ダイオキシンにもどる

t25403#2,4,5−T系ダイオキシン問題がまた浮上〜沖縄ではアメリカ軍の枯れ葉剤、屋久島では林野庁埋設除草剤#12-10
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     東日本大震災 化学物質による二次被害を引き起こさないための緊急要望

★沖縄の枯れ葉剤=オレンジ剤
【参考サイト】岩波書店:月刊誌「世界」2012年8月号
       日本環境化学会第21回環境化学討論会プログラム
             12年7月11日(水)〜 7月13日(金)、於愛媛県松山

 1960年代から70年代はじめにかけてのベトナム戦争で、アメリカ軍がジャングル等で散布した枯れ葉剤 (2,4,5−Tと2,4-Dの混合剤で、オレンジ剤といい、ダイオキシンを含む)は、ベトナムの環境を汚染し、ダイオキシンによる先天異常やがんなどが多発する原因になっただけでなく、その散布に携わったアメリカ兵らの体を蝕んでおり、帰還兵の補償問題もおこりました。
 今年の8月からは、アメリカが約20億円を拠出し、ベトナムの枯れ葉剤汚染地区で、浄化処理計画が始まっています。戦争当時、アメリカ軍の補給基地があった沖縄県にも、枯れ葉剤が持ち込まれたことが以前から問題になっていましたが、今年になって、輸送船の座礁事故、荷揚げ事故、訓練場や基地での使用などで、枯れ葉剤を被曝したアメリカ軍人が健康被害を受けたことが、帰還兵の証言やアメリカ退役軍人局の資料で判明しました。また、沖縄県内で、土中埋設したとの証言もあります。しかし、アメリカ政府は枯れ葉剤の沖縄持込みを公式に認めておらず、地元住民や自治体の要望があるにも拘わらず、日本政府はダイオキシン等の環境調査も実施しない有様です。
 愛媛大学の農学部の本田克久さんらのグループは、オレンジ剤由来のダイオキシン汚染土壌を迅速かつ簡易に分析できる測定法を開発中で、関連する研究が本年7月、松山市で開催された第21回環境化学討論会で、ポスター発表されましたが、沖縄の事例にも適用が望まれます。

★林野庁が埋設指示した2,4,5−Tその後
 POPs系農薬と2,4,5−T系農薬は、1971年、農水省や林野庁の指示で埋設処理されましたが、POPs系4400トンのうち、4000トンは、11年2月までに無害化処理が終了したものの、2,4,5−T系の約26.8トンについては、『環境が汚染されないように適切な方法で処理して埋設した場所についても、適切に保全管理を行っている。』ことになっているだけです。  5年前の07年に、林野庁に埋設状況を尋ねた結果を記事t19203で報告しました。昨年の東日本大震災直後の埋設個所の状況については回答がなかったため、本年8月改めて、同庁に問い合わせました。その結果を以下に示します。
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【質問1-1】目視点検のチェック項目はなんですか。
[回答]立入禁止の標識、囲い(損傷がないか)、覆土の状況(土壌のかく乱がないか)を確認している。

【質問1-2】埋設個所の都道府県・市町村・地名/点検年月日/点検部署/点検結果/
 地元自治体との連携を教えてください。
  ・異常があった場合は、その内容
  ・地元自治体と共同点検した個所は自治体名
  ・貴庁のみの点検の場合は、結果を自治体に連絡しているかどうか
 を記載してください。
[回答]原則として年に2回、現地の状況等の点検を実施しており、現地に異常があった場
 合には、森林管理局署等において、地元自治体に速やかに連絡することとしている。ま
 た、地元自治体から問い合わせがあった場合には、その結果を知らせることとしている。
 平成23年度の点検では、異常のあった個所はない(表参照)。また、平成23年度に地元自
 治体と共同で点検した個所は、岩手県内各箇所及び熊本県宇土市、鹿児島県湧水町、南
 九州市、屋久島町の各箇所。
 なお、埋設箇所の地名については、公にすることにより、犯罪の予防等の公共の安全と
 秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあることから、明らかにすることができない。

【質問2-1】 この5年間で、大雨、地震等の発生により、点検した個所はどこですか。
 埋設個所と点検年月日と点検内容、点検結果を教えてください。
[回答]大雨、地震等、埋設箇所の保全に問題が生じるおそれがある事態が発生した場合に
 は、定期点検や臨時の点検を通じて適切に保全管理を行っている。
 (直近の定期及び臨時点検年月日は表参照)

