環境汚染にもどる

t25602#鉄道除草と駅植栽管理で農薬使用アンケート〜回答の約6割が線路用地などで除草剤使用#12-12
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 記事t25401で、滋賀県近江鉄道の線路除草で、散布薬剤が周辺水田等に被害を与えた事例を報告しましたが。当グループでは、10月に、JR各社と関東地区の公共交通機関及び民営鉄道会社併せて46社に線路除草と「住宅地通知」の対象となる駅構内などの植栽管理について、以下のようなアンケート調査を行いました。27社から回答を得ました。約6割の鉄道会社で除草剤が使用されていることがわかりました。

★アンケートの前文と設問
アンケート:駅等における無農薬植管理及び線路除草について

★JR系6社は除草剤を使用
 JR6社(北海道、東日本、東海、西日本、九州、四国)からは、いずれも簡単な記述の回答を得ました。路線が長く、駅が多いせいか、線路用地での除草剤を全く使わないという会社はありませんでした。
 安全運行をめざし、線路用地は、除草のほか、場所によっては防草シートの設置や製鋼スラグを用いた防草工事を行っている個所もあるようです。
 JR北海道は『人力・機械伐採、もしくは除草剤散布。水路に近い個所を避ける。天候や時間に注意している』。JR四国は『市街地や農耕地付近は草刈機による手作業を基本とし、山間部等の一部区間においては、1回〜2回/年の頻度で、登録農薬を使用方法等を遵守し、天候を配慮して散布する』とありました。
 JR西日本は『当社の監督のもと薬剤に精通した専門業者に委託を行う』としています。JR東日本からは『使用量・範囲は最小限に抑え、使用する除草剤については、人畜毒性では普通物、魚毒性ではA類を基本としています。また、散布条件が悪い場合は作業の中止を徹底するなど、周辺に影響を与えないようルール化している』との回答とともに、『2010年度は、221トンの除草剤を使用しております。なお除草剤の製剤名や使用区間等の詳細につきましては回答を差し控えさせていただきます』とありました。
 JR東海は、『沿線等における除草等の植栽管理につきましては、在来線の沿線の一部におきまして、除草剤を使用しております。また、駅等におきまして、お客様に危害を与えうる害虫の駆除を目的に必要最低限の範囲で殺虫剤や殺菌剤を使用する場合がございます。』という当たり障りのない回答でした。同社は、1985年、神奈川県の高架下での除草剤散布で、農作物に被害を与えたことのあるだけに、その反省が行き届いているのでしょうか。
 「住宅地通知」の注意事項の周辺への周知は実行されているかどうか、明確でありませんでした。

★関東大手私鉄8社からの回答
関東の大手私鉄9社のうち、京浜急行を除く、下記8社から回答がありました。
小田急電鉄(小田急)・東京急行電鉄(東急)、京王電鉄(京王)駅や線路で除草剤を使用しないで、草刈機などで対応しているとの答えです。だだし、小田急は『立木に害虫などが発生した場合には、事前通知なしに、限定的に殺虫剤を使用』、東急も『蜂の巣やチャドク蛾等を発見した際には、必要最低限の範囲で殺虫剤を使用する』とありました。
京成電鉄(京成)除草剤は、雑草が施工基面や道床砕石内まで繁茂してくるような個所に限り、社員が散布を行っているが、法面や盛土の肩部については散布を禁止しており、人力や防草シートで対応。また、田畑、果樹園、用水路、街路樹、銘木、庭木が隣接している個所については散布を禁止している。散布の場合は、除草剤の種類や効果などの説明を行い、相手の方からご了承を得ているとの回答でした。
東武鉄道(東武)法面は除草剤を散布しないが、線路部で、登録農薬を使用し、天候を配慮して、専門業者が散布する個所がある。
西武鉄道(西武)駅構内の植栽管理は、剪定で対応しているが、全路線にわたり軌道砕石部分に、社員が除草剤(粒剤)を散布。
東京地下鉄(東京メトロ)除草剤は、営業線脇の鉄道施設、高架下用地、車両基地、駐車場、資材置場、社員寮などで、殺虫剤は施設内樹木に使用。スミチオン、DEP,プリグロックスLほかの散布だそうです。その際、飛散防止、天候配慮、隣接者と協議、周辺に充分配慮とのこと。別途、駅では、カ対策の殺虫剤を使用。
相模鉄道(相鉄)軌道内外の除草に、イソキシールやツインカムなどの粒剤などを散布するが、雨水が河川や農耕地等へ直接流出の恐れがある個所、土砂崩壊の恐れのある法面、近隣住民の要望や樹木が枯れる恐れがある個所及びその付近には除草剤は使用しない。

★少なかった関東中小私鉄からの回答
 中小私鉄は31社に問い合わせましたが、回答率は低く、約4割の13社から返事がありました。田園地帯を走る中小地方鉄道からの回答が少なかったのは残念です。
江ノ島電鉄は 路面電車ですが、04年以後、線路・駅の除草剤使用はなく、職員や業者の手取り除草や防草シートの敷設で対応しているとのことでした。首都圏新都市鉄道、ゆりかもめ、湘南モノレールと多摩都市モノレールは除草剤使用なしです。
 東京都交通局の路面電車や地下鉄、高架線では、いずれも、線路内、法面などに除草剤は使用せず、定期的な草刈を実施。
 東京モノレールは、植栽があるのは一駅だけで、職員が不定期に草取りをするのみ。本線の一駅、トンネル、車両基地で、バスタ液剤やシマジン粉剤の除草剤を業者委託で散布。他は職員の草取り。「住宅地通知」は認知しているが、関係者しか立ち入れないので、周辺への周知はしていない、と回答がありました。
 横浜高速鉄道は、駅の植栽および線路の雑草除去では、除草剤を使用せず、定期的な草刈等で対応しているものの、こどもの国線では、蜂の巣やチャドクガ等を発見した際には、必要最低限の範囲で殺虫剤を使用する場合もある、との返事です。
 横浜市交通局の地下鉄路線では、駅の植栽管理は農薬不使用で、周辺でも樹木剪定、除草や刈り込みを行っており、線路除草も機械又は人力だそうですが、地下鉄敷地内での除草で、農薬の使用がやむを得ない場合には、人畜への被害防止や生活環境の保全に留意していきたい、とのことです。
 箱根登山鉄道は、あじさい植栽個所においては、年間3回殺虫剤の散布を実施。駅舎周辺及び法面を含む用地内を対象に草刈。軌道内(道床バラスト部)においては、全線で、社員がノンウイ一ド粒剤を散布しているが、周辺通知はなし。
 北総鉄道は、駅植栽はなく、車両基地や線路の除草剤散布は業者が行う。散布は夜間作業。住宅地や農地、果樹園等も近くにないことと、また、日中除草剤を散布する個所も住宅地や農地、果樹園、駅など影響の無いところのため、周知はしていない。法面は、除草剤を使用せず、草刈り機による除草と防草シートで対応。
 伊豆箱根鉄道は、法面には基本的に散布しないが、線路には、ラウンドアップアプロードやタッチダウンを散布している。
 秩父鉄道は、駅では基本的に鎌及び刈り払い機を使用しての除草だが、線路内はすべて除草剤(ウィードコロンやシタガリンなど粒剤)を使う。ただし、民家や、田畑が近いところは散布を加減し、法面や築堤などは散布しないで、草刈で対処。

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作成:2013-04-03