ネオニコチノイドにもどる      脱農薬ミニノート「ミツバチは農薬が嫌い」
t26106#12月1日からヨーロッパ全域で、3種のネオニコチノイド使用規制へ#13-04
【関連記事】記事t24902記事25203ネオニコチノイド関連記事
【参考サイト】ヨーロッパの動き等:
  EFSA:1月16日 EFSA identifies risks to bees from neonicotinoids
            農業情報研究所1/18解説記事
       イミダクロプリド(概要)、クロチアニジン(概要)、チアメトキサム(概要)
  EC:4月29日Bees & Pesticides: Commission to proceed with plan to better protect bees
      駐日欧州連合代表部の4/29ニュースアクト ビヨンド トラストにある解説記事
     5月24日EU-wide restrictions on Pesticide use to enter into force on 1 December
      駐日欧州連合代表部の5/24ニュース
  EEA:1月23日Late lessons from early warnings II概要
       アクト ビヨンド トラストにあるPartB翻訳資料ほか
  Bayer cropscience:Top Page(バイエルクロプサイエンスのHP)と5/24ニュースリリース
  Syngenta:Top Page(シンジェンタジャパンのHP)
  住友化学:Top Page5/27ニュースリリース(英語版)
  岡田幹治さんの解説:リベラル21にあるネオニコチノイド系農薬とは何か 上(4/10)、(4/11)

 ミツバチの大量死やCCD(蜂群崩壊症候群)の原因として、ネオニコチノイド系殺虫剤が問題となり、ヨーロッパ諸国では、フランスやドイツ、イタリアなど一部の国で、使用規制が実施される中、フィールドや致死量以下投与実験で、ミツバチなどへの有害性の研究が進み(記事t24902参照)、アメリカでも、環境保護団体、消費者団体、養蜂者らが署名運動や、ネオニコ問題を放置してきたEPA (環境保護庁)の責任を問う訴訟が起こっています。

★欧州委員会が2年間使用禁止を提案
 今年の1月16日、EU((欧州連合)の政策執行機関であるEC(欧州委員会)の諮問を受けたEFSA(欧州食品安全機関)が、ネオニコチノイド系農薬とミツバチの減少について、そのリスク評価に関する報告書を発表しました。
 イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサムの3種に関するもので、いままでに得られた科学的及び技術的知見やモニタリングデータを基に、ミツバチに対するリスクが次の3経路から評価されました。@花粉や花蜜からの曝露、A農薬粉塵からの曝露、B溢液(植物が葉などから放出する水滴)からの曝露
 ネオニコチノイドによる種子処理及び粒剤について、上の経路によるミツバチへの急性・慢性毒性(ハチ群の維持や成長、幼虫やハチの行動への影響)や致死量以下の曝露の影響とリスクの軽減対策などが述べられました。
これは、ヨーロッパでの環境保護団体や養蜂者の運動による成果で、予防原則に沿った結果です。
 報告を受けたECは1月30日、3農薬の2年間の一時使用禁止を含む提案を行い、3月15日、食物連鎖と動物の健康に関する常任委員会で討議、採決されましたが、EU加盟の27カ国中、賛成13カ国、反対9カ国、棄権5カ国で、過半数には達しませんでした。
 その後、規制案は審査委員会にまわされることになりました。環境保護団体や養蜂者たちは、それぞれの国内やEUに対して、ネオニコ使用禁止を求める運動を展開し、その結果、4月29日に開催された委員会での採決は、賛成15、反対8、棄権4で、可決されました。
 提案内容は、以下のようです。
  ・イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム製剤のハチが好む植物や穀
   類について、種子処理、粒剤の土壌施用、茎葉散布を禁止する。
  ・他の適用が認められたものへの使用は、職業的使用者のみに限定する。
  ・例外は、ハチの好む作物の施設栽培や開花期を除く露地栽培での使用に限られる。
  ・この使用禁止は、2013年12月1日から実施予定である。
  ・遅くとも2年以内に、新たな知見が得られたら、ただちに、科学的及び技術的な
   動向を考慮して、委員会は、3農薬の認可条件を再検討する。
 提案は、特定多数決事項(@参加国の過半数以上、A加盟国人口の62%以上を満たす)であるため、@は満たされていましたが、Aの条件には達しておらず、あとは、ECの政治的判断に任かされました。

追記:5月24日、ECは上記の提案内容を最終決定し、12月1日から、EU全域で施行されることになりました。
   EU官報(5/25):(EU) No 485/2013


★日本では規制進まず
【関連記事】畜産草地研究所関連記事:記事t22501記事t22602記事t22702
      2013年度農薬危害防止運動への要望・質問書と農水省回答(ミツバチ関係)
【参考サイト】農水省:花粉交配用ミツバチについての頁養蜂について
        養蜂家向け養蜂マニュアル園芸農家向け飼養管理マニュアル
       日本養蜂はちみつ協会:Top Page