【質問2-2】 埋設個所に、立入禁止標識や柵等がある個所はどこですか。
 一覧でお示しください。なお、更新・修理等を行った場合は、その実施年月日と内容も
 記載してください。
[回答]現在、点検を行っている全ての箇所において立入禁止標識及び柵等を設置している。
 また、2011年度に有刺鉄線張替や支柱交換等の補修等を行った箇所は別紙のとおりであ
 る。(2011年度の補修等年月日は表に記載)

【質問3】07年の埋設個所の環境調査についての問い合わせでは、
  ・1989年度に、四万十森林管理署(旧窪川署)管内で、2,4,5−Tと2,3,7,8-TCDD
   実施して以後、2004年度については、調査を実施していない。
  ・屋久島については、1989年度に2,3,7,8−TCDD 調査以後、同年度を最後に調査を行
   なっていない。とのことでした。
    その後、全国のどの埋設個所でも、2,4,5−Tもダイオキシンも環境調査が実施され
 ていません。埋設後、40年を過ぎた現在、目視だけでなく、環境調査を実施してください。
【質問4】私たちは、07年に、埋設箇所のある52市町村にアンケート調査を実施、
 48%から回答を得ました。これによると、今後の処理については、「林野庁の方針に任
 せる」が一番多かったものの、無害化処理の実施を求める自治体もありました。
  07年の問合せで、貴庁は埋設箇所については99年11月の見解を踏襲し、掘削や無害化
 処理などをせず、引き続き今まで通り監視していくとのことでしたが、私たちは、昨今
 の地震や風水害などの影響を鑑み、埋設箇所から2,4,5−Tやダイオキシン類が漏洩し、
 環境を汚染することを懸念します。
  貴庁の先の方針を見直し、できるだけ早く、埋設箇所を掘削し、無害化・浄化処理を
 すべきと考えますが、どうお考えですか。
[回答]国有林内に埋設された2,4,5−T系除草剤については、1984年から16年間にわた
 る土壌調査等の結果に基づき、専門家による検討委員会において、周囲への移動等はな
 く地域住民生活へ及ぼす影響がないことが確認され、今後は埋設箇所への立入及び土壌
 かく乱行為の禁止等の保全措置を引続き継続することとの見解が示されている。
 この検討委員会の見解に基づき、表土(覆土)の状況や土壌かく乱の有無等について点
 検を実施しておりますが、現在まで埋設箇所での異常は認められておりません。今後と
 も、土壌のかく乱等が起こらないよう、引き続き埋設箇所を適切に保全していく考えで
 す。
 
 表 2,4,5−T埋設個所の点検状況(林野庁資料)

埋設箇所の
所在地    森林管理署等 直近の点検年月日 2011年度補修等の実施日     
北海道夕張市  空知      2011/09/28      −
〃  遠軽町  網走西部    2011/10/21      −
〃  広尾町  十勝西部    2011/10/07    2011/05/25
〃  音更町  〃       2011/10/28      −
〃  清水町  〃       2011/10/28    2011/05/20
〃  標茶町  根釧西部    2011/10/13      −
〃  本別町  十勝東部    2011/09/30          −
青森県中泊町  〈金木〉    2011/10/17      2011/05/25
岩手県久慈市  〈久慈〉    2011/11/10      2011/04/27
〃  野田村  〃       2011/11/10          −
〃  雫石町  盛岡      2011/10/20          −
〃  岩泉町  三陸北部    2011/10/12        2011/06/13
〃  宮古市  〃        2011/10/17      2011/04/13
〃    西和賀町 岩手南部         2011/10/20      2011/10/13
福島県会津坂下町 会津         2011/12/02          −
群馬県東吾妻町 吾妻           2012/03/12           −
〃  昭和村  利根沼田       2011/12/16           −
愛知県設楽町 (愛知)        2011/12/21           −
岐阜県下呂町  岐阜           2011/10/25       2011/11/18
〃  〃     〃             2011/11/18           −
広島県庄原市  広島北部       2012/03/08           −
愛媛県西条市  愛媛           2011/10/24           −
〃   久万高原町〃             2011/10/28           −
〃   宇和島市 〃             2011/12/05           −
〃    松野町  〃             2011/10/17           −
高知県四万十市 四万十         2012/02/07             −
〃  四万十町 〃             2012/02/08             −
〃  いの町  嶺北          2011/12/02             −
〃      大豊町  〃          2011/10/13             −
〃  安芸市  安芸          2011/12/05             −
〃    土佐清水市四万十         2012/02/08             −
佐賀県吉野ヶ里町 佐賀         2012/03/23             −
熊本県熊本市  熊本          2011/10/13             −
〃  宇土市  〃            2011/10/26             −
〃    芦北町  熊本南部      2011/10/15             −
大分県別府市  大分西部      2012/02/28             −
宮崎県日之影町 宮崎北部      2011/10/20             −
〃  西都市  西都児湯      2011/10/25             −
〃  宮崎市  宮崎          2011/10/24             −
〃  〃      〃            2011/10/31             −
〃  小林市  〃            2011/10/17             −
〃  〃      〃            2011/10/28             −
〃  都城市   〈都城〉       2011/10/24             −
〃  串間市  宮崎南部      2011/10/19             −
鹿児島肝付町  大隅          2011/10/26             −
〃  湧水町  鹿児島        2011/11/08             −
〃    伊佐市  北薩          2011/11/09             −
〃  〃      〃            2011/11/09             −
〃    南九州市  鹿児島        2011/11/08             −
〃    屋久島町 屋久島        2011/10/27             −
★鹿児島県屋久島の埋設個所は
 林野庁の埋設個所の表には、鹿児島県屋久島町があります。ここでは、旧上屋久町にある「憩いの森公園」内に粒剤3825キログラムが埋設されています。
 上尾久町は2007年10月尾久町と合併し、現在、尾久島町となりましたが、合併前の上尾久町環境基本計画では、『憩いの森に埋設されている2,4,5−Tの適正処理については、慎重に検討を進めます』との一行があるだけで、何の対応をとられていません。

