましたが、表には農薬ごとの最大検出濃度を示してあります。
最も高い濃度を示したのは2010年のジノテフランで0.0608μg/Lでした。2011年の検出値は、全般的に前年より低濃度でした。この点について、研究者は『同様の量が散布されたにも関わらず、平成23年度は平成22年度と比べ、降水量が多かったため(平成22年 5月〜10月の降水合量766.5mm、平成23年 5月〜10月の降水合量1334mm)、散布されたネオニコチノイド系農薬が流出してしまったこと、散布後からサンプリングを行った期間が異なることも影響し、全体的に低濃度になってしまったものだと考えられる。』としています。
表2 愛媛県下におけるネオニコチノイド系農薬の水系汚染
農薬名 2010年6-11月採取24検体 2011年7-12年1月採取39検体
最大濃度μg/L 最大濃度μg/L
アセタミプリド 0.0049 0.00056
イミダクロプリド 0.00127 ND
ジノテフラン 0.0608 0.00579
ニテンピラム 0.0408 0.00171
フロニカミド 0.00072 ND
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作成:2012-11-27