 日本でも、水田でのカメムシ駆除に使用されたネオニコチノイド系のクロチアニジン(ダントツ)、ジノテフラン(スタークル)によるミツバチの大量死がおこり、09 年から10 年にかけては、花粉交配用ミツバチが不足したとして、農水省は、安定確保体制の整備と原因調査する緊急プロジェクトを立ち上げたものの、畜産草地研究所などが行ったネオニコ系農薬との関連性についての研究では、明確な因果関係は見つからないとして、使用規制はとられていません(脱農薬ミニノート「ミツバチは農薬が嫌い」(2010年8月刊行)参照)。
記事t26002で紹介したミツバチ被害の農水省件数8と養蜂業界の調査で被害業者数208の違いについて問うたところ、農水省は、『業者が都道府県の担当部局に正確な情報を報告いただくようお願いしている』とした上、10年度以後、ミツバチ不足はみられないとしています。
 因果関係については、10年から12年にかけて、「ミツバチ不足に対応するための養蜂技術と花粉交配利用技術の高度化」のテーマで農薬被害回避の研究を実施し、現在、公表に向けて、取りまとめ作業中とのことでした。
 欧州委員会の上述の2年間使用禁止の動きに対し、農水省は、
 『我が国における農作物の作付状況や農薬の使用方法は欧州と大きく異なるので、
 この評価結果はそのまま我が国に適用し得るものではありませんが、クロチアニジン
 やジノテフランは、蜜蜂に影響のある農薬ですので、蜂群がこれらの農薬に曝露され
 た場合には、蜜蜂が死亡するなどの被害が生じる可能性があります。したがって、蜜
 蜂がこれらの農薬になるべく曝露されないようにする必要があります。このため、農
 林水産省は、上述のとおり、畜産草地研究所等に対して、蜜蜂がどのような経路で農
 薬に曝露されて被害が生じているのかを解明するための調査*を実施させてきており、
 今後も、被害回避のための試験研究を継続していきたいと考えております。』
 と答えています。
*注:畜産草地研究所の研究チームは、北海道の水田で、カメムシ駆除のため、ネオニコチノイドを散布後、水稲に訪花しているミツバチの大量死との関係を調査しており、関係ありとみられる。

★国内出荷量は頭打ち、輸出は増える
【関連記事】記事t23803記事t24903
【参考サイト】アクト ビヨンド トラスト
        日本でのネオニコ使用状況等資料概要報告書
        6・11の浸透性農薬に関するIUCN東京シンポジウム2013プログラム

 ところで、日本でのネオニコチノイド系農薬の生産・使用状況はどうでしょうか。  2000年以後のネオニコチノイド系農薬の出荷状況を次頁の図に示しましたが、この数年は、年間400トン前後で、頭打ちになっています。秋田県のように、アカスジカスミカメへの効果が低いとして、ダントツを防除基準から外す地域が増えたり、ミツバチ被害防止で使用が伸びないせいでしょうか。
 アセチルコリン作動性の神経毒として、ミツバチや天敵などを見境なく殺す農薬には、有機リン(2011年の総出荷量はネオニコの約6倍)、カーバメート(ネコニコと同程度)がありますが、浸透性で残効性の高いネオニコは、出荷量が増えないといっても、このまま国内で、使用を続けることには、大いに問題です。
 それだけではありません。ドイツのバイエル社やスイスのシンジェンタ社などが、日本をはじめ、海外へイミダクロプリドやチアメトキサムを輸出しているように、日本からも原体メーカーが海外へ輸出しています。個々の農薬について国内出荷と輸出量の推移を示したのが図(a)(b)(c)です。アセタミプリド(原体メーカー:日本曹達)、クロチアニジン(住友化学)、ジノテフラン(三井化学)の輸出量は、このところ大きく伸びており、いずれも、国内出荷量を凌駕又は拮抗しています(原体のほかに製剤の輸出もあるが、製剤中の成分含有量が不明なため、統計値には含めなかった)。これらの輸出相手国先は不明です。
 輸出以外に、日本の技術が海外へ移転され、現地生産することも考えられます。たとえば、三井化学は、タイでジノテフランの販売をしていますが、現地のソータス社と業務提供し、アジアの拠点化を狙っています。
 ネオニコチノイドの海外輸出や生産は、相手国の花粉媒介昆虫に害をあたえるだけではありません。輸出相手国で使用された農薬が残留した農作物が日本に輸入されたり、輸出先で使用されることにより耐性がついたり、リサージェンスにより大発生した害虫、たとえば、稲の害虫であるウンカが日本に飛来してくる、といった農薬によるブーメランも無視できません。
 なお、アクトビヨンドトラストが、ネオニコチノイド類の用途、製剤、農薬の都道府県別出荷量や地域の農薬防除基準などをまとめた日本での使用状況を、HPで提供しているので、参考にしてください。(こちら
     図 ネオニコチノイド系農薬の全国出荷量推移 −省略

          印刷版機関誌の図に間違いがありました。「輸出量」とあったのを、下図のように「生産量」に直します。
     輸出量は細実線と太実線の間です。
      (a)アセタミプリド(出荷、生産量推移)
              
      (b)クロチアニジン(出荷、生産量推移)
              
      (c)ジノテフラン(出荷、生産量推移)
              

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作成:2013-06-27、更新:2013-11-06