 島内の環境保護団体「屋久島まもるネット」は、7月20日、町にダイオキシンを含む除草剤撤去についての要望書を提出しました。(同ネットのブログ参照)
 その中で、2,4,5−T、ダイオキシンは、屋久島の自然環境とは全く相容れないもので、島民、来島者の健康を守り、世界遺産の『冠』を守り、観光立島の構想を守り、そしてそれらをより高次元において具現化していくためにも、屋久島町としての早急な対応が望まれる、としています。また、2,4,5−Tの埋設は、憩いの森公園だけでなく、当時の営林署造林部職員の聞き取り調査で、下屋久の2,4,5−Tを安房の苗場や島内に点在する作業小屋の周りに「穴を掘って一斗缶ごと埋めた」という証言があったことにもふれています。
 これに対する尾久島町の8月24日の回答の要旨は以下のようです。
【要望1】憩いの森広場の2,4,5−T埋設場所および周辺の土壌検査
[回答]憩いの森公園の一角13ヵ所に2,4,5−T粒剤を、シートを敷き、除草剤と土壌を混
 和したものの上にセメントを入れ、最後にシートで囲い、約1メートルの土壌で覆い埋
 設し、85年には、コンクリート打設による地表被覆工事が行われた。土壌分析調査は、
 89年8月を最後になされていない(ダイオキシン類は不検出)。再度の土壌調査を実施し
 たい。

【要望2】地下水の汚染調査
[回答]84年の鹿児島県の調査以後、水質調査はされていない。必要に応じて周辺地域の
 地下水や河川等の水質検査を実施したい。

【要望3】旧下屋久町の苗場(現・健康の森公園)の土壌検査
[回答]健康の森公園の埋設については、屋久島森林管理署に確認した結果(ダイオキシン
 類不検出)、証言と一致するような事実はなく、土壌・水質検査を実施する必要はない。

【要望4】屋久島の山中に点在する営林署作業小屋周辺の土壌検査ならびに水場下流の
 水質検査
[回答]山中の作業小屋周辺についても屋久島森林管理署に確認した結果、そのような事実
 はないことから、土壌・水質検査を実施する必要はない。

【要望5】―略―

【要望6】埋設ダイオキシンの速やかかつ適正な処分
[回答]残留性汚染物質に関する国内実施計画*(05年6月)にもとづき、今後とも適切な保全
 管理に努めて参りたい。

 *注)同計画は12年8月改定されたが、当グループの埋設個所の環境調査と浄化処理の
   記載は受け容れられず、
  『ダイオキシン類を不純物として含む林地用除草剤(2,4,5−T)を、環境が汚染さ
   れないように適切な方法で処理して埋設した場所についても、適切に保全管理を行
   っています。』とあるだけで、具体策が提示されていない。

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作成:2013-01-26