環境汚染にもどる

t25505#9、10月の農薬事件・事故#12-11
★鳥取県で魚毒事件
【関連記事】
記事t19806c記事t21305
【参考サイト】鳥取県:報道発表(10/03)とお知らせ

 鳥取県では、本年9月20日、西伯郡南部町の池と水路で、9月28日には、境港市を流れる深田川で、魚の大量斃死事件が発生しました。調査の結果、南部町では、フェニトロチオンが、境港市では、トルフェンピラドが、河川水と魚体から検出されました。
 県は、『検出された農薬の成分が魚のへい死の直接的な原因物質であるという断定はできていませんが、農薬の不適切な取扱いが可能性として否定できません。』としていますが、生活環境部くらしの安全局は、「農薬の適正使用について再確認をしましょう」とのお知らせを発出し、
  1 農薬の使用基準を遵守しましょう
  2 周辺環境へ配慮しましょう(住宅地隣接農地での周知、河川への流入注意、
    農薬容器の適正処分など)
 を、あらためて指導しました。

 フナ、ナマズ、コイ等が約3万匹へい死した深田川の事例で、検出されたトルフェンピラドは、河川水で0.6μg/Lでした。佐賀県での同類事例とともに、下表に分析結果を示します。
 表 魚毒事件で検出のトルフェンピラド
 発生年月   河川水   魚体
        μg/L    μg/g
 07年8月*   0.76    0.12
 09年4月*   0.17    0.24
 12年9月    0.6     0.47-1.8
        *佐賀県唐津市玉島川
 トルフェンピラドは、「ハチハチ」という商品名で知られ、果樹や野菜、花卉などに適用される殺虫剤です。次節にでてくる三菱化学(現在、農薬部門は日本農薬が継承)と大塚化学が開発した成分で、劇物指定があり、魚毒性はC類です。
 本年9月に出された水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準案では、0.099 μg/Lとなっていますから、今後は、ハチハチの使用規制を検討する必要があります。

★北九州市ではBHC汚染が発覚
【関連記事】
、電子版資料集第8号:ダイオキシン含有農薬とPOPs系農薬
【参考サイト】三菱化学:
             弊社関連会社所有土地の土壌及び地下水に関する調査結果と今後の対策について(10/18)
       環境省:埋設農薬調査・掘削等マニュアル(08/01/17)

 北九州市八幡西区にある三菱化学株式会社黒崎事業所は、10月18日、同社の関連会社が所有する同区青山にある土地にBHCとベンゼンが基準を超えて検出されたこと、及び、市の指導により、浄化対策(生物処理及び化学処理)等を適切に実施することを、公表しました。
 これは、土壌汚染対策法に基づく調査結果で、同地は、2006年に用地の賃貸借のため、自主調査したところBHCが検出され、北九州市に報告したが、地表面に建築物があったことなどから、継続的な調査をしていた。今回、建物を撤去し、詳細調査を実施した結果、ベンゼンとBHCが土壌汚染対策法の溶出量基準等を超えて検出されたということです。  BHCは、土壌55区画から最高1.800mg/L、地下水41区画から最高1.000mg/Lが検出されており、環境省によるBHCの農薬環境管理指針値(水質0.013mg/L、 土壌0.013mg/L、処理指針値 0.13mg/L、管理値は当初値0.0025mg/Lから緩められている)を超える区画がみつかっています。
 三菱化学は以下のように主張しています。
『本件用地は、一部溜池であった箇所を、1965(昭和 40)年頃から土地区画整理事業
 の一環として埋立て、整地した土地であり、ベンゼン及びHCH(=BHC)を含む
 地下水は、 透水性の低い元溜池であった箇所の底部に封じ込められた状態にあります。
 なお、北九州市が本件用地周辺の井戸 7 箇所及び河川(宮川)の水質調査を実施した
 結果、ベンゼン及びHCHは検出されなかったとのご連絡をいただいております。』
 また、汚染原因を以下のように推定しています。
『HCHは、埋立て当時、農薬として広く用いられていたものであり、埋立て土壌に混入
 していたものと推定されます。また、ベンゼンは、長期間土壌中にあったHCHが自然
 分解したことにより生成したものと推定されます。 』
 しかし、埋め立て土壌をどこから搬入したかについては、何のコメントもありません。  三菱化学の前身である三菱化成は、総合化学メーカーとして、戦後、いち早くBHCの製造を手がけた会社で、1949年2月、日本で、はじめて同製剤を農薬登録したメーカーのひとつであり、黒崎の工場では、国内使用規制後も、輸出用に製造をつづけていました。同社の所有する土地のBHC汚染の原因が工場廃棄物等に由来するものであったかどうかの検証が必要でしょう。
 私たちは、何度も、BHCをはじめとするPOPs系物質を取り扱った個所や製造廃棄物処分場等の環境調査と厳格な管理を求める要望を農水省や環境省へ送っていますが、なかなか実現しないという現状があります。

★愛媛県ではグリホサートで神木枯れる
【参考サイト】
惣河内神社
       ブログhasigozakuraにある2012/12/25
 報道によると、愛媛県東温市(とうおんし)にある惣河内(そうこうち)神社にある神木が枯れ、ドリル穴が見つかったため、松山南署が、器物損壊容疑事件で捜査に乗り出していましたが、木片から除草剤グリホサートが検出されたということです。

 今回の事件に類似した犯罪が、いくつか発覚しています。
 石川県では、07年9月に白山市の国道のケヤキが枯れ、09年6月には、金沢市の国道のアメリカフウに生育異常がみられましたが、いずれも、何者かにより、グリホサートが撒かれたためとされ、後者では、回復が望めない8本が翌年伐採されました(記事t21901記事t23105b参照)。
 10年3月には、山梨県南アルプス市の果樹畑で高級スモモの木13本が枯死し、4月にも14本の被害がみつかり、何者かが木にドリルで穴を開け、除草剤をいれたためとみられています(記事t23105b参照)。  また、11年8月には、北海道頓別町にある北オホーツク道立自然公園に属するベニヤ原生花園で、釣り場へ行く近道を作るため公園内敷地を除草剤で枯らした男が北海道立自然公園条例違反で書類送検されています(記事t24207b参照)。
 本号記事t25503に示したように除草剤のパラコートやグリホサートは自殺に使用されることも多く、身のまわりで、安易に、使用しないようにすることが重要です。

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作成:2013-01-26